QC/QAをやられている方にお聞きしたいのですが、製品規格値の分布を正規分布やt分布で求めると、その製品がスペックアウトする確率は理論上0にはならないと思うのですが、この確率をどこまで許容できるのか、どのように設定しているのでしょうか?
スペックアウト品を市場に流したときの損失を求め、QCコストと足し合わせてコストを最小化することは論理的に可能かと思いますが、実際には、スペックアウト品の損失額を確定的に求める(しかもスペックごとに求める)ことは容易ではありません。
弊社の場合、こういった議論をしようものなら、確率0じゃなくて不安だから全ロット検査しろ、と言われかねないので、他の会社はどうやっているのかな、と思って質問しました。
まぐ様、
スペックアウトする確率は、CpkやZスコアで求められますが、確かにこの確率をゼロにするのは理論上不可能だと思います。
そこで業界の標準に御社の目標を合わせるところから始めてみては如何でしょうか。
例えば、私が所属している会社(電機業界)では、限られたサンプル数からCpkやZスコアを求め、Cpk = 1.33 (Z =4)を目標にしています。業界によって目標値は様々ですが医療業界などではこの数値はさらに高いはずです。
Cpk = 1.33 (Z =4)の場合、不良品の確率は 64 PPM(パーツ・パー・ミリオン)です。つまり私が所属する会社では100万個の部品に対して64 個の不良があった場合(確率)のコストと、さらにCpk値を高める価値(損失や労力)を計算・比較して求めた値を目標値(妥協値)として使っています。
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私も企業勤務時代に品質保証部門から同じような要求を受けて困ったことを思い出しました。
製造業に限りませんが、事業活動は趣味活動と違って社会損失を最小化することが重要です。目標は不良ゼロではありませんし、かといって企業の利益最大とも違います。
不良を見逃して企業の利益が一時的に増えても、購入者の不利益が増加します。一方で不良を減らすのに費用を掛けすぎると製造コストが上がり、価格を据え置けば企業の利益が減り、価格に転嫁すると購入者の金銭的損失が増えます。
要は適切な不良率を容認し、適切な検査コストで出荷するわけですが、この適切な不良率を計算できる技術者は悲しいほど少ないです。
直感的に分かるように不良品許容レベルは、不良品を使用することで大きな問題を発生する場合は厳しくなり、不良品でも大したことが起こらない場合に甘くなります。
前者は原子力発電所やロケットの部品、後者は100円ショップの多くの商品などが例になります。もちろんすべてがそうではないので、部品/製品ごとに市場での損害額を想定することが重要です。
品質工学の中に「損失関数」という概念があり、これを使うと許容できる特性が計算できるのでこちらの記事を参考にしてください。
https://www.monodukuri.com/gihou/article/65
若干わかりにくいかもしれませんので、後日私も解説記事を投稿したいと思います。
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