意匠登録 知財経営の実践(その28)

 

1. 知財の持つ価値 

 知財経営の実践については、その重要性が参考文献のように報告されています。〔1〕〔2〕知財の活用を、企業経営においては、常に意識しましょう。知財経営が有効となるのは、技術が自分の会社の強みとなる場合です。自社の強みを分析してみることが必要です。強みが技術にある場合は、知財戦略を考えてみましょう。

2. 知財経営:意匠とは

 意匠権は、工業製品のデザイン全般が保護対象です。どのようなデザインも意匠権で保護されるわけではありません。量産される工業製品の美的デザインが保護対象です。工業製品ということで、構想段階のデザインや形のないものは対象になりません。美的デザインであっても、工業製品である必要があります。

 絵画や彫刻は、美的デザインですが、工業製品でありませんので対象になりません。意匠法は、産業の発達を目的としていますので、芸術分野は対象とはならないわけです。しかし、たとえば、こけしのような工芸品の場合、一定数の量産が可能ですので、対象になります。意匠権の対象は、「視覚を通じて」ですので、手触りや匂い、香りのデザインは対象ではありません。

3. 知財経営:意匠登録の要件

 意匠について登録を受けるためには、次の要件を満たす必要があります。

 登録前に公表されたデザインは、新規性がないとして登録できません。ただし、例外的にすでに知られてしまった意匠でも、知られた日から6ヶ月以内に、一定の手続きをすれば、新規性を失わなかったものとみなされます。

 これは、意匠が出願前に消費者モニター調査などを経て決定されることがあるという実情を考慮したものです。意匠は、すでに知られているものと同一だけでなく、類似のものは登録できません。また、意匠は容易に創作できたデザインでないことが求められます。意匠の創作を保護するものなので、すでに世の中にあるデザインや形を単なる寄せ集め、構成を変えた程度ものものは対象にはなりません。意匠は、工業製品の美的デザインを保護するものです。したがって、機能的なデザインは保護されません。ネジの構造は、その製品の機能を確保するために不可欠なもので、意匠の保護対象にはなりません。

 

4. 知財経営:意匠出願から意匠登録まで

・出願前の調査

 意匠権は、他の意匠出願より先に出願しなければなりません(先願)。先に同一あるいは類似した意匠出願がないか、意匠登録の要件を満たしているかの調査が必要です。意匠の場合は、同一だけでなく類似しているかどうかを調査する必要があります。意匠の場合は、類似の範囲の判断が難しいです。この点について専門家の判断をあおぐことも重要です。

・出願

 デザインを創作しただけでは、自動的に意匠権は与えられません。意匠権を取得するためには、意匠出願を特許庁にして登録を受けなければなりません。願書に出願人として一定の情報を記載するとともに、デザインを図面や写真などにまとめて出願をします。特許庁に出願をすると、出願番号が与えられます。

・方式審査と補正

 意匠出願は、出願書類が形式的に不備がないか手続き上において不備がないかの審査がなされます(方式審査)。もし出願書類に形式的に不備がある場合でもいきなり却下とはなりません。補正命令が出されます。定められた期間内に補正をして問題が解消されれば、...

次の実体審査へと進みます。

・実体審査から登録査定

 方式審査を通過すると、意匠としての登録要件の審査が行われます。登録要件を満たしていない場合は、拒絶理由が通知されます。これに一定期間内に応じて、補正書や意見書を提出して拒絶理由が解消すると、登録査定となります。

 拒絶理由が解消しないと拒絶査定となります。拒絶査定に不服がある場合は、拒絶査定不服審判を請求して審決を求めることができます。さらに審判の結果にも不服ならば、審決の取消を求める道もあります。

 次回に続きます。

【参考文献】

〔1〕特許庁「中小・ベンチャー企業知的財産戦略マニュアル2006」(H19.3)

〔2〕「戦略的な知的財産管理に向けて「知財戦略事例集」(2007.4特許庁)

◆関連解説『技術マネジメントとは』

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