オメガ-3系油脂とその酸化安定性とは

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1. ω-3(n-3)系油脂とは

 ω-3系油脂は主に、えごま油、あまに油、魚油です。最近では「オメガ3」と表すことが多いと思いますが、n-3とも表します。
 
 えごま油とあまに油の原料は名前のとおり、えごま(荏胡麻)とあまに(亜麻仁)の種子から採油されます。文部科学省の食品成分データベースによりますと、えごまには脂質(油脂)が43.4%含まれ、その脂質中の脂肪酸にはα-リノレン酸が61.3%の組成で含有し、あまにには脂質が43.3%含まれ、その脂質中の脂肪酸にはα-リノレン酸が59.5%の組成で含有しています。
 
 一般的な油糧種子である大豆や菜種にはそれぞれ、油脂が20%、40%でありますので、ちょうど菜種と同じくらいの油脂分であるといえます。
 
 一方、魚油についてUSDA(アメリカ農務省)のFood Composition Databaseによりますと、魚油中(いわし)の脂肪酸にはEPAが10.1%、DHAが10.7、計20.8%の組成で含有しています。
 
 ω-3と表すのは、以下の図に表現したα-リノレン酸のモデル図において、右側末端の炭素から数えて3番目に二重結合を有する脂肪酸であるからです。EPAやDHAも同様であるため同じω-3脂肪酸となります。
 
  油脂
  図1. α-リノレン酸モデル図
 
 α-リノレン酸、EPA、DHAは、同じω-3系の脂肪酸ではありますが、脂肪酸を構成する炭素の数と二重結合の数が違います。
 
 α-リノレン酸は図1のように、炭素が18個と二重結合が3つで「C18:3」と表します。そしてEPAは炭素が20個と二重結合が5つで「C20:5」、DHAは炭素が22個と二重結合が6つで「C22:6」となります。
 
 これらの脂肪酸は、様々な生理機能性が知られています。例えばα-リノレン酸は必須脂肪酸であり、栄養機能食品として一日当たりの摂取目安量に含まれる当該栄養成分量が定められた上・下限値の範囲内において、「n-3系脂肪酸は、皮膚の健康維持を助ける栄養素です。」と表示することができます。[1]
 
 一方、EPAとDHAでは、イコサペント酸(エイコサペンタエン酸)エチル、またはω-3脂肪酸エチルとしての医薬品があり、高脂血症の改善等が効能・効果として表示されています。[2、 3] また、食品分野では特定保健用食品、機能性表示食品の関与成分として知られています。
 

2. ω-3系油脂の酸化安定性

 ω-3系油脂には二重結合を複数有する脂肪酸(高度不飽和脂肪酸)が多く、非常に酸化されやすい油脂であるため、取り扱いには十分に注意が必要です。
 
 二重結合を2つ以上有する脂肪酸は、二重結合の間にあるメチレン基(図1参照)と酸素が反応し過酸化脂質を形成します。そのため、脂肪酸に二重結合が多いほど酸化されやすく、例えば、α-リノレン酸の場合、リノール酸(C18:2)の酸化速度と比較して1.6~2.4倍速いといわれています。[4]またEPA、DHAの場合は、リノール酸が主要組成脂肪酸である大豆油といわし油のPV(過酸化脂質量)で評価した酸化安定性比較によると、PVが300(meq/kg)に達する時間において、いわし油が大豆油の約12倍も速いという報告があります。 [5]
 
 過酸化脂質は、さらに酸化が進むことで重合体や、カルボニル基が生成し、さらにそれらが分解してアルデヒドなどのカルボニル化合物等が生成します。これらによって異臭を生じ、食すことにより人体に有害な作用を及ぼします。[6] そのため、取り扱う際には、光、酸素、熱から極力避けるよう取り扱わなければなりません。
 
【参考文献】
[1] 消費者庁ホームページ「栄養機能食品とは」https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/health_promotion/pd...
 

1. ω-3(n-3)系油脂とは

 ω-3系油脂は主に、えごま油、あまに油、魚油です。最近では「オメガ3」と表すことが多いと思いますが、n-3とも表します。
 
 えごま油とあまに油の原料は名前のとおり、えごま(荏胡麻)とあまに(亜麻仁)の種子から採油されます。文部科学省の食品成分データベースによりますと、えごまには脂質(油脂)が43.4%含まれ、その脂質中の脂肪酸にはα-リノレン酸が61.3%の組成で含有し、あまにには脂質が43.3%含まれ、その脂質中の脂肪酸にはα-リノレン酸が59.5%の組成で含有しています。
 
 一般的な油糧種子である大豆や菜種にはそれぞれ、油脂が20%、40%でありますので、ちょうど菜種と同じくらいの油脂分であるといえます。
 
 一方、魚油についてUSDA(アメリカ農務省)のFood Composition Databaseによりますと、魚油中(いわし)の脂肪酸にはEPAが10.1%、DHAが10.7、計20.8%の組成で含有しています。
 
 ω-3と表すのは、以下の図に表現したα-リノレン酸のモデル図において、右側末端の炭素から数えて3番目に二重結合を有する脂肪酸であるからです。EPAやDHAも同様であるため同じω-3脂肪酸となります。
 
  油脂
  図1. α-リノレン酸モデル図
 
 α-リノレン酸、EPA、DHAは、同じω-3系の脂肪酸ではありますが、脂肪酸を構成する炭素の数と二重結合の数が違います。
 
 α-リノレン酸は図1のように、炭素が18個と二重結合が3つで「C18:3」と表します。そしてEPAは炭素が20個と二重結合が5つで「C20:5」、DHAは炭素が22個と二重結合が6つで「C22:6」となります。
 
 これらの脂肪酸は、様々な生理機能性が知られています。例えばα-リノレン酸は必須脂肪酸であり、栄養機能食品として一日当たりの摂取目安量に含まれる当該栄養成分量が定められた上・下限値の範囲内において、「n-3系脂肪酸は、皮膚の健康維持を助ける栄養素です。」と表示することができます。[1]
 
 一方、EPAとDHAでは、イコサペント酸(エイコサペンタエン酸)エチル、またはω-3脂肪酸エチルとしての医薬品があり、高脂血症の改善等が効能・効果として表示されています。[2、 3] また、食品分野では特定保健用食品、機能性表示食品の関与成分として知られています。
 

2. ω-3系油脂の酸化安定性

 ω-3系油脂には二重結合を複数有する脂肪酸(高度不飽和脂肪酸)が多く、非常に酸化されやすい油脂であるため、取り扱いには十分に注意が必要です。
 
 二重結合を2つ以上有する脂肪酸は、二重結合の間にあるメチレン基(図1参照)と酸素が反応し過酸化脂質を形成します。そのため、脂肪酸に二重結合が多いほど酸化されやすく、例えば、α-リノレン酸の場合、リノール酸(C18:2)の酸化速度と比較して1.6~2.4倍速いといわれています。[4]またEPA、DHAの場合は、リノール酸が主要組成脂肪酸である大豆油といわし油のPV(過酸化脂質量)で評価した酸化安定性比較によると、PVが300(meq/kg)に達する時間において、いわし油が大豆油の約12倍も速いという報告があります。 [5]
 
 過酸化脂質は、さらに酸化が進むことで重合体や、カルボニル基が生成し、さらにそれらが分解してアルデヒドなどのカルボニル化合物等が生成します。これらによって異臭を生じ、食すことにより人体に有害な作用を及ぼします。[6] そのため、取り扱う際には、光、酸素、熱から極力避けるよう取り扱わなければなりません。
 
【参考文献】
[1] 消費者庁ホームページ「栄養機能食品とは」https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/health_promotion/pdf/health_promotion_170606_0001.pdf (ダウンロード:2019.3.12)
[2]持田製薬株式会社ホームページ「エパデール」http://www.mochida.co.jp/dis/medicaldomain/circulatory/epadel/index.html (ダウンロード:2019.3.12)
[3] KEGG MEDICUホームページ「ロトリガ」https://www.kegg.jp/medicus-bin/japic_med?japic_code=00060775 (ダウンロード:2019.3.12)
[4] 太田静行:「油脂食品の劣化とその防止」, p75表4.2(1977)
[5]イワシ油の酸化により生成する過酸化物とアルデヒド含量の関係, 北海道大学水産科学研究彙報, P53-57 Fig.1(2003)
[6] (社)日本食品衛生協会:「食中毒予防必携」p.413-416(1998)
 

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この記事の著者

中谷 明浩

食用油脂関連技術と知財情報の専門家。「食用油と知財情報の水先案内人」として、数々の技術課題を解決に導くエキスパート。

食用油脂関連技術と知財情報の専門家。「食用油と知財情報の水先案内人」として、数々の技術課題を解決に導くエキスパート。


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