前回のその65に続いて解説します。
【第4章】中国新規取引先選定のポイント
◆ 立派な作業指導書には要注意
今後有望と期待されていた中国企業を新規取引先候補の一つとして工場監査を行ったことがありました。その工場は原料ペレットの製造工程とそれを使う成形工程とに大きく分かれていました。原料ペレットの製造工程では、金属の原料粉を粉砕して所定の大きさにした後、樹脂と混合しますが、この工程が成形工程の品質に与える影響が大きく、とても重要になります。原料ペレット製造工程の現場で作業指導書の内容をチェックしたところ、申し分のない内容となっていました。引き続き工程の作業記録をチェックしたのですが、記録から作業が作業指導書通りに行われていないことが分かりました。
どうしてそのようなことになっているのかを調べていくと、意外なことが判明しました。なんと作業指導書に記載されている通りに作業することが実質的に出来ないことが分かったのです。
この会社は、まだ設立数年という立ち上げ期にあるが故に、何人かのキーパーソンを技術や品管など専門ごとに置き、すべてを任す体制で運営管理していました。生産を含む技術部門も一人のキーマンが、すべてを見ていました。そのキーマンが理想の作業を実際にできるかどうかを確認せずに記載していたということだったのです。
このようなこともあるので、作業指導書の内容に問題がない場合でも記録で実施状況を確認することを怠ってはいけないということです。
◆ 検査が機能していること
(1)検査で確実に不良品を検出できること
製造業においては「不良品ゼロ」を目標にしますが、残念ながら現実には不可能です。発生させてしまった不良品を検査で確実に検出し、後工程や顧客に渡さないことが検査の重要な役割です。実施している検査で不良品を確実に捕まえることができているかどうかをチェックします。
(2)計測機器の校正管理
計測機器の校正管理は、IS09001の要求事項になっているのでISOを取得している企業であれば、行われているはずです。仮にISOを取得していない中国企業で...
次回は、工場の雰囲気。から解説を続けます。
【出典】根本隆吉 著 「中国工場の品質改善」 日刊工業新聞社発行、筆者のご承諾により抜粋を連載