〔初中級プロセス開発研究担当者にむけた〕実際に起こった不具合や解決方法、注意点で学ぶスケールアップ・ダウン検討および実験計画の進め方・データのとり方、操作の簡略化

『実際に経験した事例(失敗例)を参考に』
各開発段階で行う実験の注意点、実際のスケールアップ製造で遭遇した問題点をどのように対処、解決したか? 
更にそこから得られた知見をもとに効率的な実験計画の立て方、必要なデータの集め方をわかりやすく解説!

【1】開発初期(実験室~20Lスケール)の事例
【2】パイロット試作(100~500Lスケール)での事例
【3】パイロットから商用生産(2000Lスケール以上)での事例
【4】商用生産開始後の事例(数千Lスケール)
【5】最終精製工程のスケールアップと注意点

 

日時

【Live配信受講】 2025年2月25日(火)10:30~16:30
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    セミナー趣旨

    実験計画法は「実験の計画」と実験により得られたデータの「解析方法」の二つから構成される。実験の計画とは「目的に応じてどのような実験を行えばよいか?」あるいは「どうすればデータを効率的に集めることができるか?」と言える。原薬、中間体、化学品のスケールアップ製造は開発過程で絶対に避けられない部分であり、開発初期では合成プロセス、出発原料の変更のような大幅な変更も可能であるが、開発が進むにつれ変更は困難となり、逆に設定したパラメータの不足、不都合部分が明らかになってくる。特に製品の品質を決定する精製(晶析)工程は最も注意が必要な部分である。本セミナーでは実際に経験した事例(失敗例)を参考に各開発段階で行う実験の注意点、実際のスケールアップ製造で遭遇した問題点をどのように対処、解決したかを説明し、更にそこから得られた知見をもとに効率的な実験計画の立て方、必要なデータの集め方をわかりやすく説明する。

    習得できる知識

    ・医薬品、化学品のスケールアップ製造の進め方
    ・スケールアップに向けた実験の進め方、チェックポイント、
    ・スケールダウン実験の考え方、データの取得法
    ・スケールアップ製造での失敗事例
    ・精製(晶析)工程の考え方、注意点、チェックポイント

    セミナープログラム

    1.医薬品(原薬)の開発とスケールアップ(基本的な考え方)
    2.スケールとスケールアップの相違点
      ・小スケールとスケールアップのパラメータの比較と考え方、設定法

    3.合成法、合成ルートの設定、考え方、注意点(ICH M7、化審法、その他)
    4.スケールアップ実験するためのチェックポイント、考え方/
      原料、中間体の評価項目(安全性、安定性、結晶多形、溶媒和他)とその対応策

    5.スケールアップでの問題点(実際の経験から)と対応策
    【1】開発初期(実験室~20Lスケール)の事例
     ●転位反応:
      1gから10gにスケールアップしたら転位反応が原因で目的物が得られなくなった。(反応機構の理解)
     ●アスコルビン酸硫酸エステル誘導体の製造:
      1gスケールでは目的物が合成できたが、10gスケールでは合成不可の結果となった。(中間体の安定性)
     ●カラム分離工程の回避:
      前臨床試験に進むことが決まり、カラム分離工程回避の必要性が出てきた。(結晶性誘導体)
     ●ピリジン・無水硫酸錯体(硫酸エステル化剤)の合成:
      吸湿性が原因で目的物が得られないと判断したが、逆に吸湿性を利用することで大量生産可能な方法を見出した。
      (目的物の物性の理解)
     ●ペントキシフィリン中間体の製法検討:
      文献を参考に実験を進めたが目的物は得られず、実験結果に基づいて検討を進めたところ、簡単な製法にたどり着いた。
      (反応の理解)
     ●抗生物質の側鎖の製造:
      新合成法を考案し、特許出願までしたが、中間体に安全性の問題あることがわかり、検討中止。
      (安定性は変えられない)
     ●五塩化リンによるクロル化プロセス:
      溶媒を変更したら反応が進まなくなった。(結晶多形の影響?)
     ●アルキルホルムイミデート類の合成:
      青酸ガスを使用しなければならない。(反応の理解)
     ●エステルの選択(アミノチアゾール誘導体):
      メチルエステル、エチルエステルの比較実験をして相違点(物性)を確認、合理的な合成法に至った。
     ●その他
    【2】パイロット試作(100~500Lスケール)での事例
     ●ジクロルアセトニトリルの製造:
      設備の性能を安易に考えて刺激性のミストが噴出した。(反応の理解)
     ●アミノチアジアゾール誘導体の製造:
      設備の性能を安易に考えてオーバー反応してしまった。(反応後の安定性確認)
     ●塩酸ペンタゾシンの中間体の製造:
      スケールアップして中間体を大量合成したら分解してしまった。(中間体の物性は変えられない)
     ●アミノチアゾール酢酸誘導体の製造:
      再結晶プロセスをスケールアップしたら目的物が得られなくなった。(必ず原因がある)
     ●臭素化プロセスのスケールアップ:
      パイロットにスケールアップしたところ、反応開始を確認できず、大きなトラブルに陥りそうになった。
      対処法を検討した結果、合理的かつ安全なプロセス開発に至った。
     ●撹拌速度の影響:
      アセトン/炭酸カリウム系でのアルキル化反応。(不均一反応の考え方)
     ●結晶多形の同等性:
      外部委託したら結晶形で同等性の問題が発生。(規格設定の重要性)
     ●その他
    【3】パイロットから商用生産(2000Lスケール以上)での事例
     ●微量の添加剤の影響:
      2工程先の抽出・分液工程で問題(エマルジョン)発生。(微量の添加剤の影響、原料のロット管理)
     ●Phase III試験後の製法変更:
      爆発性の中間体を経由するためスケールアップ製造できずPhaseIII試験が終わってしまった。(反応の仕組みの理解)
     ●目標規格の原料が手に入らない:
      商用生産に入ろうとしたら原料が入手できなくなった。(原料調査の重要性)
     ●設備変更して反応の本来の姿がわかった:
      パイロットまでGL、商用生産でSUSに切り替えたところ錆が発生。(原料中の強熱残分の影響)
     ●アミノチアゾール酢酸製造のスケールアップ:
      パイロットまでは問題なかったが、商用生産で乾燥機の選択を誤った。(安定型と準安定型)
     ●キャンペーン生産:
      スポット生産では問題なかったエステル交換反応を、キャンペーン生産に切り替えたところエステル交換反応が進まなくなった。
      (種晶の影響)
     ●溶媒回収できる条件でプロセスを設計:
      溶媒回収しないと採算が合わなくなった。(発想の転換)
     ●残留溶媒の規格:
      商用生産に移行しようとしたら残留溶媒の問題発生。(溶媒和物)
     ●出発原料の製法に伴う問題(製法に伴う異性体混入の可能性)
    【4】商用生産開始後の事例(数千Lスケール)
     ●収量低下の逸脱:
      原料の溶解時間の影響(原料と溶媒の相互作用)
     ●技術移転:
      季節の影響まで考えていなかった。(湿度の影響)
     ●原料の純度をアップ:
      高純度の原料に切り替えた途端に逸脱(不純物除去の仕組み)
     ●乾燥時間の管理:
      順調に商用生産がスタートしたが、突然製品の乾燥時間が2倍(10時間→20時間)になった。(水和物の考え方)
    【5】最終精製工程のスケールアップと注意点
     ●精製溶媒の選択の重要性
      ・溶解、晶析プロセスで異性化
      ・歩留まりへの影響 (マレイン酸塩化のプロセス)
      ・乾燥工程への影響(水和物副生の影響)
      ・難溶性原薬、中間体の精製
      ・貧溶媒を加えて晶析
      ・精製工程で水を使用する場合
      ・原薬の乾燥プロセスで新たな残留溶媒が副生! 
     ●空気(酸素、水分)の影響
      ・溶解、脱色濾過、晶析中に過酸化物が副生
      ・固液分離~乾燥過程で結晶形が変化
      ・微量に副生した溶媒和物の影響)
     ●環境の影響
      ・遠心分離機の脱水袋、
      ・異物混入の瞬間
      ・フィルターの材質
     ●包材(一次包材、二次包材)の影響
      ・包材中の微量の添加物の影響(オキソン酸カリウム)
      ・包材の品質(結束帯の例)
     ●粉砕機器の管理
      ・洗浄手順(SOP)の書き方
     ●その他

    6.まとめ
     ●実験計画法による効率的なデータ収集
      (1)スケールアップを前提とした実験計画の考え方
      (2)スケールアップ前提の実験計画の考え方、データの取得法、活用法(事例を参考に)
        [事例1] プロセスの短縮:7日近くかかるプロセス(反応→抽出→濃縮→晶析→乾燥)を2日に短縮
        [事例2] 過酸化水素水による酸化反応(危険性回避)
        [事例3] 結晶多形のスクリーニング

    □質疑応答□

    セミナー講師

    (株)三和ケミファ 医薬品事業部 統括本部長 薬学博士 丸橋 和夫 氏
    [元 大鵬薬品工業(株) 合成技術研究所 所長]
    略歴
    1979年 和光純薬工業株式会社 入社、東京研究所 主席研究員
    1983年 薬学博士 (岐阜薬科大学)
    1991年 大鵬薬品工業株式会社 入社、工業化技術研究所・所長、合成技術研究所・所長
    2007年 三菱商事株式会社 入社、先端化学品本部・技術顧問
        (兼) 常熟力菱精細化工有限公司 (中国・常熟市) ・研開部本部長
    2008年 (株) エースジャパン入社 常務取締役 山形工場長
    2015年 (株) 三和ケミファ入社
    2016年 個人事業主登録、数社のアドバイザー業務も兼務、現在に至る。

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