小ロット多品種生産(マスカスタマイゼーション)で重要となる樹脂成形や板金プレス作業の段取短縮について、内段取の外段取化や内段取のワンタッチ化など進めていますが、アイデアが枯渇状態です。何か別発想の面白いアイデアなどあればご教示のほど宜しくお願い致します。
クリーン化の清水です。
クリーン化は製造現場のゴミを減らし、製品品質を向上させる活動です。ゴミ、汚れによるやり直し、手直しが発生すると納期遅れや品質の低下も発生します。これらの改善には合理化、効率化に繋がるものもあります。
「アイデアが枯渇状態です。何か別発想の面白いアイデアなどあれば」、とありましたので、分野は少し違うのですが、違った見方、考え方のヒントになるものがあるかもしれないと思い、思い当たることを記してみました。
本来は現場で意見交換をしたいです。
市場が多様化してきているので製品の多品種、小ロット化が増えますね。
これが製造現場では直接影響を受けるわけです。
段取り時間の短縮は、
① 内段取りの外段取り化
② 調整作業の機械化やワンタッチ化
③ 調整の簡略化
④ 段取り時間の標準化
⑤ 段取り作業の管理のシステム化 などが考えられます。
これは、段取り作業そのものに着眼した対応です。
①②などすでに取り組んできたとありますが、この基本を超えた新しい発想や面白い発想を求めているとのことですね。
色々な面から考えられることを拾ってみます。
段取り工程を多面的に観察、ロスを顕在化する。
固定観念を排除してみる
ブレインストーミングで大勢の意見、考えを聞いてみる。奇抜なアイデアも大歓迎。その中にヒントがあるかもしれません。
段取り作業を作業分解、作業分析し、不要な動作、行動をなくす。或いは詳細作業で類似のものが合体、又は廃止できないか。
段取り作業は個人間のばらつきがなく作業できているか。(標準化、標準時間の設定)
外段取りであっても、ラインの外で段取りしておいたものを運搬するロスや、床に置いてあったものを持ち上げる、逆に床に置くというロスはないか。
つまり運搬ロス、置く、持ち上げるロス、作業者への体力的負担、床に置くことでゴミ、埃の付着、これをクリーニングするロスなどがないか。(動作分析)
この改善として、段取りが必要な工程近くに保管場所を設ける。
あらかじめラインの設置高さに合わせた台車を用意し、その上で段取りし、そのまま型や治具などを最短距離で水平に移動するなどができないかどうか。
段取り工程だけでなく、俯瞰的に見たり考えてみる
共通工程がある品種は一緒に作っておく(バルク製造)。そのあとの工程も同じものの注文の予想が来る、または来ている場合は、その工程からすぐに流動できるよう見込み生産をしておくことで、納期に余裕が出るので、段取り作業にも余裕ができます。バルク製造しておいたものを、その工程からA製品に振り替える。或いはB製品に振り替えるという考え方です。
更にその後の工程も同一の流動部分があれば、同様にしておけば、切り替え時間には余裕が出ます。
小ロットの中でも投入数が極端に多いものが複数ある場合、ラインを1本増やせないか。
営業、管理部門と製造部門の情報の共有化と効率生産の仕組み構築 現在の投入、作業指示がどのようになっているのかわかりませんが、指示があった製品のあと、違う製品に切り替えたら、また前の製品の製造指示が来たということはないでしょうか。
あらかじめ営業の情報収集を早くし、管理部門が同じ製品を組み合わせるなど納期を確認しながら効率よく投入製品の差し立て(順序替え)ができないか。これにより、段取り換え作業そのものを減らせないか。(製販一体化)
段取り替え工程を流動工程から外すことができないか。 段取り工程を待避線に入れる。例えば、電車の運行は、各駅停車が追い越しされる場合は、反対のホームに待避させています。
東京のある病院に行った時、受付を済ませると、自分のカルテが受付から自動的に天井に上がり、天井搬送により、受診科の窓口に配送されてるのを見ました。天井には所々に待避場所があり、追い越していくとか、戻りのカルテとの行き違いをやっていました。受け付けたカルテは、上層階に行くのは患者が到着するのに時間があるのでゆっくりで良い。2階の直ぐの場所なら急いでカルテが届くようなシステムになっているようでした。 段取り替えの場合は、営業の情報をもとに、管理部門が組み合わせをする。つまり電車のダイヤ編成のようなことが必要かもしれません。
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電子化で流動状況の見える化できないか
バーコード流動で、製品の流動状況を見える化する。これにより事前準備や流動製品の入れ替えをするなどで段取り回数を減らせないか。
ネットワーク手法の活用
ネットワーク手法にアローダイヤグラムがあります。このことも作業の着手や納期の確保の参考になるので、生産管理部門などでは、把握しておきたい手法です。
私の考えられることを列記しました。参考になることがあれば嬉しいです。
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日本コストプランニング㈱間舘と申します。
ご質問の内容を拝見させていただくだけでは、何を求めているのか判断がつきませんでした。
しかし、先達て回答された方とのやり取りを見させていただき、一言アドバイスさせてください。
ただ、発想ということではなく、考え方について、述べさせていただきます。
私の関係した多くの国内生産工場では、多品種少量(小ロット)生産が当たり前になっています。
この小ロットが当たり前の中で、貴社が現在行っていることは、作業改善による生産性の向上を図って、最終的には製品のコストダウンによる利益の向上ということではないでしょうか。
そして、現在は、そのために現場での作業改善によるコストダウン・アプローチを進めているわけです。
この作業改善によるアプローチは、たとえば、ある成形機で1日1,000個生産できていた品目を1,100個というようにより多く生産できるようにすることです。
ただ、この改善ができたとしても、それだけの仕事量がなければコストダウンは達成されないのです。
もし、1日1,100個生産できるとしも、1,000個の生産量しかないければ、100個分成形機が遊んでしまうだけだからです。
ただ、これは、作業改善が意味がないと言っていることではありません。誤解の無いようにお願いいたします。
このように特定の部分のコストだけを考えるのではなく、全体コストを見る必要があると言いたいのです。
これは、生産性の向上という視点で考えるならば、設備機械の稼働率の向上、歩留まりの向上、不良率の低減、在庫の削減などを検討することになるでしょう。
たとえば、設備機械の稼働率を向上させるためには、外注していた部品を社内に取り込むことや事後保全から予防保全への見直しなど検討することなど考えられます。
また、歩留まりの向上では、射出成型の場合、最初の数ショット分を廃棄していると思います。このショット数を減らすことができればコストダウンになります。
さらに、製品のコストダンの視点では、射出成形であるならばとも取り(セット取り)や切削品の板金品化などがあるでしょう。
これらを実現するためには、材料の肉厚(板厚)を見直す(統一する)ことが必要になるでしょう。
このように視点をコスト全体に広げて考える検討することが大切ではないでしょうか。
以上、簡単ですが、ご参考にしていただけますと幸いです。
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作業改善の視点ではなく、生産計画面からの改善を検討してはどうでしょう。対象現場の生産計画(品目の投入順序計画)の条件が分かりませんが、一定期間、注文品種をプールし、品目の生産順序を決定していると考えると、どの品種から生産着手するかを決定する問題が生じます。その際に、品目の投入順序により段取時間(標準時間ベース)が異なる場合があります。
ここに着目して、投入順序を検討するという方法です。
そのためには段取りマトリックス表を作る必要があります。これは、生産計画対象の全品種を縦、横にリストアップし、縦の品種から横の品種への段取り時間を全て記載した表です。縦横の同じ品種(マトリックスの対角線上)は空欄になります。
この段取りマトリックスから全生産品種の段取時間の合計が最小となる品種の投入順序を見つけることができます。
この問題の解法は巡回セールスマン問題の解法になります。これと類した方法としてはグループテクノロジー(GT)があります。
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技術オフィスTech-Tの高原です。
多品種少量をどう捉えるかは今後の「型モノ」の世界での利益に直結するところと考えております。まさにお取組みの着眼もそこにあるのかと読み取りました。
私はトヨタ自動車で樹脂部品の開発と生産にたずさわっておりました。機会を得て仕入れ先様のカイゼン活動などもご支援いたしました。
雑誌によれば、トヨタではついにバンパー成形の一個流しを実現したとのことで、段取り30秒+成形30秒で、60秒タクトで多品種を一個づつ成形しています。
さて、今後のネタ出しとして、ぜひ一度工程を俯瞰的に分析されてはいかがかと考えます。
樹脂成形とプレスのそれぞれで、全部品の段取り時間、成形タクトタイム、不良率の項目でリスト化します。
これを、ある約束事で、部品単価に置き換えます。たとえば、ロットサイズを約束事の単位とするのであれば、段取り時間をロット数で割り戻すと、1個当たりコストとなります。
不良率も、
個当たりの成形コスト×不良率÷ロット数
とするなどで、個当たりのコスト負荷となります。
順当なアプローチをするのであれば、この置き換え後のリストから、コストの高い部品と項目に対するカイゼン活動となります。
このリストは、これからやりたいこと、やるべきことのシミュレーションにも活用できます。たとえば、段取カイゼンで、現状より30%短縮した場合の効果度の予測などもできます。
トヨタ自動車での1個流しは、実に長い年月の積み重ねで実現したものです。当然、トヨタ生産方式が源になっています。
そういう意味では、まだお読みでないのでしたら、大野耐一さんが書かれた「トヨタ生産方式」をお読みになるといいと思います。まさに、プレス型の段取カイゼンへの着眼なども記載されてます。何より、副題の「脱規模の経営をめざした」という言葉が、小ロット多品種生産に取り組まれているご質問者の着眼と合致しております。
弊職の執筆にて、業界専門誌の「プラスチックス」10月号から、
【トヨタ生産方式をプラスチック成形加工に応用しよう】
という長期の連載を予定しております。よろしければ参考になさってください。
また、10月21日に同じ出版社主催にて、同じテーマのWEBセミナも予定しております。合わせてご参考になさってください。
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