6.ポイント⑤ 生産財におけるグローバル・ブランド
ブランド戦略というと消費財メーカーの行う戦略という認識が一般的に生産財メーカーにはあるかもしれません。なぜなら、顧客企業は購買の意思決定を合理的判断に基づいて行っており、そこでは機能や価格などが重視され、ブランドイメージのような主観的な要素は関係ないはずだという認識があるからでしょう。
しかし、特に近年、生産財メーカーにおいてもブランド戦略が重要となってきています。顧客企業の購買担当者は、製品の内部まで詳細に理解できているわけではありません。特に近年の背景として、1つの製品を作りあげるために多種多様な部品・材料があり、それらの技術革新スピードも早く、ますます高度化していくという点があげられます。
顧客企業はサプライヤーの提供する生産財がどのようにして開発・製造されたのか、その中身の技術に関して知識を充実させている余裕がありません。むしろ何も知らないケースの方が多いかもしれません。その場合、サプライヤーの過去の実績に基づく認知度やイメージ、評判といったブランドが考慮されることになります。過去そして現時点で、どの程度そのサプライヤーが実績を挙げてきたのかを見ているのです。
なにか品質上のトラブルがあった時でも、きちんと逃げずに対応してくれるか、などは重要な判断材料です。ブランド力がある企業であれば、購入後のリスクを心配する必要が減り、購買の意思決定に関わる関係者を説得しやすくなります。
生産財におけるグローバル・ブランド戦略は、特に顧客が国・エリアをまたぐグローバル企業の場合に重要です。顧客がグローバルに展開している場合、顧客企業内ではグローバルレベルでコミュニケーションを取っており、人材も物理的に移動を繰り返しているため、生産財メーカーがグローバルに展開していたとしても、展開する国・エリアごとに異なるマーケティング活動を行い、顧客企業の拠点間において異なるブランドイメージが形成されると、国をまたいで活動している顧客内の担当者は矛盾を感じることになります。もちろん多少は国・エリアごとにカスタマイズされる部分があってもよいのですが、コアとなるブランドイメージに矛盾があると、顧客は不信感をいだき、購買を躊躇するリスクが発生します。長期雇用を前提とした日本と異なり、転職が頻繁にある海外であり、その上...