【第2章 中国工場の実状を知る】
【部品・材料】
前回のその24に続いて解説します。
◆ 対応策(2) 育成する気概を持つ
中国メーカーの品質をよくするときに改善要求を出して出来なければ「はい、さようなら」ではなく、出来るように指導する、育成するという気概を持つことも場合により必要です。
購入部材のコストを下げるには常に新しいメーカーを開拓することが必要です。しかし、購入先の開拓は簡単な仕事ではありません。工数もかかりますしメーカーを見極めるスキルも必要です。
新しい中国メーカーを見つけたとき、多くの場合、品質レベルはこちらが求めるレベルになっていないでしょう。そのような場合、品質管理のやり方を指導するなどしてそのメーカーを育てる必要がでてきます。そうしたまだまだな中国メーカーであるほど、大きなコストメリットを得られる可能性があるとも言えます。
ただし、日系企業ならどこでも育てることが出来るかと言えばそうとは限りません。育てるには、ある程度の規模・体力、そして指導できる能力が必要であり、出来る企業と出来ない企業があるのも事実です。また、育つのを待つ時間的な余裕がないケースもあります。育てることが出来ない企業は、最初からある程度の品質になっている中国メーカーを開拓することになります。
◆ 対応策(3) 自社の能力を高める
- 不良品を入れない
- 不良品を作らない
- 不良品を外に出さない(不良品を顧客に渡さない)
この三つができれば不良問題など起きない訳です。特に中国工場では、不良を外に出さない、ということが出来ていないのが実状です。これは中国メーカーだけの問題ではなく日系中国工場でも同じく出来ていません。ですから中国工場の品質は悪いと言われるのです。先ずは作ってしまった不良品を確実に検出して止める、お客さんには渡さないようにすることをしっかりやることが大事です。
◆ 社内の意識を変える
中国企業の部品・材料を使いこなすために必要なのは、社内の意識を変えることです。
中国メーカーの部材を使う目的はコスト以外の何ものでもありません。日本製のそれと比べて品質が同等で価格だけが安いのであれば問題はないのですが、実際にはそのようなケースは稀で、価格が安い分品質レベルの落ちたものとなっています。
中国メーカーの部材の使用を進めるときに、それを見つけてきた購買部門だけが「使っていこう」と頑張ってもダメです。一番必要なのは、社内の意識を変えることです。今までとは品質レベルや技術レベルの落ちた部材を買う、使うという認識を会社全体で持たないと使いこなすことは難しいと言えますO特に部材を評価して使用可否の判断をする技術部門、設計部門にこの意識がないと前に進みません。それら部門の人たちは、既存の部材と比べ品質は同等レベルで価格だけが安いものを見つけてきたという前提で中国メーカー部材の評価をしているので、簡単に使用OKが出る訳がありません。日系企業は本当に慎重で、石橋を叩いても尚渡らないところがあります。それに比べて、香港、台湾、韓国系企業は、使えるものは使うという姿勢でいる...
もう一つ生産現場の人たちにもこの認識を持ってもらう必要があります。現場の人たちは被害者意識というものを持っているので、事前に今までとは品質レベルの違う部材を投入するとアナウンスしておくことが大事です。それをせずに投入すると今までと同じレベルの部材が来ると思っている訳ですから、品質レベルの落ちた部材が来たら文句を言いたくなるのは当然です。
中国メーカーの部材を使うことでコストメリットを得るには、それなりの苦労と覚悟が必要です。
次回は、2.5 まとめ、日本工場と中国工場の違いです。
【出典】根本隆吉 著 「中国工場の品質改善」 日刊工業新聞社発行 筆者のご承諾により、抜粋を連載