1. ファインバブルを安定して利用する技術
ファインバブルの現象には沢山の条件があり、それぞれの影響が複雑に関連しています。その中に、影響の大きさに比べ研究が少ない事項が、水槽と液循環です。この条件をファインバブルについて検討し、超音波との組み合わせによる新しいファインバブル・超音波洗浄システムを開発しました。このシステムを使用して、超音波とファインバブルによる「超音波洗浄」を行っています。ここでは、球形サイズで20μ以下の、ファインバブルを安定して利用する技術を紹介します。
2. 脱気ファインバブル発生液循環装置
「揚程の高い、マグネットポンプの吸い込み側のバルブ(配管)を絞る。」と言う、ポンプメーカーの禁止事項を行います。(通常のマグネットポンプで10年以上機能します。揚程の高さとバルブの絞り状態の設定でマイクロバブルの発生量とサイズを調整できます)特許の問題はありません(公知とされています)
【揚程の高いマグネットポンプ】
マグネットポンプ MDシリーズ ホース接続 MD-70RZ
ポリプロピレン製 (株式会社イワキ IWAKI CO, LTD.)
3. ものづくりの課題
(1) 洗浄装置・洗浄液の管理
物理作用として、振動現象を利用する装置の場合、装置の設置による低周波の振動現象と、装置固有の振動現象に加え、洗浄対象物・治工具の振動現象が、相互作用により振動状態は複雑に変化します。洗浄効果のある、多くの事例では、非線形性の振動現象が発生しています。非線形性の確認を行い、管理することは、論理的な学習と振動計測に関する理解が必要です。
洗浄液の化学作用として、洗浄効果を利用する装置の場合、洗剤の濃度管理が重要ですが、水槽内の濃度分布を測定することは難しい状況です。液温、湿度、気温、気圧による環境との相互作用により各種の分布は変化します。
特に、溶存気体濃度の分布は化学反応において大きな影響がありますが、溶存気体濃度を均一にする方法は知られていません。(ファインバブルの拡散性が一つの方法です)洗剤を投入しても、濃度分布のバラツキを大きくしているだけの場合、洗浄結果のバラツキをより大きくする結果になります。
(2) 気候・環境などの各種変化が洗浄効果に影響
台風の季節に多いトラブルの原因に、気圧の変化があります。気温や湿度と異なり、人が感じにくいため原因として考慮しない傾向があります。(台風が来る1週間前あたりから低気圧になり影響が出始める傾向があります)さらに、気圧の変化が大きな影響になります。(ゆっくりと低気圧になる傾向が、洗浄効果を下げます。台風直後、気圧が上昇する傾向は、洗浄効果も上昇します)
(3) 洗浄物の表面は、保管・処理技術の発展とともに変化
洗浄レベルの要求も変化しました。20年前の脱脂洗浄は、様々な洗浄方法が効果を出していました。現在、多くの脱脂洗浄は、超音波洗浄あるいは洗剤・溶剤洗浄が主体となっています。次工程の、めっき・溶接・コーティングでの要求(不良率や洗浄レベル)が高く、洗浄後の保管状態にも注意が必要な状況です。クリーンルームでのめっき処理、コーティングは増えています。
(4) 洗浄管理、洗浄評価に関する技術・研究・機器は不十分
洗浄は解明されないのです。洗浄物に対する固有の方法を開発する必要があります。
超音波洗浄機の場合、音圧測定に関して、音圧レベルが高いと洗浄効果が大きいという単純な傾向はありません。(超音波洗浄機の出力レベルを下げることで洗浄効果を改善した事例は多数あります)伝搬周波数や非線形現象をとらえないと洗浄効果につながる改善ができません。
そもそも、安定した超音波照射が実現できる装置は非常に少ない状態です。不安定な変化は、共振現象を起こし、洗浄効果の低下につながります。洗浄装置以上に、洗浄物の表面に伝搬する超音波振動をとらえることが必要です。(このような実験を行っているメーカー・研究者はほとんどいません。超音波システム研究所は、10年間のコンサルティングで測定解析を行い、洗浄物の特性に合わせた制御技術を開発してきました)
洗浄物の形状・材質・数量に合わせた、各種(超音波・液循環)制御・専用治工具の工夫が必要です。これは、個別の研究・開発となるためほとんど研究されていません。
4. 超音波洗浄機の事例写真
5. 脱気ファインバブル発生液循環装置
球形サイズで20μ以下のファインバブルの効果...