【目次】
第4章 親和図法の使い方 ←今回
第5章 マトリックス・データ(MD)解析法の使い方
第6章 マトリックス図法の使い方
第7章 系統図法の使い方
第8章 アロー・ダイヤグラム法の使い方
第9章 PDPC法の使い方
第10章 PDCA-TC法の使い方
新QC七つ道具:第4章 親和図法の使い方
4.3 事例に見る親和図法による混沌解明のノウハウ
4.3.3 活用事例の詳細説明
前節で紹介した“事例A、B”を使い、両者の比較も交えて、各ステップの具体的なノウハウと勘どころを解説します。
Step 1:テーマの選定
この連載が対象とする21世紀型スタッフワークの場合、前節で説明したように「テーマは主体性を持ち」(ポイント1)、「あるべき姿を問う形」(ポイント2)にすることが望ましいのです。しかしこの事例の場合、1N7研で与えられたテーマは“これからのQAはどうなるか?”という“思想構築のための課題”であり、上記趣旨に反する主体性のないものでした。
ところが、筆者が実務上のテーマである“QA体系図の再設計”への活用を企図したこともあり、与えられたテーマを“これからのQAはどうあるべきか?”に変更して取り組んだので、結果的にテーマに主体性を持たせることができました。いま一つのポイントである“あるべき姿”についても、当時筆者は“10年先を見越したQA体系図の設計”を目指していたので、テーマにある“これからの”の中に“10年先を見越した”を含めて取り組みました。
このように、結果的にテーマ選定の両ポイントをクリアした形となっていたことが、初挑戦にもかかわらず成果を生むことができたと感じており、ポイントとして強調したゆえんです。特に、完成したQA体系図がかなり先進的なものとなり得たのは、筆者のねらいがそうであったというよりも、データ採取に関わるテーマが“これからのQAはどうなるか?”と、将来展望を模索する形になっていたことが大きいと感じられ、改めてテーマ選定の重要さを感じた次第です。以下に、テーマに関する本事例特有の事項について説明します。
【特記事項】テーマ変更は自己課題とした
当初テーマの変更をメンバーと指導講師に申請しようと思いましたが、最終的に申請せずに終わりました。申請しないで自己課題とした理由は、メンバーの会社の事情がそれぞれ違うので、メンバーそれぞれが主体性を念頭にしたのでは、データの拡散がひどくなり、解析に堪えないものになる心配があったのと、“~はどうなるか?”で採取したデータは、QAの将来を模索する形となるので、“10年先を見越した”を念頭に置いた“~はどうあるべきか?”のベースとしても貴重だと考えたからです。
Step 2:メンバーの選定
メンバーは、1N7研生をグループ分けしたB班の、筆者を含めた6人です。このテーマは、一企業の範疇にとどまらない、高度で未来志向のものだったので、それぞれ立派な企業のTQC推進関係者からなるメンバー構成は願ってもない格好のものでした。特に、筆者の場合、顧客がすべて企業であったので、エンドユーザーと直結した会社のメンバーからのデータは貴重で、特にPL関連の結論の充実に有効でした。以上のように、この事例では、テーマに対して、願ってもない好条件のメンバーに恵まれたのです。
しかし、通常はメンバーを社内から選ぶことになるので、このようなわけにはいかないが、このステップでは、前節であげたポイントを念頭にベストメンバーを選定することに注力します。その上で、入手データの質に対する不安感があるときは、Step3のポイント1にあげたように、メンバーの勉強を促すとよいでしょう。
Step 3:言語データの採取
本事例でも、採取手段はBS(ブレーン・ストーミング)法ですが、QCに一家言を持つそうそうたるメンバーだっただけに、“BSの四原則”の確認の必要はまったくなく、活発にして有用なデータを入手することができました。ただ、データの偏り(欠落)が見られ、データ採取におけるデリケートさを痛感しました。その理由を【特記事項】で、反省点を【反省事項】で詳述します。
【特記事項】入手データの偏り(欠落)が生じた
データ採取における筆者の自主課題(~はどうあるべきか?)の影響を危惧し、発言には慎重を期したつもりでしたが、結果的に他班と比較したとき、決定的な違い(欠落)が見られました。というのは、N7提唱の書に、同じ1N7研での2つの事例が紹介されていますが、その双方にある“公的または、外的機関による影響”に関するデータが欠落していたのです。
【反省事項】データの偏り(欠落)の原因
これは、当時筆者が他メンバーよりも本題への関心が高く、その分、内省によるデータが他メンバーより具体的で豊富だったため、筆者の内向き思考の発言が、皆の発言をリードする形となり、公的・外的な面に関するデータが欠落する結果になったように思われます。すなわち、“~はどうあるべきか?”となると、企業や産業界に関する主体的色彩の強いデータが先行することになり、公的・外的機関の動向・趨勢に関するものが欠落したものと思われます。読者の中には、リーダー的立場の方が多いと思われますが、反面教師として参考にしていただけるのではないかと思います。
Step 4:データの確認・整理
この事例の場合は、会社も立場も違うメンバーがグループを形成していたこともあって、データに対する確認は、データの採取時、その内容や背景についての説明が同時進行で行われ、通常のステップとは違った形になりました。
このように、データの背景説明を逐一実施する形式となったことにより、データに対する諸説明が、次の発言の呼び水になるなど思わぬメリットもありましたが、【特記事項】で詳述するようなデメリットが大きかったので、注意が必要です。
【特記事項】先行カード寄せの功罪
ほとんどのデータについて、発言ごとにその内容や背景の確認を行ったので、データ採取に時間を要しましたが、その間に、メンバーの頭の中では、かなりのレベルで“カード寄せ”が先行実施されており、その分カード寄せは結構スムーズでした。
このことは、時...