今回は「多様な思考パターンを実現」するための方策としての「課題を持つ環境に自らを置く」ための1つ「Gain:自分の望むものを得る環境に身を置く」の方法として、外発的動機付けと内発的動機付けについて解説します。
1、外発的動機付けと内発的動機付け
動機付けに関し、心理学の研究において外的なものすなわち外発的動機付けと、内的な内発的動機付けの2つがあることが指摘されています。
外発的動機付けは「学習するためには、これは人間も他の動物もですが何か物質的な賞罰とか、賞賛・叱責が不可欠と考えます」(「学ぶ意欲の心理学」市川伸一著)と説明されています。一方で、内発的動機付けとは「外から報酬のための手段としてではなく、ある活動をすること自体を自己目的的に求める欲求」(同書)と定義されています。
2、「自分自身の高い目標を持つ」は、どちらの動機付けなのか
前回「Gain:自分の望むものを得る環境に身を置く」の一つ目として「自分自身の高い目標を持つ」を議論しましたが、これはどちらの動機付けに該当するのでしょうか?
自ら主体的に目標を設定するので、一見内発的な動機付けに思われるかもしれませんが、高い目標を達成する目的は、その活動自体を自己目的的に求める活動ではなく、いずれにしても金銭的な報酬や他人からの賞賛、自尊、他人とのつながりといった非金銭的な報酬を目的としているので、外発的動機付けを求めて行うための活動と考えられます。
外発的動機付けと内発的な動機付けの区分は、主体的な活動かどうかではなく、その活動自体を求めるかどうかで判断されるべきものです。
3、内発的動機付け:好奇心
それでは、内発的動機付けとは具体的にどのような活動なのでしょうか?
先日NHK・BSの番組を見ていて、自閉症の子供が鉄道に興味を持ち、鉄道の詳細な絵を描くようになり、大人になってもその絵を描き続けたという(その人はその後亡くなってしまうのですが)番組が放送されました。この人が子供のころ鉄道に関心を持ったのは鉄道そのものであり、それは内発的な好奇心です。
何かGain(非金銭的なものを含め報酬)を求めて鉄道に関心を持ったわけではありません。まさに内発的動機付けは、好奇心ということになります。人間は目的はないが、関心があるというもの、すなわち好奇心が湧く対象というものを持っているものです。
4、どうしたら好奇心を持つようなるのか?
外発的動機...
付けを与えることは簡単ではありませんが、その方法は明確です。
そもそも会社は給与、地位、評価、賞賛などの外発的動機付けで運用されているのでそれを明確にし、拡大し、矛盾がないように運用すればよいのです。一方で内的動機付けである好奇心は、どうやったら社員が持てるようになるのでしょうか?
好奇心を創出するメカニズムについては、ここではなく、KETICモデルの最後のC:Curiocityで別途解説をしたいと思いますが、心理学の研究でも認識されている方法に、外発的動機付けから内発的動機付けを誘引する方法があります。
次回に続きます。