商標はどこまで拡がるのか(トレードドレス)
2018-01-04
特許庁では「トレードドレス」というものを商標登録の対象とするかどうかを検討しているようです。いわゆる「新しいタイプの商標」を議論した際に、「トレードドレス」も検討の対象となっていましたが、新しいタイプの商標を審議した場では「「トレードドレス」は、国際的にその定義が確立していないのが実態であり、保護される対象も一義的に定まっているとはいい難い。海外主要国において「トレードドレス」として登録されている例をみると、(a)商品の立体形状、(b)商品の包装容器、(c)建築物の形状(店舗の外観(内装))、(d)建築物の特定の位置に付される色彩等が含まれているが、これらは立体商標等によって保護され得るとも考えられる。」(平成25年9月 産業構造審議会 知的財産分科会報告書)として検討対象から外されていました。
「トレードドレス」というのは、商品や営業(サービス)の識別に寄与している文字や図形などの「伝統的な商標」以外のものを包括する言葉であって、「トレードドレス」を商標として保護すべきかどうか、というのは意味のない問題設定に思われます。
特許庁が意識しているのは、おそらく「コメダ」の事案だと思います。店舗のデザインが不競法で「商品等表示」と認められて保護された最初の事例です。
商品や営業の識別に寄与している「表示」を「商標」として保護しよう、という意思には反論しません。しかし、「登録」して保護する必要があるものなのか、という点に疑義があります。登録の弊害がないのでしょうか。
商標法では「トレードドレス」の出願については出所表示性(3条2項)の証拠が求められます。証拠に基づく判断時期は査定時です。査定時に出所表示性を備えていれば登録され、権利は、更新により半永久的に存続します。これでいいのでしょうか。立体商標や位置商標も同様です。
文字の商標においても、過去に登録された商標が普通名称化されていたり、普通の品質説明語句になっていたりします。
立体商標の登録が開始されたとき、登録された立体形状が「普通の形状」であると言うことが難しい、どうしたらよいか、という議論がされていました。「文字(言葉)であれば、使用例を検索できるが「立体形状」だと難しく、「普通に使用されている」(26条)という抗弁が難しい、ということです。
話変わってデザインのことです。一昨年、工業製品である「幼児用の椅子」について著作権を認める判決がありました。この判決は一般化しないだろう、とは思いますが、広く影響しているようです。
知財は、保護も大切で...
すが、それが「自由な発想」にもとづく「造形」を阻害してはなりません。「マネ」だと思われればネットで盛り上がります。ネットでの「マネ」の範囲は法律で想定する範囲を超えています。オリンピックエンブレムの著作権騒動もそう思います。
識別機能を果たしているあらゆるモノを「商標」として登録し、保護することが産業の活性化につながるのか。特許庁の施策は「持てるものの保護」に傾いているように思います。