中小製造業の組織設計の考え方(その2)
2016-09-27
前回のその1に続いて解説します。
中小企業、特に製造業では形としてライン組織という権力集中・定型業務タイプの組織で成り立っていましたが、これからは権限移譲、非定型業務型への移行が望ましいと考えられます。図2のように、企業の課題解決を図る上で組織も環境の変化に合わせて、柔軟に変えていかなければならないのです。
図2.中小企業の組織形態
近年の組織の役割として重要な点を述べます。企業の成長のため、課題達成のため、日常業務をこなすだけでなく、PDCAを回す改善活動も業務として実施しなければなりません。
この後説明するマトリクス組織は、そのような活動(プロジェクト活動)を行うのに適しています。課題達成を使命として、達成されれば組織は解散し、また新たな課題を解決するために別のプロジェクト組織が結成されます。今の時代、単なるルーチンワークを行う組織から、課題を解決する部門横断的な組織が必要になっているのです。
組織形態として、ライン組織とライン&スタッフ組織、マトリクス組織などがあり、会社の課題解決、目標達成のため、どのような組織形態が適しているのかを考えます。以下に各組織形態の特徴、メリット・デメリットについて解説します。
ピラミッド組織または軍隊組織とも呼ばれ、トップからの指揮命令ルートと下からの報告ルートがはっきりするメリットがあります。ただし、複雑な業務指示が伝わらない報告がトップまで上がるまでに時間がかかる等のデメリットもあります。また、官僚組織と言われるように、硬直化すると自部門の利益だけを追求するようになります。
ライン組織のなかにスタッフ部門を設けた組織で、スタッフは日常業務の指揮命令系ルートからは離れ、比較的長期の課題解決に取り組み、トップに対する提言や業務改善などを実施します。ただ、弊害として、役職を引退した人の腰かけ的ポストとなっている場合も多く見受けられます。
図3のように、ライン組織は残したまま、各部門を横に横断する形でつながりを持つ組織を重ね、いわばマトリクスを形成する組織を言います。プロジェクト組織は、一時的にこのような組織形態をとります。ライン組織の指揮命令系統を残したまま、プロジェクト組織の指揮により行動するため、どちらを優先するかを業務によって決めておく必要があります。
図3.マトリックス組織
中小企業では、組織や肩書は飾り物、指揮命令系統も曖昧になっています。人材の絶対数が不足する中小企業の場合、全員が助け合って仕事をしなければならない事は十分考えられますが、やはり組織の責任範囲、指揮命令系統はしっかりと決めておく必要があります。
なぜなら、そのことが、例えば問題発生時の原因追究と...
対策の責任部署が明確になり、構成メンバーのレベルアップと組織の強化につながっていきます。組織形態は、一例を示しましたが、組織を固定化して考えるのではなく、業務改革の実施や今後の新分野進出などに適応する組織の構想を描き、効果的な組織編成を行っていくことが重要と考えられます。