暗黙知の可視化プロセス 技術伝承とは(その8)
2019-02-22
前回のその7に続いて解説します。
再現性が確保できたら、可視化・形式知化した内容をマニュアル化すると共に、自動化などを検討することが可能になるのですが、ここまでは現状の情報整理のみで、少子高齢社会でのものづくりに対応するための効率化が抜けています。
平成の次の時代へ伝える技術に対しても、生産性向上をこの段階で行い、次世代へムダのない効率的な情報を伝える必要があります.なお改善はあらゆる所に原価を高めるムダがあるという前提で、例えば移動が多い作業を撲滅したり、単位作業毎の作業時間を短縮する (リードタイム短縮) など、作業分解した結果を基に様々な観点で改善と工夫を行っていくことが必要です。
このように暗黙知状態となっている技術者の思考プロセスを作業分解することで、形式知可能な技術と属人的な技能を切り分けて整理することができるため効率的な伝え方ができます。また技術者固有の課題に関しても作業分解の抽出・整理の過程で伝承者と継承者がコミュニケーションをとることで解決方向を見いだすことができると考えています。
暗黙知をどこまで可視化するかは、誰にどのような内容を伝えるのかによって異なってきます。目的や対象者により、対象となる継承者が判断できる可視化のレベルが異なります。継承者の状態によりケースバイケースになりますが 「何ができていなければならないか」、「何を知っているべきなのか」、「どんな態度をとっておく必要があるか」 などを手がかりにどこまで可視化するのかを検討します。
そのうえで類似知識や経験の有無により伝承スピードにも差がでるため、継承する側の立場で何が必要な情報かを考えれば、どこまで可視化かするかは自ずと明確となります。継承者視点に立ち、また可視化する目的に応じて、「何を、どの程度伝えれば、理解が進むか」 といった観点で考えておくのです。
通常,形式知可能な技術が 7~8割、属人的な技能が 2~3割程度が望ましいといわれていますが、業種や業態によってもその程度...
は異なってくるでしょう。また移動や運ぶといった単純作業は、形式知化可能であっても誰でも理解できる内容であるため、それらの作業を形式知化しておく必要はないのです。
次回に続きます。