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QUESTION 質問No.451

材料配合実験での実験計画法の適用

設計・開発品質工学(タグチメソッド) |投稿日時:
初めまして。主に鋳造分野の生産技術に携わっております。多くの要因が有機的に作用して品質に影響してくる上、各要因の変動が比較的大きい鋳造分野において実験計画法や品質工学の考え方は非常に有用なものではないかと考え、まずは独習・セミナーなどに参加して実験計画法について学んできました。

今回、粘土状セラミック混練物の常温強度・保形性や焼成後強度を特性値、材料配合比を因子として取り上げて最適な配合比率を探索しようと考えています。
材料は全6種類で骨材A、水B、液状セラミックスC、硬化剤D、バインダーE、つなぎ用固形物Fです。
骨材Aは2または4水準、その他因子は2水準にて実験を検討しています。
また、予備実験から液体総量=B%+C%、Cに対する硬化剤比率=D%/C%が成型性に関与し、ある適正範囲において成型可能であることがわかっています。

このような各因子が独立に設定できないような場合の実験で、どのように水準を設定してよいか混乱しております。

何か助言を頂けたらと思います。よろしくお願いいたします。


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ANSWER
回答No1 | 投稿日時:

新米技術者様、ご質問ありがとうございます。

ご質問の内容を私が正しく理解できたとすれば、二段階で問題を解決されたら良いと思いました。最初は実験計画法による数値モデルの作成、次に数値モデルを使った最適化です。

私は実験計画法(Design of Experiments: DOE)と最適化を次のような順序で使います。

1. スクリーニングDOE(主因子の選択)
2. モデリングDOE(主因子を使った数値モデルの作成)
3. 最適化(数値モデルを使って、最適なパラメータ値の決定)
4. モンテカルロ・シュミレーション(各因子のバラツキから、数値モデル出力のバラツキを評価)

スクリーニングDOEは実験可能(または実用的)な範囲で2水準で行います(2水準因子計画)。スクリーニングDOEを行えば、新米技術者様の場合、今ある6因子の数をもしかしたらもっと数の少ない主因子だけに絞り込む(スクリーニングする)ことができるかもしれません。

スクリーニングDOEで主因子を特定し、かつ数値モデルの湾曲度を掴めたら、モデリングDOEでもっと正確な数値モデルを作ります。モデリングDOEで応答局面計画(中心複合計画)を行う際に、水準を3または5へと増やします。

最適化では制約条件を設定し、数値モデルの出力値が目標に最も近づくパラメータ値(因子の値)を決定します。新米技術者様の場合、液体総量の制約条件、硬化剤比率の制約条件は、この最適化の制約条件として設定できると思います。

モンテカルロ・シミュレーションは数値モデルの出力のバラツキを調べるときに使います。

新米技術者様の場合、特に難しいと感じたことは、常温強度モデル、保形性モデル、焼成後強度モデルなど、別々の数値モデルをDOEによって作り、それらの数値モデルをすべて使って、多目的最適化(Multi-objective Optimization)問題を解く必要があるかもしれない点です。多目的最適化には様々なアプローチや方法がありますが、どれも完璧ではありません。

新米技術者様の問題は決して簡単ではありませんが、実験計画法や多目的最適化を試すには最適な例題かもしれません。きっと挑戦しがいのある楽しい取り組みになると思います。

話は違いますが、池井戸 潤氏の小説に「陸王」(TBSドラマ)というものがありました。靴底素材であるシルクレイを最適な強度と耐久性にするために、悪戦苦闘する小説(ドラマ)です。この小説を読んでいる時に「DOEと多目的最適化を使えば、そんな苦労をしなくてもすむのに」と思いました。新米技術者様の質問を読んで、飯山常務と一緒にシルクレイを作る大地の姿が、新米技術者様と重なりました。

以上、少しでも参考になれば幸いです。




ANSWER
回答No2 | 投稿日時:

品質工学のコンサルティングをしております対馬と申します。

粘土状セラミック混練物の材料とその配合比を因子に取り上げて実験計画を作成したいとのことですが、以下の考え方で実験計画をたててみてください。
まず、主材は何かを考えます。 骨材Aが主材であれば、骨材100重量部に対して、他の材料をどのくらい使うかで水準を決めていきます。
また、本事例のような配合系においては、因子間の交互作用が複雑に絡み合っていることが多く、交互作用があるまま組合せ実験を行ないますと、実験結果の精度・再現性が著しく低い結果となります。 ちなみに、交互作用とは、ある因子の水準の効果が他の因子の水準によって変わることで、B1ではA1がよいが、B2ではA2がよいといったことをいいます。

交互作用を解消するためには、その材料の働き・役割、どの材料に作用するかといった知見が非常に重要になり、ある材料がどの材料に作用するかで因子の設定が変わってきます。 以下に、因子の設定例を示します。
・因子1: 骨材の種類を因子1とします。
・因子2: 液体総量(水B+液状セラミックC)が成型性に関与するのであれば、骨材100重量部に対する(B+C)の添加量が因子2となります。
・因子3: 液状セラミックCの添加量が因子3となります。 したがって、実験では因子2の添加量から因子3の添加量を差し引いたものが、水の添加量ということになります。
・因子4: 硬化剤Dは液状セラミックCに作用しますので、Cに対するDの比率が因子4となります。
・因子5: バインダーEが骨材Aのみに作用するのであればAに対するEの比率を、骨材Aと液状セラミックCの両方に作用するのであれば、(A+C)に対するEの比率が因子5となります。
・因子6: つなぎ用固形物Fについては、バインダーEと作用機構が異なるのであれば、因子5と同様の考え方で因子6を決定することになりますが、つなぎ用固形物FがバインダーEと似た作用があるようですと、交互作用が複雑に絡み合うことになりますので、よくよく考える必要があります。 例えば、EとFが似た作用があり、共に骨材Aと液状セラミックCの両方に作用するのであれば、(A+C)に対する(E+F)の比率を因子5とし、(E+F)に対するFの比率を因子6にするということになり、因子の設定が変わります。 当然ながら、これらの関係がはっきりしない場合には、予備実験で確認する必要があります。

以上ですが、前述したとおり、交互作用を解消するためには、その材料の働き、どの材料に作用するかの知見が非常に重要になりますので、このことを頭に入れて実験計画をたててください。
なお、実験は2水準で考えているとのことですが、3水準のほうが得られる知見が多く、また、骨材は4種類を考えているようですので、混合系直交表L18の変則形(1因子が6水準、6因子が各3水準)を用いることをお薦めします。

以 上