◆本物の顧客満足の話をしよう
2. そもそも顧客満足(CS)とは何か:市場が縮小するときこそ、顧客を見よ
日本では、いうまでもなく、市場規模が縮小しています。大きく捉えれば、グローバル化による海外企業の日本進出、長期にわたる経済環境の悪化、とくに中小、小規模企業の業績低迷、また、そこに勤務する人々の実質賃金の目減り、少子高齢化による市場規模の縮小、労働力不足といったところでしょう。こうした場合に何か重要になるかというと「顧客との関係の在り方」です。
「顧客との良質で長いご縁の創造」がCS・CSMの趣旨です。だから蟻の一穴という言葉のとおり、随所に小さな穴が空いている状態であれば、その穴に直面した顧客は躊躇し、購入を避け、マイナスのロコミを行なうのです。これも企業の「骨粗程症」の一つの症状です。
「不満足度調査」では定性的な要素に関しても必ず指標化しますが、たとえば、「継続購入意向」や「紹介意向」の指標(パーセントや点数)が下降線をたどると、それからしばらくして業績も下降線を示します。すなわち、不満足度調査の結果が業績の先行指標ですから、もし結果が振るわなければ、早急に手を打つ必要があります。顧客はよくわかっていて、きちんとした顧客志向の取り組みを行なうと、1年後の調査にそれが評価された結果として明確に現れます。
前回調査のアンケート記入者でなくても明確な指摘をされ、その様子が見事に浮き彫りになるのですから、「顧客を馬鹿にし、なめてかかっている企業」は痛い思いをするのです。顧客は企業の実活動ぶりを見極めているのです。
一方、企業が顧客からもたらされた課題を解決すると、顧客は、前回のアンケート記入者でなく全く別人であったとしても見事に評価し、比率や点数は上昇し、業績は上向いていくのです。
3. 商いの現実、それは「顧客」である:顧客動向と、背後にある事情・理由
ちなみに、顧客の動向について、以下の質問に明確に答えることはできるでしょうか。
(1)「他社→他社→?」
すなわち顧客が他社のみで購入していて自社で商品・サービスを購入してくれない理由。もし今後、購入してくれるようになるとした場合、どのような理由からか。その人数・件数と金額は?
(2)「自社→他社→?」
すなわち自社の顧客が他社に移ってしまう理由。他社に移った顧客がその後、自社に戻ってくるか、来ないかの理由とその人数・件数と金額。
(3)「他社→自社→?」
...
すなわち他社顧客が自社顧客としてブランドスイッチしてくれる理由とその後自社に留まるか、はたまた他社に移ってしまうのか、その人数・件数と金額。
(4)「自社→自社→?」
すなわち自社顧客が継続している理由、しかし今後も同様の状態か否か。
以上は「不満足度調査」で調べる一つの側面です(もちろんその調べ方には秘訣があります)。
次回は、作業は誰が行うのか、仕事の主体は誰か。から解説を続けます。
【出典】 武田哲男 著 なぜ、あの企業の「顧客満足」は、すごいのか PHP研究所発行
筆者のご承諾により、抜粋を連載