1. 読み手の立場に立って文書を書く
これまでに掲載した記事の中で以下のことを何度も書きました。
わかりやすい文書を書くうえで最も重要なことは、“書き手”と“読み手”の違いを認識したうえで、読み手の立場に立って文書を書くことです。
読み手の立場に立って文書を書くことを何度も書いているのは、わかりやすい文書(読み手に内容が明確に伝わる文書)を書くうえでこれが最も重要なことだからです。
そこで、今回は、「読み手の立場に立って文書を書くこと」に着目した記事を書きます。
2. 読み手の立場に立って他の人が書いた仕事に関する文書を読む
2.1「わかりにくい」という感想が出てくる
他の人が書いた仕事に関する文書、例えば、報告書や技術提案書あるいは社内稟議書など、を読んだことがある方もいらっしゃると思います。これらを読んだとき、「ここがわかりにくい」のような感想を思ったことはありませんか?
例えば、次ののようなことです。
◎ この業務報告書の構成がわかりにくい。業務の流れが明確になるような構成にして欲しい。
◎ ダラダラとした文章なので何が言いたいのかよくわからない。
◎ 言いたいことが明確にわかるような文章で書いて欲しい。
◎ 数値解析で入力した定数の決定根拠が報告書に書かれていない。何でこのような入力定数に決めたのか?この入力定数の決定根拠を書いて欲しい。
◎ 文章だけで書かれた説明なので内容がわかりにくい。説明した内容に関する図や写真を入れて欲しい。
◎ この文を読んでも内容が頭の中に浮かんでこない。具体的な内容の文を書いて欲しい。
このような感想を持ったことがあれば次のことを認識してください。
“読み手の立場に立ってこれらの文書を読んだことから、「ここがわかりにくい」という感想が出た”
書き手の立場でこれらの文書を読むとこのような感想は出てきません。書き手は“知っている人”注1)だからです。例えば、文章だけで書かれた説明を読んでも「文章だけで書かれた説明なので内容がわかりにくい」という感想は出てきません。
書き手は知っている人なので、説明した内容に関する図や写真が頭の中に入っています。したがって、文章だけで書かれた説明を読んでも、頭の中にある図や写真を思い浮かべながら説明を読むことができるからです。
他の人が書いた仕事に関する文書を読む場合には、読み手(知らない人)注1)の立場に立ってこれらの文書を読みます。したがって、頭の中が真っ白な状態でこれらの文書を読むことから「◯◯がわかりにくい」という感想が出てきます。
また、「◯◯して欲しい」という感想は、「◯◯のように書けばわかりやすくなる(内容が明確に伝わる)」という意味にもなります。
2017年12月27日に掲載された記事は、「わかりやすい文書を書くうえで最も重要なこととは」がテーマでした。この中で、以下の文を紹介しました。
“今月販売予定のスマートフォンは、高齢者のお客様の利便性を考えて設計された製品です”
頭の中が真っ白な状態でこの文を読めば、「お客様の利便性とはどのような意味か?」と思います。また、「『お客様の利便性』についての具体的な意味を書いて欲しい」と思います。そこで、「お客様の利便性」についての具体的な意味を書けばこの文がわかりやすくなります。
“今月販売予定のスマートフォンは、高齢者のお客様が使いやすいように、テンキーが、従来型に比べて1.2倍大きく表示されように設計された製品です”
2.2「わかりやすい」という感想が出てくる
読み手の立場に立って他の人が書いた仕事に関する文書を読むと、「この書き方はわかりやすい」という感想が出てくることもあります。
「この書き方はわかりやすい」という書き方があったらその書き方を覚えてください。その書き方を覚えれば仕事で文書を書くときにそ...
れが応用できます。
3. 習うより慣れろ
“習うより慣れろ”ということわざがあります。これは、「人や本から教わるよりも、練習や経験を重ねたほうがよく覚えられる」のような意味です。
これまでで解説したように、他の人が書いた仕事に関する文書を読むことでも、わかりやすい文書の書き方を学ぶことができます。セミナーや書籍で学ぶのとは違った方法でのわかりやすい文書の書き方の学び方です。まさに、これは、“習うより慣れろ”です。
「他の人が書いた仕事に関する文書を読む」という行為から、わかりやすい文書の書き方が学べます。このようにして学んだ書き方は決して忘れません。
◆ この書き方がわかりにくいので、◯◯のように修正しよう。
◆ この書き方がわかりやすいので、この書き方を覚えよう。
わかりやすい文書を書きたいと思っている方は、他の人が書いた仕事に関する文書を積極的に読み、わかりやすい文書の書き方を学んでください。