1. パロディーに絡んだ商標審の事例
知財高裁平成25年 6月27日 事件番号 平24(行ケ)10454号
無効審判審決取消請求事件
判断:4条1項7号、15号(混同)に該当 (登録無効)
登録第4994944号
本件商標をその指定商品について使用する場合には、これに接する取引者,需要者は,顕著に表された独特な欧文字4字と熊のシルエット風図形との組合せ部分に着目し、周知著名となっている引用商標を連想・想起して、当該商品が被告又は被告と経済的、組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように、その出所について混同を生ずるおそれがあるといえる。したがって、本件商標は15号に該当するとした審決の判断に誤りはなく取消事由2に理由はない。
原告は日本観光商事社のライセンス管理会社であるが(弁論の全趣旨)、日本観光商事社は本件商標以外にも、欧文字4つのロゴにピューマの代わりに馬や豚を用いた商標や、他の著名商標の基本的な構成を保持しながら変更を加えた商標を多数登録出願し(甲4,5,14)商品販売について著作権侵害の警告を受けたこともあること(甲15,16)が認められる。
これらの事実を総合考慮すると日本観光商事社は引用商標の著名であることを知り、意図的に引用商標と略同様の態様による4個の欧文字を用い、引用商標のピューマの図形を熊の図形に置き換え、全体として引用商標に酷似した構成態様に仕上げることにより、本件商標に接する取引者、需要者に引用商標を連想、想起させ、引用商標に化体した信用、名声及び顧客吸引力にただ乗り(フリーライド)する不正な目的で採択・出願し登録を受け、原告は上記の事情を知りながら本件商標の登録を譲り受けたものと認めることができる。
そして、本件商標をその指定商品に使用する場合には、引用商標の出所表示機能が希釈化(ダイリューション)され、引用商標に化体した信用、名声及び顧客吸引力、ひいては被告の業務上の信用を毀損させるおそれがあるということができる。
そうすると、本件商標は、引用商標に化体した信用、名声及び顧客吸引力に便乗して不当な利益を得る等の目的をもって引用商標の特徴を模倣して出願し登録を受けたもので、商標を保護することにより、商標を使用する者の業務上の信用の維持を図り、需要者の利益を保護するという商標法の目的(商標法1条)に反するものであり、公正な取引秩序を乱し商道徳に反するものというべきである。したがって、本件商標は7号に該当するとの審決の判断に誤りはなく取消事由1は理由がない。
2. パロディーに絡んだ商標審の事例
知財高裁平成22年 7月12日 事件番号 平21(行ケ)10404号
異議決定取消請求事件
判断:拒絶理由はない(登録維持)
「PUMA」との関係で登録が維持された唯一の例です。「パロディー」かどうかということは商標の類否判断においては無関係であるというスタンスが明記されています。
本件商標と引用商標Cとは、生じる称呼及び観念が相違し、外観も必ずしも類似するとはいえないものにすぎない点、原告が経営する沖縄総合貿易が主として沖縄県内の店舗及びインターネットの通信販売で本件商標を付したTシャツ等を販売するに止まっており、販売規模が比較的小規模である点に鑑みると、本件商標の指定商品たるTシャツ、帽子の取引者及び需要者において普通に払われる注意力を基準としても本件商標を上記指定商品に使用したときに、当該商品が補助参加人又は補助参加人と一定の緊密な営業上の関係若しくは補助参加人と同一の表示による商品化事業を営むグループに属する関係にある営業主の業務に係る商品であると誤信されるおそれがあるとはいえないというべきである。したがって、本件商標登録には、法4条1項15号にいう「混同を生ずるおそれ」があるとはいえず、これに反する原決定の判断は誤りであるというべきである。
補助参加人は本件商標は、補助参...
加人の商標のパロディであって補助参加人の商標の信用をフリーライドし、希釈化するものである等と主張する。
しかし、「パロディ」なる概念は商標法の定める法概念ではなく、講学上のものであって、法4条1項15号に該当するか否かは、あくまでも法概念である同号該当性の有無により判断すべきであるのみならず、後記のとおり原告は引用商標C等の補助参加人の商標をパロディとする趣旨で本件商標を創作したものではないし、前記のとおり、本件商標と引用商標Cとは生じる称呼及び観念が相違し、外観も必ずしも類似するとはいえないのであって、必ずしも補助参加人の商標をフリーライドするものとも、希釈化するものともいうこともできない。したがって、補助参加人の上記主張は採用することはできない。