TRIZ によるロジカルアイデア創造法(その2)

 第1章:企業の成長に不可欠なイノベーション

前回のその1に続いて解説します。
◆TRIZの説明ページへのリンク

3.イノベーション(経営革新)への対応

 
 利益を生み出すために “アイデア” が大切です。そして、その大切なアイデアを生み出すのは結局 “人” なのです。では、それらが目指すものは何でしょうか。それが、イノベーション(経営革新)です。米国の経営学者、P.F.ドラッカーが、述べているように、「イノベーションが富を創造する」のです。
 
 別の見方をすれば、アイデアを元に事業化する一連のプロセスこそが、イノベーションともいえます(他に、事業成果物としての意味合いもありますが、ここではプロセスを優先します)。ドラッカーは「すべての知識が揃ったときに、はじめて(成果物としての)イノベーションは成功する」とも言っています。つまり、アイデアが更にアイデアを生むというサイクルを、可能な限り早くまわすことがイノベーションへの近道です。
 
 では、このように重要な役割をもつアイデアを生み出すスキルを、従来のような個人ベースのスキルに任せておいていいのでしょうか。他社に先駆けて、顧客ニーズにマッチした新商品を市場に投入する必要があるわけです。企業を成長させていくためには、イノベーションの速度を上げることが、最重要案件になります。
 
【TRIZ が、イノベーションを加速する】
 ・顧客ニーズを実現するためのアイデアを生み出せます。そのアイデアを実現するための様々な課題についての解決アイデアを生み出せます。しかも、それらはこれまでの業界の常識にとらわれない斬新なものなのです。
 
【イノベーションが、利益を創造する】
 ・そのイノベーションの源泉はアイデアです。それらのアイデアを、先人の知恵の本質を借用し、自分達の経験や知識と結合することで、効果的に生み出していくプロセスこそが、TRIZ なのです。
 

4.イノベーション獲得への3つの要件

 
 ここで少しTRIZ からは離れて、イノベーションを起こすための仕組みについて述べます。イノベーションを起こすために必要なことはいったい何でしょうか。私の経験上、イノベーション実現にあたっては以下の3 つのことが必要と考えています。
 
 ① チャレンジ/挑戦:→ 失敗を恐れない、失敗を認める。許容する。 
 ② 主体性/自主性:→ 自分で(が)決める。 
 ③ パッション/情熱:→ 熱意が成功を導く。
 
 これらを「 精神論だ 」として一笑に付す方もいらっしゃるかもしれませんが、イノベーションを起こすのは “人” である以上、私は、その感情的な側面を避けてイノベーションは成功しないと考えています。当然、上記の3つは、企業サイドの問題も含んでいる事は理解していただけると思います。たとえば、1番目の“チャレンジ”は、従業員がいくらチャレンジ精神旺盛でも、会社としてそれをサポートする仕組みがなければ機能しないでしょう。なぜなら、チャレンジは失敗するという側面を否定できないからなのです。成功したら会社の成果、失敗したら社員の責任、なんて事になったら目も当てられません。
 
 2番目の自主性は、イノベーションに対する個人ベースでの基本要素です。変革を起こすためには、他人任せではなく、自分で決めながら進めていくことが大切です。自分で決めたことですから、やり通そうという気持ちになれるのです。皆さんの子供の頃、学校の宿題はどうしていましたか。 自分で進んで取り組んでいましたか。親から「宿題は終わった」と聞かれて、「今からしようと思っていたのに・・・」という答えをしながら、本心では「やりたくないなぁ」と思った記憶はありませんか。「言われなければ、やる気でいたのに……」と思った記憶。これは社会に出てからも同じです。上司などから指摘されて取り組むよりも、自らが工夫しながらやる仕事では、創造性が高ま...
っていることは言うまでもありません。そのための環境を整えることが、経営者や幹部の役目です。
 
 最後のパッションは、文字通り“ 情熱 ”です。この情熱を燃やせる環境作りも経営者、幹部の役目です。従業員個々人の精神論におとしめてはいけません。イノベーションを必要とする会社において、社員のやる気(パッション)をいかに高めていくかは、大切な要件です。これを、社員の気持ちの持ち方に丸投げするのではなく、会社の仕組みの中に組み込むことが大切です。このように、イノベーションを獲得するためには、個人と会社(組織)の両面での取り組みが重要なのです。  

↓ 続きを読むには・・・

新規会員登録


この記事の著者