海外工場支援者のための「物流指導7つ道具」(その4)
2016-06-08
国内で工場を展開されている会社であれば大抵の会社で物流業務をアウトソースしているのではないでしょうか。自家物流でものを運んでいるケースもあるかもしれませんが、今のトレンドはアウトソースにあると言えるでしょう。そこで、現在使っている物流会社に対する満足度を考えてみていただきたいのです。特に問題ないと考えている場合でも、第三者から見るといろいろな課題が見えてくるということもあります。一方で不満であるという回答の裏にはアウトソースしたものの物流品質やコスト改善が進まない、物流会社から何も改善提案が無いという事実があるようです。
ではなぜアウトソースしても物流が変化しないのでしょうか。その大きな要因に「物流会社にきちんとした仕様を提示していない」ことが挙げられます。つまり物流会社の選定過程に問題があるということです。海外に新たに拠点を設けるにあたっては物流会社もゼロからの選定となります。日本では物流会社と阿吽の呼吸でやっているとしても、海外ではそれは通用しません。そこで今回は皆さんが海外支援に出かけていく際にぜひ持って行っていただきたい「物流会社選定ツール」をご紹介します。
3PLという言葉をお聞きになったことはあるでしょうか。これはサードパーティ・ロジスティクスの略で次のように定義されます。
サードパーティ・ロジスティクスとは、荷主企業の物流機能である輸送、保管、在庫、顧客サービス、荷役、情報サービスなどを、荷主企業に代わって一括(フルライン)して提供するか、もしくは、これらの機能を個別にまたはいくつかを組み合わせて、一定期間契約に基づいて提供する事業者のことです。
簡単に言うと顧客の物流業務を包括的に請け負い、顧客の物流改革に寄与する物流会社のことです。つまり輸送だけ、倉庫保管だけという場合はアウトソースですが、それに加えて構内物流や梱包作業、資材発注業務など幅広く請け負うとともに、顧客に対して物流改革の提案が出来るようになればそれは3PLだということです。
海外で新拠点を設ける場合はまっさらな状態でオペレーションを行っていくので、物流を自家物流ですべて行うのか、アウトソースにとどめるのか、あるいは3PL会社に包括的に委託するのかの決断が必要になります。この決心によって選定対象となる物流会社は異なってくるので注意が必要です。
【選定ステップ1】RFIの実施
RFIとは Request for Information の略で発注先候補の会社に情報提供を依頼する文書のことです。調達条件などを決定するために必要な情報を集めるために発行し、相手先から一定期間内に回答を求めるものです。 このRFIで質問すべき事項は図1.に例として記したので参考にして下さい。RFIでは「Quality(品質)」「Cost(コスト)」「Delivery(納期)」「Development(開発力)」「Management(管理能力)」の5分類で質問していくと効果的です。ちなみに「Development(開発力)」とは部分加工を行いつつジャストインタイムで納入を行うなどの新たな発想での物流商品を開発する能力のことです。図2参照。
【選定ステップ2】候補会社訪問の実施
RFIはあくまでも物流会社側の申告がベースになっているため、その通りにオペレーションが行われているかどうか確認するためにもぜひ候補会社訪問を実施して下さい。その際に実施すべき点は2つです。1つ目は「物流現場の確認」です。5Sを始めとした物流現場マネジメントが出来ているかどうかを確認します。もう1つは「経営者面談の実施」です。...
皆さんが考えている物流を実現してもらえるかどうかについて確認して下さい。図3、図4参照
以上のRFI、物流現場確認、経営者面談を実施した結果をまとめ、自社の要求に合致しているかどうかについて採点表を作成して最終候補になり得るかどうかをチェックしましょう。図5参照。最終候補会社への絞り込みができたところで次のステップである物流会社選定プロセスへ移行することになりますが、これについては次回、第5回 「物流会社選定ツール」(中)で解説します。
この文書は、『日刊工業新聞社発行 月刊「工場管理」掲載』の記事を筆者により改変したものです。