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QUESTION 質問No.71

縮小市場における戦略

生産戦略/マーケティング |投稿日時:
当社は社員数50名で、ある種の材料に関する加工を地方都市で40年続けております。同業者は国内に30社程度いますが、当社は大型の設備を持っているために、この業界では上位5社に入る規模です。

この分野は少しずつ新材料に置き換えられているために、市場が毎年10%近くずつ縮小しており、この後も回復するようには思えません。

ただし同業者は当社よりも規模が小さく、体力がないことから、毎年のように廃業者が現れ、その受注が当社に回ってくるため、当社の受注はここ10年ほぼ一定量を保っており、利益は少ないながら黒字基調です。

私は59歳で工場長を任されており、68歳の社長はまだ元気で営業に各地を飛び回っていますが、子供がいないために後継者がはっきりしていないので、もしものことがあれば私が指揮を執ることになるのかもしれません。

この状況下で当社が取るべき戦略、ならびに注意点をアドバイス下さい。
例えば以下のような観点があり、全部でなく一部への回答でも結構ですので、よろしくお願い致します。
(1)新規投資、技術開発をどうするべきか
(2)社員採用をどうするべきか
(3)宣伝広告や営業活動への考え方
(4)新規事業開発への考え方
(5)事業継承をどう準備するか(私から社長には話し出しにくい内容です)

   [これは事務局が考えた架空の(しかしありそうな)質問です]

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ANSWER
回答No1 | 投稿日時:

お世話になっております。
三軒主義経営事務所 大串 隆史です。

ご質問にお応えさえていただきます。

既存のビジネスが代替品(新素材)によって縮小、今後の回復の見込みがないのであれば、
(1)新規設備投資 については、避けるべきと考えます。
   ただし、ビジネスには残存者利得というものがあり、完全に対象市場が消滅するのに
   ある程度時間がかかるのであれば、現状の設備の保全・更新を行うことでまずは現状
   のビジネスを維持、脱落組みのシェアを確実に確保して当面の黒字を維持することが
   肝要になります。
(1)技術開発 については、現状のビジネスから派生・相乗効果が出そうな分野を中心に
   市場の可能性を検証、次の成長に向けた準備を早急に始める必要があります。
   企業としての体力が残っている間に、ビジネスモデルの転換を図るための技術開発は
   必要不可欠です。
(2)社員採用については、世代交代や社内の年齢構成を見据えながら、計画的且つ継続的
   に取り組んでいくことが欠かせません。人あっての会社であり、新陳代謝を図る上で
   も無理のない範囲で継続すべきです。
(3)宣伝広告や営業活動については、当面は現状のビジネスを維持・あるいは廃業事業者
   のシェアを確実に獲得する範囲では確実な取組みが必要となります。
   ただし、成熟市場だけに、不必要に大きな販売促進を行うことは、効果的に疑問があ
   りますので、これまでの状況を正確に分析した取組みが必要でしょう。
(4)新規事業開発については、前述しておりますが、基本的位にはこれまでの経営資源を
   活用可能な、相乗効果が出せそうな市場をまずは検討する必要があります。
   無論、全くの新市場への進出も選択枝としては否定できませんが、社内の管理システ
   ムや暗黙知を含めた、自社でこれまで培ってきた技術の棚卸を行いながらの検討が欠
   かせません。
(5)事業承継については、社長のご年齢から5年が限界と想定されますので、早急に取り
   掛かる必要があります。
   自社の次の成長に向け経営戦略検討に合わせて、社内体制の見直しと絡めながら主要
   メンバーを巻き込みながら、個人ではなく組織としての創意とする流れをまずはつく
   ることか始めることをおすすめします。

                                      以上




ANSWER
回答No2 | 投稿日時:

 ものづくり・工場経営&海外進出コンサルタント:中小企業診断士の遠山純夫です。
経営の盛衰は経営者の経営戦略と意欲でかなりの部分が決まってしまいます。従いまして5つの個々の質問に答える前に前提条件を述べます。それは、工場長が経営を承継する決意を固め、まずは自分なりの中期経営戦略・成長戦略案を作成した上で、社長と相談すべきです。会社の将来を担えるのは自分しかいないという自覚で考えていけば、事業をどう承継していくかはあとからついてくるものです。

(0)中期経営戦略・成長戦略の立て方
自社の強みと経営資源を徹底的に整理・分析します。その上で市場機会を分析して、強化・補完・逆転戦略を明確化します。この時の検討ツールとして、「クロスSWOT分析」が極めて有効です。少なくとも中長期で考えた時に、新規事業・新規商品にチャレンジしない限り企業規模を維持できません。どの分野・どの商品にチャレンジするのか?を考えて決めることが最も大切で、社運を賭けた選択となります。この新事業チャレンジを、新業種進出する場合に「第二創業」と呼び、同一業種内で新事業にチャレンジすることを
「経営革新」と呼びます。どちらも年単位の時間を要しますので、会社の体力がある内に取り組み始めておくことがポイントです。

(1)新規投資・技術開発
上で立てた中期経営戦略に基づく新規投資・技術開発は、現業経費を徹底削減してでも取り組むべきです。
進歩や挑戦のない会社はいづれ衰退していくでしょう。

(2)社員採用
会社が変わらなければならない時には、まずは既存の従業員に変わることを求めます。新事業にチャレンジしてくれる同志を社内から募ります。新事業に必要な人材スペックを社内従業員からだけでは賄いきれない場合に、新規採用するか・アウトソースするかという選択肢がでてきます。社員の年齢バランスや継続的固定費の重さ等から総合的な判断となります。

(3)宣伝活動・営業活動
常に投下費用対予測効果で考えます。ただし新規事業の宣伝活動・営業活動は投資ですので、単年度効果計算ではなく、事業のライフサイクル計算の中で何年間・いくらまで投資するのかという見込と決意で判断します。

(4)新規事業開発
新規事業の開発・立上げなくしては、企業の永続的発展はありえません。新規事業開発で大切なことは、自社の強みと経営資源を活かせる領域にすること・事業の安定的立上げには数年(3~5年)以上必要だという覚悟を固めることです。

(5)事業承継準備
新規事業立上げを工場長が先頭に立って行い、成果が表れてくれば自然と事業承継の話も出てくるでしょう。その背中を押す作業として、事業承継を専門としている中小企業診断士や弁護士に相談して、第三者から現社長にアドバイスしていただくという道が最適でしょう。

経営は人任せにできず、自分だけが頼りの仕事です。自分がこの会社をどうしたいのか、そのビジョンを描くことが第一歩ですので頑張ってください。




ANSWER
回答No2 | 投稿日時:

いつもお世話になっております。
製造業のマーケティングコンサルタントの宮本です。

 本件の最大のポイントは1点です。現在扱っている素材の加工が完全に新素材に切り替わり市場がなくなるかどうかの見極めがカギとなります。100%新素材に置き換わってしまうならば、新規事業の立ち上げの判断を早急にしなければなりません。残されたタイムリミットまでに新規事業の立ち上げが難しい、最悪の場合会社の解散まで視野に入れる必要があります。
 現在の市場が縮小するものの、一部置き換えのきかない需要が見込めるならば同業者の廃業がチャンスになります。しかし、業界上位5社の地位は万全ではありません。それは同業者の廃業による受注増は市場シェアNO.1の企業に集中するからです。残念ながら業界上位5社では市場縮小のペースと他社の廃業による受注増がきわどくバランスの取れている状態です。縮小市場でNO.1になり最終的に市場を独占することが理想です。
 大切なことはこの状況の中で御社が何を目指すのか?ということです。リスクを最小限に押さえ生き残りを優先するのか?それとも早い時期に次の世代へバトンタッチしたいのか?もしくは新規ビジネスにチャレンジして会社を大きくしたいのか?御社の目標に沿って新規投資、技術開発も採用戦略も宣伝広告・営業活動もそして事業継承も選ぶべき戦略が異なるのです。目指す方向性と取れるリスクの限界を決めることが先決です。
 ご相談内容を拝見すると今後大きくビジネスを伸ばすより、事業継続していくことが優先されると思われます。となれば既存市場での勝ち残りによる残存者利益の確保が定石です。長期供給・安定供給をベースに安心して取引を継続してもらえる体制を作る必要があります。人材・教育・営業・宣伝・事業継承を具体的に検討する前に会社の将来の方向性と取れるリスクについての方針を社長と話し合い固めることが先決です。