◆ 目的無きデータ分析にも意味はある。遠回りかもしれないが、良いこともある
よくデータ分析するとき、目的を明確にせよ! と言います。正しいでしょう。目的無きデータ分析は、時間ばかり浪費し、結局のところ具体的なアクションに繋がりにくい。そう考えると、データ分析は目的ありきでやるべきです。しかし、現実には目的無きデータ分析に手を染める人や組織も少なくありません。ビッグデータ的なことをやれ!AI(人工知能)だ!機械学習だ!データサイエンスだ!IoT(モノのインターネット)だ!と組織の上から落ちてきて、目的無いままデータ分析をすることに陥った人も少なくないことでしょう。
よくよく考えると、まったく目的無くデータをこねくり回すことは少ないです。企業であれば、結局のところ売上か利益の拡大が目的になります。コストカットも効率性も利益拡大に寄与します。
何が問題なのでしょうか?
問題になるのは、もっと具体的でアクションにつながる目的が無いことでしょう。それはそうと、そのような目的がなくても、データ分析には意味はあります。つまり、目的無きデータ分析にも意味はあるのです。後で意味づけしたり、途中で意味づけするのも良いでしょう。どういうことかを、かみ砕いて説明します。目的無きデータ分析をしてしまった!と感じたときに参考にして頂ければと思います。
1. 僕が本屋でぶらぶらする理由
私は昔から、本屋でぶらぶらするのが大好きです。小学生のときから今に至るまで、ぶらぶらしていました。暇つぶしに、友達といっしょにぶらぶらしたり、一人でぶらぶらしたり。小学生のころは歴史とPCのコーナーでぶらつき、中学生のころは歴史とPCと参考書のコーナーでぶらつき、高校生のころは歴史とPCと参考書と数学のコーナーでぶらつき、とどんどんぶらつくジャンルが増えていきました。
長いときで、4、5時間はぶらぶらしています。よく本屋をぶらぶらしていると、思いがけない本に出合います。AmazonのECサイトで本をよく買いますが、本屋さんでもよく本を買います。場合によっては、本屋さんには悪いのですが、本屋で見つけた本をその場でAmazonのECサイトで購入することもあります。最初は暇つぶしで、本屋をぶらぶらしていましたが、今では思いがけない本に出合うためにぶらぶらしています。AmazonのECサイトで本を探しても、思いがけない本に出合いことは少ないからです。Amazonのレコメンドは素晴らしいのですが、思いがけない本をレコメンドしてくれることは少なく、レコメンドしてくれる本は関連書籍ばかりです。幅が広がりません。
新聞もそうです。似たようなことは、ニュース記事にも言えます。
新聞とWebのニュースサイト、何がどう違うかと言えば、思いがけないニュースに出会う確率が新聞の方が格段に高いのです。Webのニュースサイトの素晴らしところは、関連したニュースや、このニュースを読んだ人が興味のありそうなニュースをレコメンドしてくれるところです。目的もって情報を探すには非常に便利です。しかし、目的外のニュースに出会いにくくなるというデメリットがあります。
Webのニュースサイトのニュースは、似たようなニュースを色々読むには良いですが、興味外の思いがけないニュースに出会うことがあまりありません。新聞は、興味があろうがなかろうが、社会にとって重要そうなニュースが一面から順番に羅列されています。本屋で本のタイトルを眺めるように、ニュース記事の見出しを眺めます。そうすると、思いがけないニュースが目に飛び込んできたりします。情報の幅が広がります。このネット社会ではスマートではないけど、本屋さんや新聞には情報の幅を広げる助けになります。ネットは関連した情報を集めるのに向いていますが、幅が広がりにくいように感じます。
2. 目的無きデータ分析したら、意味づけしよう!
目的無きデータ分析は、何となく本屋さんでぶらぶらしたり、新聞を何気なく一面から眺めることに似ています。漠然とした目的(例:暇つぶしとか、世の中を知るとか)はあるが、より具体的なアクションにつながる目的はない。運が良ければ、すぐに具体的なアクションにつながるかもしれない。多くの場合は、そうではない。しかし、思いあげない本やニュース記事は、すぐに具体的なアクションに繋がらないけど、人としての幅や深みを増すのに有用な気がします。専門バカと言われないためにも。
要するに、目的無きデータ分析は情報の幅というか、今後の分析の深みを増すために有用なのだと思います。分析に求められる洞察力の基礎体力とでもいうのでしょうか、もし、目的無きデータ分析をしたしまったら、このように意味づけをしてみるとよいと思います。
3. 目的無きデータ分析のデメリットは認識しておこう
とは言え、目的無きデータ分析のデメリットは認識しておいたほうがよいでしょう。目的無きデータ分析の最大のデメリットは、具体的なアクションに繋がらないケースが多いということです。目的がないので、だらだら分析してしまいがちです。そうして、時間ばかりが過ぎていってしまいます。分析により具体的な目的があれば、遠回りせずに済みます。きちんと分析目的を定義し明確にしてから、データ分析するのが基本です。しかし、無駄のない分析は、多くの情報をそぎ落としてしまいがちです。時間の許す限り、気になった箇所は目的とずれても、念のた...
4. データ分析がどんどん楽しくなってくるとは
今回は、「目的無きデータ分析にも意味はある。ちょっと遠回りかもしれないが、良いこともあるかもしれない」という、巷で言われている「目的無きデータ分析は悪だ!」という論点の逆を論じてみました。先ほども述べましたが、基本は、きちんと分析目的を定義し明確にしてから、データ分析をすべきです。分析作業の無駄を排除し、遠回りを回避できるからです。
たまには遠回りも良いかもしれません。大事な何かを削ぎ落しているかもしれませんし、分析の幅を必要以上に狭めているかもしれません。例えば、Amazonのレコメンド通りに本を購入していたら、恐らく特定の分野の本しか読まなくなることでしょう。それと同じことがデータ分析でも起こっているかもしれません。
そして何よりも、「目的無きデータ分析をしてしまった!」と感じたとき、本屋をぶらぶらしたり新聞を眺めて思いがけない発見をするためだと、意味づけを変えても良いかもしれまん。そうすると、分析に目的があろうが無かろうが、何かしら得るものが必ずデータ分析からでてきます。そう考えると、データ分析がどんどん楽しくなってくるかもしれません。