(社員数は、約350名)
AutoCADを用いて、金型図面等の製作を担当しています。
図面の製作をしていてよく感じることですが、「この寸法公差は、どういった理由で、この値になっているのだろうか?」という点です。先輩に質問しても、『過去の類似設計図面から踏襲している。』といった印象の回答が多く、本当に妥当な値なのかがいまひとつわかりません。
そのため、製造担当から、公差に関する問い合わせがあっても、自信を持って答えることができません。
そこでご質問ですが、一般的な会社では、機械製図設計における寸法公差の妥当性はどのようにして、設計・決定しているのでしょうか?
また、そう言った設計根拠・ノウハウは、どのように蓄積したり、後の社員に情報共有しているものなのでしょうか?ご教授をお願い致します。
工場ですぐ使える品質改善技法の開発と普及活動を行っている高崎ものづくり技術研究所の濱田と申します。
私は、機構設計技術者ではありませんが、一般的な寸法公差の考え方を整理してみます。
まず、寸法公差を厳しく管理しなければならないのは、部品同士のはめ合いや部品と部品が可動する部分であることが経験的に分かります。設計時に、この部品間の「隙間」を定義することになりますが、機械加工による誤差・バラツキも考慮して決めます。「隙間」が大きいとガタが大きく小さいと入りにくいですから、そこは設計者の経験、過去のノウハウによって例えば0.1mmなのか0.05mmなのかを決定します。
機械加工なのか、鋳物なのか、ダイキャストなのかプレス加工なのか、溶接なのかなど、加工方法によって実現可能な寸法公差の設定は異なってきます。また、ワークの大きさによっても異なります。
一般的に寸法公差をあまり厳しく設定すると作り易さが損なわれ、価格アップの要因ともなります。ですから基本的には公差の幅は大きくとるべきだと思います。そのように設計しても、問題が出ないように設計するには、総合的な判断が必要になり、相当の設計経験の積み上げが必要になると思います。
JIS B0405(加工品の普通寸法公差)JIS B0401(寸法公差及びはめあいの方式)は実現性、コスト等を加味されていると思われ、これをガイドラインとすれば、妥当な公差の設定の目安になると思われます。
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「超実践品質工学」をコアとしたデータエンジニアリングで、設計・開発をお手伝する、
株式会社ジェダイトの鶴田(つるぞう)と申します。
公差(許容差)の決定方法について、品質工学の立場から補足いたします。
許容差を厳しくすると品質はよくなってユーザは喜びますが、材料や加工のコストが高くなり、メーカは面白くありません。逆に許容差を緩くすると材料や加工のコストは安くなるのでメーカは喜びますが、品質は悪くなるのでユーザは面白くありません。そこで、ユーザとメーカのコスト(損失)がバランスするように許容差を決める方法が、許容差設計です。下記に解説があります。
https://www.monodukuri.com/gihou/article/65
許容差設計のポイントはコストと品質の悪さによる損失の総和を最小化するということです。そのため、品質の悪さを金額に換算する必要がでてきます。これを品質工学では損失関数で求めることができます。余談になりますが、下名が品質工学を初めて知ったときに、最初に衝撃をうけたのがこの損失関数の考え方でした。
そしてもう1つ知っておいていただきたいのは、上記の許容差設計の前に、そもそも寸法等がばらついても、機能は安定しているような設計(ロバスト設計)を行っておくことです。これには品質工学のパラメータ設計が活用できます。下記に解説がありますのでご参照ください。
https://www.monodukuri.com/gihou/article/1184
パラメータ設計などの適用方法で分からないことがありましたら、またご遠慮なくご質問ください。
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