要実施事項の抽出結果 新QC七つ道具: 系統図法の使い方(その6)
2019-03-08
【目次】
前回のその5に続いて解説します。
これは、複雑な事象を、逐次展開を重ねて小規模で取り組みやすい事柄に分解し、それらを分担実施することによって、最終目的達成を企図する手法の鉄則といえ、ここでいう相互に独立とは、展開結果である末端項目内容の重複回避を意味し、意図するところは活動の的確さと効率向上です。
ただ、この事例のような、問題解決が組織全体に関わるテーマの場合、重複で問題なのは、展開項目そのものの重複よりも、展開項目の実施母体の重複です。というのは、展開項目の相互独立性があいまいなまま展開を続けると、末端展開項目である要実施項目の焦点(目的と実施責任部署)がぼやけてしまい、効果発揮を期待する実施段階の活動が、総花的となり、労多くして功少なくなる懸念があるからです。
その点、図7-1の事例の1次展開は、テーマ解決のために必要な事項の“実施母体”という側面をとらえて展開しており、以降の展開項目の実施責任部署が明確です。ただ、この実施母体を念頭に置いた展開の場合でも、2項目展開の原則をはずれると、QCサークル、職制、事務局、トップ、各々の活動といった展開になる可能性があり、支援活動の展開上重複が避けられないことになりますが、2項目展開の原則を貫くことにより、この事例のように、最終的な「核心実施母体(この事例の場合“QCサークル”)」が浮き彫りになり、その後の展開における展開項目の目的が明確となるので、効率の高い活動が期待できます。
「核心実施母体が“QCサークル”である」というようなことは、テーマが決まったときから自明です。との向きもあるでしょうが、その点が系統図上で明確になっていないと、展開項目そのものが目的化してしまい、実効ある活動につながらないのではないでしょうか。
また、系統図の作成作業も、展開作業そのものが目的化してしまうと、図7-1においても、展開項目相互の独立性を無視して、すべてを末端まで展開してしまい、かえって実施段階での混乱を招く可能性があります。
次項で説明する第2のポイントはその点に関するものです。
逐次2項目展開による系統図作成の場合、よほどのことがない限り、2次の展開、すなわち、展開項目が4つの時点で問題の大枠を把握できるので、そのうちの1つの展開項目に的を絞り、他項目とは独立して末端までの展開を進めることになるのです。その場合、4つのうちどれから取りかかるかという選択に関するポイントです。
ただ、このような注意を要するのは、テーマの複雑さから、ある側面では明確に独立しているが、他の面で何らかのつながりが存在する場合の話であり、展開された4項目が、相互に完全独立の場合は、どれから始めても特に問題はないのです。
この事例でいえば、“活動母体”という点では「QCサークル」と「その支援部隊」と明確に独立しているが、展開が進むにつれ、支援の授受という関係の存在が無視できなくなってくるのです。このような状態で、支援部隊に関する項目を優先して末端まで展開するのは、ニーズの把握なしに支援項目を列挙することになり、まさしく、総花的で、労多くして功少ない支援につながる懸念が大です。
現に、この事例の場合、ポイント2に従って選択した最初の項目の展開結果をみると、そこから読み取れる支援ニーズを起点とした支援態勢の構築が求められるところであり、機械的な全項目に対する末端までの展開が不要なことは明らかです。
欠落防止型系統図の結論は、発想展開型系統図では抽出できなかった「活動時間の確保」と「QCCリーダーのリーダーシップ」が活発なQCC活動の鍵を握る、ということであり、欠落防止機能を発揮できたといえます。では、このような一見基本的な事項が、なぜ発想展開型では抽出されなかったかということですが、一番に、実際に活動しているQCCメンバーの意見が収集されていないことがあげられます。しかし、このようなデザインアプローチ的な思考を要するテーマに対する言語データの採取は、一般的にQCCメンバーのような層には不向きであることは、混沌解明のところで言及した通りです。
この二律背反的な問題点に対する解決策については、事例をもとに次項で説明します。いま一つは、「発想展開型」の場合、自由な発想をベースとした採取により入手データをベースに“手段・方策の系統づけ”を行いますが、入手データの次元を見極めるのが難しい場合が多く、結果として、欠落防止が期待できるほど厳密な系統づけにはならない点があります。
型」との補完的活用
発想展開型系統図は、上述のように欠落防止機能は不十分な反面、論理的で普遍的な「欠落防止型」にはみられない利点が存在します。それは、その職場や会社独自の事情を反映した対応策や方針、さらには、関係者の特質に立脚したユニークなアイデアの抽出がなされ、結果として他では真似のできない活動が生まれ、問題に対する高効率対応が期待できるという点です。
したがって、使い方としては、プロジェクトリーダーが「欠落防止型」で核心を把握し、スタッフに委ねた「発想展開型」の結論との融合を図ることにより、特殊事情を反映した網羅性の高い要実施事項の抽出が期待できるでしょう。
次回に続きます。