必要に迫られればアイデアが出る-紙と缶詰の場合

更新日

投稿日

1.漢王朝の記録を後世に残すために、すき具を使って紙を発明

 世界で初めての紙は、古代エジプトのパピルスであることはよく知られています。ナイル河畔に生えている植物の茎を薄く切って水につけ、植物繊維を密着させて張り合わせ、乾燥させて紙状にしたものです。PAPERの語源はPAPYRUSからきています。

紙の発明 紙をすき具を使ってつくることを考えたのは、中国の蔡倫【さいりん】という人です。彼は漢王朝の用度長官をしており、しかも宮廷工場の主任の立場にありました。

 当時、漢王朝はようやく統一を果たして広く政策を人民に知らしめる必要があり、また後世に記録を残す必要もありました。彼は宮仕えの身であり、やむをえず紙の開発に取り組んだのです。樹木の皮や麻、ぼろ布を石臼で細かく砕き、水に溶かして紙すきですき、薄い紙の層を集めるという、現代の製紙法と変わらない方法を見つけて、AD105年に紙をつくりあげました。 
  

2.軍の食料保存のために発明された缶詰

 19世紀初めのフランスといえば、ナポレオンの各地への遠征が相次いだ時代です。進軍に伴って必要な食料の確保が大きな問題となっていました。そこでフランス政府は、解決策を求めて実用的な食料保存法を大募集し、その懸賞金は1万2000フランにものぼったといいます。

 この懸賞に応募したのが、料理人にして発明家のニコラ・アペールでした。彼は、レストラン料理長の経験だけでなく、菓子やワインなどいろいろな食品加工業の経験もある人物です。当時はまだ細菌が知られていない時代だったのですが、加熱すれば腐敗しにくいということを、アペールは豊富な経験から直観的に理解していました。そこか...

1.漢王朝の記録を後世に残すために、すき具を使って紙を発明

 世界で初めての紙は、古代エジプトのパピルスであることはよく知られています。ナイル河畔に生えている植物の茎を薄く切って水につけ、植物繊維を密着させて張り合わせ、乾燥させて紙状にしたものです。PAPERの語源はPAPYRUSからきています。

紙の発明 紙をすき具を使ってつくることを考えたのは、中国の蔡倫【さいりん】という人です。彼は漢王朝の用度長官をしており、しかも宮廷工場の主任の立場にありました。

 当時、漢王朝はようやく統一を果たして広く政策を人民に知らしめる必要があり、また後世に記録を残す必要もありました。彼は宮仕えの身であり、やむをえず紙の開発に取り組んだのです。樹木の皮や麻、ぼろ布を石臼で細かく砕き、水に溶かして紙すきですき、薄い紙の層を集めるという、現代の製紙法と変わらない方法を見つけて、AD105年に紙をつくりあげました。 
  

2.軍の食料保存のために発明された缶詰

 19世紀初めのフランスといえば、ナポレオンの各地への遠征が相次いだ時代です。進軍に伴って必要な食料の確保が大きな問題となっていました。そこでフランス政府は、解決策を求めて実用的な食料保存法を大募集し、その懸賞金は1万2000フランにものぼったといいます。

 この懸賞に応募したのが、料理人にして発明家のニコラ・アペールでした。彼は、レストラン料理長の経験だけでなく、菓子やワインなどいろいろな食品加工業の経験もある人物です。当時はまだ細菌が知られていない時代だったのですが、加熱すれば腐敗しにくいということを、アペールは豊富な経験から直観的に理解していました。そこから、肉をびんに入れて密封し、熱湯につけるという方法を考え出したのです。これはびん詰めですが、缶詰の原型となりました。

 この発明で賞金をもらったアペールは、その後も研究を続けて、ついにはスズを使った缶詰を発明し、缶詰はまたたくまに世界に広がっていったのです。

  

出典:「ひらめきの法則」 髙橋誠著(日経ビジネス人文庫)

◆関連解説『アイデア発想法とは』

   続きを読むには・・・


この記事の著者

髙橋 誠

企業のイノベーション戦略の構築と実践をお手伝いし、社員の創造性開発を促進し、新商品の開発を支援します!

企業のイノベーション戦略の構築と実践をお手伝いし、社員の創造性開発を促進し、新商品の開発を支援します!


「アイデア発想法一般」の他のキーワード解説記事

もっと見る
情報収集の3原則とは

  1.情報収集の3原則は「規・即・集」  創造とは「課題を情報の結合により新しい解決をはかる事」と定義できます。我々は解決のために各種...

  1.情報収集の3原則は「規・即・集」  創造とは「課題を情報の結合により新しい解決をはかる事」と定義できます。我々は解決のために各種...


何を作ったら良いか分らない状態での新商品開発法とは(その1)

 何を作ったら良いか分らない状態の下で、新商品 ・ 新システムを考え出すための 新商品開発法    (S2D)を 連載で解説...

 何を作ったら良いか分らない状態の下で、新商品 ・ 新システムを考え出すための 新商品開発法    (S2D)を 連載で解説...


プロシューマー・アンケート法(3) 【快年童子の豆鉄砲】(その44)

  ◆プロシューマー・アンケート法(3) 2.創造的発想のベース(A)を手に入れるための「プロシューマー・アンケート(PA)」とは 【...

  ◆プロシューマー・アンケート法(3) 2.創造的発想のベース(A)を手に入れるための「プロシューマー・アンケート(PA)」とは 【...


「アイデア発想法一般」の活用事例

もっと見る
自然界をヒントにした発想事例2 -砂漠鉄道、ダイナマイト、複式紡績機-

1.荷物を振り分けて乗せるラクダを見て砂漠用の鉄道軌道を考案した、フランスの鉄道技師ラルティーニュ  フランス植民地時代のアルジェリアの鉄道技師ラルティ...

1.荷物を振り分けて乗せるラクダを見て砂漠用の鉄道軌道を考案した、フランスの鉄道技師ラルティーニュ  フランス植民地時代のアルジェリアの鉄道技師ラルティ...


屋内外で発見したことからの発想事例1 -蛍光紙、牛の解体-

1.暗い部屋の片隅で蛍光紙が発光しているのを見て、X線を発見した、ドイツの物理学者 ウィルヘルム・コンラッド・レントゲン    X線の発見は...

1.暗い部屋の片隅で蛍光紙が発光しているのを見て、X線を発見した、ドイツの物理学者 ウィルヘルム・コンラッド・レントゲン    X線の発見は...


-ベッセマー製鋼法、セルロイド- 失敗の繰り返しが発明を生んだ (その4)

【ひらめきの法則 連載目次】 失敗の繰り返しが発明を生んだ (その1) -活字印刷、合成ゴム 失敗の繰り返しが発明を生んだ (その2) -ナイ...

【ひらめきの法則 連載目次】 失敗の繰り返しが発明を生んだ (その1) -活字印刷、合成ゴム 失敗の繰り返しが発明を生んだ (その2) -ナイ...