開発テーマの判断:過去の投資はテーマ評価の考慮外

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 ステージゲート法の運用で最も難しいことの一つが、テーマの中止です。中止すべきテーマを確実に中止するために、どのような対応策を考えれば良いかについて議論したいと思います。

1.過去の投資が増えるほどテーマの中止はしにくくなる

 テーマを中止しない理由として、「 過去の投資が無駄になる」という理由があります。当初の想定ほど大きなリターンを期待できないことがわかっても、中止してしまえば、リターンはゼロです。そのために、そのプロジェクトを先に進めてしまいます。そして進めれば進めるほど、投資は増大していきますので、ますますテーマの中止はしにくくなってしまします。投資が増えていくと、もう一つの中止をしない理由「過去の判断が間違っていることを認めることになる」がますます効いてくるのです。

2.過去の投資はテーマ評価の考慮外

 意思決定の理論では、過去に投資した支出を「埋没コスト」と言い、今後の意思決定で考慮してはならないというものがあります。過去に投資したという事実はいまさら撤回することはできないという現実に基づき、意思決定をしようということです。つまりゲートでのテーマの承認・中止の判断では、過去の投資は考慮してはならないのです。

 ちょっとピントこないかもしれませんので、ここで簡単な事例を紹介しましょう。

 仮にここまである技術の開発に、1億円の投資と既にして、このプロジェクトを先に進めるかどうかを財務面から評価することにします。もちろん、財務面からだけで意思決定をするわけではありません。しかし、最低限投資は回収できなければなりませんので、財務面の評価は絶対基準として重要です。

 今この時点では、この技術を製品化し市場に導入することで、市場投入後に30億円の現金収入(利益は、過去の投資の減価償却費を含み計算が複雑になりますので、現金収入すなわち、キャッシュフローで考えます)を見込むことができると想定することができます。ひょっとすると、評価者は、将来30億円の現金収入が見込めるので、財務面からの評価では承認であると考えるかもしれません。

 しかしまだ考慮すべきことがあります。まだ市場投入までには投資が必要です。もし、今後追加的に40億円の投資が必要であるとすると、40億円(追加投資)>30億円(市場投入後の現金収入)となりますので、このプロジェクトは中止をすることが賢明です。しかし、今後必要な追加投資が20億円ですむとすればどうでしょうか? 20億円(追加投資)<30億円(市場投入後の現金収入)ですので、財務面からの評価では承認です。

 つまり、今後の判断には、これまで技術の開発に費やした1億円は全く影響を及ぼさないのです。これまでの投資が100億円であろうが、100万円であろうが関係ないのです。

3.将来の投資を無駄にしない

 「過去の投資は無題にしないようにしよう」は経営判断としては間違いではありません。企業経営においてはこのようなセンスを持つことは重要であり、かつ経営者の間ではそのように理解されています。しかし、それにあまりに拘泥することで、これからする将来の投資も無駄になってしまったらどうでしょうか? 「将来の投資も無駄にしないようにしよう」というセンスも同時にもたなければなりません。人間は、過去にすでに現実として自社の財布から外に出て行ったお金の重みは、将来出て行くお金より重く感じるものです。このあたりのバイアスがあることを理解して、意思決定をしなければなりません。

4.キャッシュフローで考える

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 ステージゲート法の運用で最も難しいことの一つが、テーマの中止です。中止すべきテーマを確実に中止するために、どのような対応策を考えれば良いかについて議論したいと思います。

1.過去の投資が増えるほどテーマの中止はしにくくなる

 テーマを中止しない理由として、「 過去の投資が無駄になる」という理由があります。当初の想定ほど大きなリターンを期待できないことがわかっても、中止してしまえば、リターンはゼロです。そのために、そのプロジェクトを先に進めてしまいます。そして進めれば進めるほど、投資は増大していきますので、ますますテーマの中止はしにくくなってしまします。投資が増えていくと、もう一つの中止をしない理由「過去の判断が間違っていることを認めることになる」がますます効いてくるのです。

2.過去の投資はテーマ評価の考慮外

 意思決定の理論では、過去に投資した支出を「埋没コスト」と言い、今後の意思決定で考慮してはならないというものがあります。過去に投資したという事実はいまさら撤回することはできないという現実に基づき、意思決定をしようということです。つまりゲートでのテーマの承認・中止の判断では、過去の投資は考慮してはならないのです。

 ちょっとピントこないかもしれませんので、ここで簡単な事例を紹介しましょう。

 仮にここまである技術の開発に、1億円の投資と既にして、このプロジェクトを先に進めるかどうかを財務面から評価することにします。もちろん、財務面からだけで意思決定をするわけではありません。しかし、最低限投資は回収できなければなりませんので、財務面の評価は絶対基準として重要です。

 今この時点では、この技術を製品化し市場に導入することで、市場投入後に30億円の現金収入(利益は、過去の投資の減価償却費を含み計算が複雑になりますので、現金収入すなわち、キャッシュフローで考えます)を見込むことができると想定することができます。ひょっとすると、評価者は、将来30億円の現金収入が見込めるので、財務面からの評価では承認であると考えるかもしれません。

 しかしまだ考慮すべきことがあります。まだ市場投入までには投資が必要です。もし、今後追加的に40億円の投資が必要であるとすると、40億円(追加投資)>30億円(市場投入後の現金収入)となりますので、このプロジェクトは中止をすることが賢明です。しかし、今後必要な追加投資が20億円ですむとすればどうでしょうか? 20億円(追加投資)<30億円(市場投入後の現金収入)ですので、財務面からの評価では承認です。

 つまり、今後の判断には、これまで技術の開発に費やした1億円は全く影響を及ぼさないのです。これまでの投資が100億円であろうが、100万円であろうが関係ないのです。

3.将来の投資を無駄にしない

 「過去の投資は無題にしないようにしよう」は経営判断としては間違いではありません。企業経営においてはこのようなセンスを持つことは重要であり、かつ経営者の間ではそのように理解されています。しかし、それにあまりに拘泥することで、これからする将来の投資も無駄になってしまったらどうでしょうか? 「将来の投資も無駄にしないようにしよう」というセンスも同時にもたなければなりません。人間は、過去にすでに現実として自社の財布から外に出て行ったお金の重みは、将来出て行くお金より重く感じるものです。このあたりのバイアスがあることを理解して、意思決定をしなければなりません。

4.キャッシュフローで考える

 そのために、きちんと今後のお金の出入りとして、今後追加的にいくらの投資が必要で、その結果のリターンはいくらになるという数値を明示する必要があります。キャッシュフローを用いディスカウントキャッシュフロー(DCF)法で、現時点でのそのプロジェクトの価値を評価することで、明確に数値で表すことができます。上でも触れましたが、利益で表すと、利益の中には過去の投資の減価償却費分が含まれてしまうので、明確な数字を提示することはできません。

5.ゲート向けの成果物の上で明示する

 このように、今後の追加投資総額と市場投入後の現金収入総額は、テーマの承認・中止をするためには極めて重要な数値になります。従って、ゲートでのテーマ評価と前提となるプロジェクト・チームが作成する成果物の中には、この内容を入れなければなりません。

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この記事の著者

浪江 一公

プロフェッショナリズムと豊富な経験をベースに、革新的な製品やサービスを創出するプロセスの構築のお手伝いをいたします。

プロフェッショナリズムと豊富な経験をベースに、革新的な製品やサービスを創出するプロセスの構築のお手伝いをいたします。


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