粘着現象とタッキファイヤーの基礎の確認と応用展開
★粘着剤の基礎から機能発現を理解するために必要となる粘弾性や高分子の特徴的な振る舞いについて解説し、粘着挙動に対するタッキファイヤーの働きについて、具体的な事例を交えて解説!
★オリゴマー製造技術を軸としたアクリル系粘着材用のタッキファイヤーの設計検討を概観して、開発検討での特性設計の例を紹介!
セミナー趣旨
(粘着剤とは)
粘着剤とは、感圧接着剤(PSA:Pressure Sensitive Adhesives)とも呼ばれ、一般的な接着剤とはかなり異なる性能を有しています。その特徴を簡単にまとめると以下となり、このような感圧特性は粘着剤バルクの粘弾性特性と強い関係があることが知られています。
• 手で押さえた程度の弱い圧力により基材に容易に粘着(タック:ベタベタと引っ付く)する。
• 時間経過により比較的高い接着力(とくに、せん断歪みに対するクリープ耐性)を発揮する。
• 必要に応じて、再度剥離できる。
(タッキファイヤーの役割)
粘着剤開発の初期においては、天然ゴムに「特定の化合物」を添加することでタックのような感圧特性を付与しており、このような添加剤をタック付与剤(タッキファイヤー)と呼びました。タッキファイヤーとしては、一般に、ガラス転移温度の高いオリゴマー(分子量が数千以下の高分子化合物)が用いられています。
一方、近年広く用いられている合成系粘着剤(アクリル系ポリマーが主)では、単独でも粘着特性を満足できる場合がほとんどです。これらに対しては、各種特性の更なる調整のために用いられる添加剤という広義の意味でタッキファイヤーが添加されています。
(本講座のポイント)
本講座では、まず、粘着剤の基礎について簡単に振り返ることからはじめて、その機能発現を理解するために必要となる粘弾性や高分子の特徴的な振る舞いについて説明を進めます。
次に、上述の粘着挙動に対するタッキファイヤーの働きについて、具体的な事例を上げながら説明を行います。
最後に、東亞合成が有しているオリゴマー製造技術を軸としたアクリル系粘着材用のタッキファイヤーの設計検討を概観して、開発検討での特性設計の例を用いて話題提供を行います。
【講演キーワード】
全体:粘着剤、タッキファイヤー、粘着現象、粘弾性挙動、速度依存性、時間温度換算則
材料設計:粘弾性、液体の流動、濡れ、相溶性、ガラス転移温度
受講対象・レベル
このセミナーは、基礎的な内容の直感的な理解を目指し粘着剤やタッキファイヤーに関連する
さまざまな基礎知識を理解できますから、幅広い方に役立つものと期待しています。
• 粘着剤を設計したい方(化学系メーカーの技術者、研究者)
• 粘着技術を利用しようとしている方(各種ユーザー)
• 知識としてこの技術を理解しようとしている方(上記以外の方々:たとえば、営業の方)
必要な予備知識
• 中学から高校の理科の知識に基づいて粘着という現象やタッキファイヤーの働きを理解できるような説明を行います。
• できるだけ、図解でのイメージとしての理解を狙うので、特定の基礎知識は必要ありません。
• 化学構造式のようなものも少しは取り扱いますが、羅列とならないように配慮します。
セミナープログラム
1.はじめに • 理解へのアプローチ
• 本講座の進め方
2.粘着剤の基礎
• 粘着剤とは
• なぜ引っ付いて、剥がすことができるのか?
• その要求特性とは?
3.粘着特性発現の仕組みを理解する
• 粘弾性の基礎
• 高分子について
• 高分子の力学特性の温度・時間依存性
4.タッキファイヤーの働きについて
• 一般的な材料構成
• 設計の考え方について
• 評価の方法
5.タッキファイヤーの溶解性について
• 相溶性の基礎的事項
• 高分子の相溶性
• 相図の考え方
6.東亞合成での実際の開発例
• タッチパネル貼合用粘着剤向け新規タッキファイヤーの開発
• 評価内容の実例
• シミュレーションによる理解
7.Q&D (Question and Discussion
セミナー講師
東亞合成株式会社 佐々木 裕 氏
【経歴】
(2013年9月~現在)新規材料開発へのシーズおよびニーズの探索に従事。
(2009年4月~2013年8月)基盤技術研究所(所員:約40 名)において、所長として「分析、観察、物性評価、探索研究等の基盤的研究全般」に関わるマネージメントに従事
(2005年4月~2009年3月)分析研究所(2008 年に基盤技術研究所に改組) において、物性評価技術に関するマネージメントに従事
(2003年4月~2005年3月)社内プロジェクト「ホログラムメモリー関連技術」に参画し、光硬化材料のメモリー材料への応用研究に従事
(1993年4月~2003年3月)社内プロジェクト「オキセタン実用化プロジェクト」に参画し、オキセタン樹脂の実用化に向けた研究開発に従事
(1991年12月~1993年3月)米国レンセラー大学に留学(クリベロ教授)し、オキセタン材料に関する合成技術研究および硬化特性等の評価に従事
(1987年12月~1991年12月)ラジカル重合型紫外線硬化型材料の応用技術として、「シャドウマスクマスキング材の開発」に従事
(1986年4月~1991年12月)ラジカル重合型紫外線硬化型材料に関する各種研究開発業務に従事
(1986年4月)入社 研究所配属
【専門内容】
高分子関連の各種評価技術、各種シミュレーション等
【講演実績】
光硬化型材料、レオロジー、シミュレーション関連の学会発表および講演多数
セミナー受講料
【1名の場合】44,000円(税込、資料作成費用を含む)
2名以上は一人につき、11,000円が加算されます。
講師のプロフィール
これまで身につけてきた幅広い知見を活かして、原理原則に基づく論理思考と自由な発想とをミックス・アップして、企業での研究・開発に必須となるステージ・ゲートでの判断を支援ができるものと確信しております。
佐々木 裕
ささき ひろし / 愛知県 /
これまで四十年近く東亞合成㈱という化学系メーカーに所属し、各種の機能性高分子の研究開発に関わってきました。
海外留学をきっかけとして発見したオキセタン樹脂という新規材料の工業化にも成功し、その実用化において、各種の分析・観...続きを読む