前回のその1に続いて、ISO9001:2015版品質管理の意味について考えてみます。ISO9001:2015の要求事項は製造現場の品質管理から、経営の品質管理にシフトしてきた事が強く感じられます。しかし、製品やサービスの品質は現場の日常管理のサイクルがうまく回って初めて達成されるものであり、これは、経営とは別に現場レベルのしくみが重要と考えます。
1. ISO9001:2015版の特徴
ISO9001:2015版の特徴として「経営との結びつき」があげられます。「事業プロセスに規格要求事項を統合すること」が求められており、組織の日常業務にマネジメントシステム要求事項を組み込むことにより、通常の業務を行うこととマネジメントシステムの運用を一体化することを意味しています。この事と、「文書の簡素化」の方向性と併せて考えると、品質マニュアルは「中期経営計画書」「事業計画書」などに置き換えることによって作成不要になるというものです。また、「リスク及び機会への取組み」は、事業を継続していく上で、市場や競合他社、自社の優位技術などを考え併せて取り組めという意味に捉えると「SWOT分析」などを用いて経営戦略を立案せよとの意味合いで捉えられます。
2. 1987:ISO9001の特徴
1987年に制定されたISO9001では、生産者が設計・開発、製造、据え付けおよび付帯サービス までのすべての業務を実施している場合に適用する規格で、当時は製造業の製造プロセスそのものの品質(不適合を出さない)管理を求めていました。当時のISO9001の要求から見ると、ISO9001:2015の要求事項は製造現場の品質管理から、経営の品質管理にシフトしてきた事が強く感じられます。
3. トップマネジメントとボトムアップ活動の融合
経営の品質と現場の品質は決して別々のものではありません。むしろ有機的に結びついていなければ組織全体としての品質向上は望めません。ISO9000が更に経営品質を求めて行くと同時に、現場レベルの日常業務における品質管理活動を融合させるしくみが必要になっているのだと思います。
4. 品質管理の『やらされ感』
ISO9000の取得、運用しても製品品質が向上しない、本当に役にたっているか怪しい、全体的に『やらされ感』が蔓延しているというような考えを持っている人は多いと思います。また、ISO9001:2015に切り替わると、その傾向がもっと強くなるのではないかと危惧されます。徐々に現場の「品質管理活動」が衰退していく原因の一つに、この品質管理の『やらされ感』があると考えられます。
5. 現場品質向上のしくみと9001:2008
9001:2008は以下のようなもので、製造業を強く意識させます。
6.3 インフラストラクチャー
6.4 作業環境
7. 製品実現
7.1 製品実現の計画
7.2 顧客関連のプロセス
7.3 設計・開発
7.4 購買
7.5 製造及びサービス提供
7.6 監視機器及び測定機器の管理
8. 測定,分析及び改善
私は、ISO9001:2015によって、製造現場から離れ、より経営品質に近づいたISO 9000:2015の品質管理とバランスを取るため、製造業に於いては、ISO 9001:2008 の考えを一部取り入れて「現場...
品質向上のしくみ」を残すべきと考えます。製造プロセスを規定するのはQC工程図、業務マニュアルなどとそれを守るしくみです。まずこれをしっかり固める事が必要です。問題が発生したら、物事を三現主義で捉え、因果関係の究明と、しくみの不備を直していく2段階の対策を行っていくことで、トラブルを未然に防止する現場のプロセスを作り上げ、理想に近づけて行きます。この事は現場の責任で独自に進めなければならないのです。(ボトムアップ活動)「何かトラブルが起こりそうな場合、その予兆を計りトラブルが起こらないようにするシステムの構築」まさに、この事が、求めている「品質管理活動」そのものです。