前回は、顧客要望のヒアリングの整理について述べました。今回は、その続きである顧客要望の検証についてです。
1. 改善案を要因分析、使用意向の評価
(1) 調査設計
前回述べました生産財の顧客要望として、経済性、信頼性、快適性、意匠性、対応性、社会性の特徴があることをお話しました。そのため、顧客が製品の評価を行う場合もこれらの要因が考えられます。顧客要望の検証をします。複数の製品案から製品を評価するキーワードを列挙します。製品案の評価用語と、顧客が発言した用語が良いでしょう。例えば、次の通りです。
<評価用語>
・コストが安い、・寿命が長い、・壊れない、・精度が高い・安全、・安心、・使い勝手が良い
・形が良い、・サイズが良い・メンテナンスしやすい、・交換しやすい、・環境に良い
<総合評価>
・使いたい
上の例のように、製品案を要因分析の形式にして、使用意向とその評価をアンケート形式で5段階評価してもらいます。複数案ある場合は、この形式で繰り返します。オフィスチェアの事例にしてみると次のようです。
製品案
- 体圧分散できる座面
- 浅く座っても座りやすい座面
- 蒸れない素材など
評価用語
・清潔に使えそう、・疲れなさそう、・狭いオフィスでも使えそう
・座り心地がよさそう、・健康によさそう、・便利に使えそうなど
総合評価
- 使いたい
(2) 生産財の顧客アンケート実施例
- 使う対象者が多数存在する場合は、インターネット調査会社にて顧客アンケートは実施できます。
- 使用者と決定権者が異なる場合は、両方の対象に調査を実施します。
- 使用者と決定権者の要求を検証します。
オフィスチェアの事例の場合
- 内勤勤務者、デスクワーク2時間以上対象者
- 総務部など導入決定権者
2. 使用意向の評価点数と製品案
- 使いたいの評価点数が高い製品案を選考します。基準値は5段階評価ですと、平均値4点以上。
3. 相関分析や要因分析で、使用意向に影響する評価項目を決める
「使いたい」と相関がある評価用語を確認します。
基準値は相関係数において、絶対値0.6以上です。複数の製品案がある場合は、客観的ポジショニング分析で解析できます。
- 評価用語の因子分析を実施
- 新因子と「使いたい」との回帰分析
- 製品ごとの因子の平均値算定
- 製品案ごとの平均値と回帰分析の回帰係数においてポジショニングマップを作成します。
◆ オフィスチェア事例では、
- 健康維持の工夫
- 清潔さ
- 外観デザイン
- 省スペース
- 強度
- 座面の快適性 が有望であることが検証できました。
4. 要求品質が技術展開できるか確認、品質表作成
- 有望な製品案の要求品質を技術仕様の二元表を作成します。
- 製品案の期待品質、顧客の要望...
◆ オフィスチェアの事例では、
- 背ストレッチ:背もたれの材質、高さ、素材が◎
- 体圧分散できる座面:座面の材質、形状が◎
- 5本脚:脚の素材、形状が◎
顧客の要望が技術的に対応できるかを確認します。今回の事例では具体的な製品案にはなっていませんので、次回は顧客要望を実現する製品案の具体化と検証の方法を解説します。
【参考文献】
神田範明編著『顧客価値創造ハンドブック』日科技連出版社、2004年
神田範明編著『失敗しない商品企画教えます』、日科技連出版社、2019年