【第2章 中国工場の実状を知る】
【作業者について】
中国工場で働いている作業者とは、いったいどんな人だちなのでしょうか。
前回のその6に続いて解説します。
(6)中国工場の作業を深堀して考える
ある日系工場では、作業を[分解・単純化]する従来型作業に限界を感じて、転換を試みました。何を試みたかと言いますと、作業に対する考え方を従来型とは180度変えたのです。作業の「分解・単純化」ではなく、作業を「組合せ・複数化」することに挑戦しました。一人の作業者がいくつかの作業をやる訳です。そのためには作業者のスキルアップが必要になります。そのスキルを身に付けることができれば、従来よりも少人数で工程を組むことができ、生産量に応じたライン編成が容易になります。
一方で作業の複数化は、次のような側面を持っています。スキルを身に付けた作業者が辞めたときに、誰でも代わりが務まると言う訳ではありません。作業者の入れ替えは簡単には出来ないのです。
(7)試みた結果
この日系工場が、作業の「組合せ・複数化」を試みた結果はどうだったか?
結論から言うと、途中で挫折しました。理由は、これを進めていた途中にリーマン・ショックが起き、その後、作業者の定着率が急激に悪化したことによります。複数の作業のスキルを身に付けるためには、作業者が定着していることが条件となります。その条件が崩れてしまったために、進めることが出来ませんでした。もともと中国は日本に比べ作業者の定着率は悪いのですが、この工場ではそれまでの定着率であれば、作業の複数化を進めることは可能と考えていたのです。
(8)これからの中国工場での作業
筆者は、この日系工場が目指した「作業の複数化」は、決して間違っていないと考えています。
しかしながら、中国工場の作業者や工程のすべてについて「作業の複数化」をするのは無理があります。従来型の「作業の単純化」を適用する作業や工程と、「作業の複数化」を適用するところをしっかり見極めて、うまくバランスを取って進めることが大事だと考えています。ここで頭に入れておいていただきたいこと...
中国は日本に比べ作業者の入れ替わりは激しいのですが、全員が入れ替わる訳ではありません。定着してくれている人は必ずいるはずなので、そういう人たちをコアにしてスキルの向上を図るという考えを持つことです。
次回、(9)定着させるために何が必要かに続きます。
【出典】根本隆吉 著 「中国工場の品質改善」 日刊工業新聞社発行 筆者のご承諾により、抜粋を連載