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1. 食品技術:官能評価の課題
特許を取得するために欠かせないのは「発明の効果」の具現化でしょうか。技術課題を解決するための発明がどのような効果を有するのを明細書で示さなければなりません。食品の開発や改善の評価方法として当たり前のように活用されるのが「官能評価」で、発明の効果を立証するためにも実施例としてよく利用されています。
食品特許の特徴の一つとして、機械や電機系などの非食品特許に対し、この官能評価による効果を確認することが多いという点にあります。食品では「まろやか」や「おいしい」などの味覚による感覚が非常に大切な要素であるため、それらを発明の効果として示すのは当然のことと思います。
しかし、官能評価は「ヒト」の味覚や感覚を測っているために「曖昧さ」を含んだ測定値であるともいえます。
では、その官能評価にどのような課題があるのでしょうか。それは、必ずしも誰もが同じ試験を試み、その結果、同じ結論を導き出すことができないというところにあると思います。そのため、特許の権利範囲に入っているのか否かを明確にすることができないなど、曖昧さがもたらす課題が指摘されています。
これらの官能評価に対する課題は、一つの特許係争事件で浮彫になりました。それは「トマトジュース事件」と呼ばれ、知的財産高等裁判所(以下、知財高裁)で今後の食品特許実務において非常に重要な判例が示されました。
2. 食品技術:トマトジュース事件とは何か
I社のトマトジュースに関する特許5189667「トマト含有飲料及びその製造方法、並びに、トマト含有飲料の酸味抑制方法」(登録日2013.2.1)に対して、K社はこの特許には不備があり...