静電気事故防止対策 ~ 人体除電の基礎

♦ 過信禁物!~ 基礎から学ぶ人体除電

   人体除電の基礎は靴と床です。つまり、

 この2つが条件です。
 この2つがそろっていないと作業場で静電気の電撃を感じたり、静電気による着火事故につながったりするケースがあります。
 化学工場の事故の大半は静電気着火によるものです。
 各社静電気事故防止細則を定め、対策を行っているのにもかかわらず毎年同様の事故が発生しています。これはどういうことでしょうか。
 私は人体除電ができていなかったためではないかと考えています。各社静電気事故防止細則に人体除電について明文化されていたでしょうか。
 ここでは人体除電の基礎について解説します。
 人体除電の条件を阻害するものは何でしょうか。

  1. 床が不導体でした
  2. 人が不導体の上で作業していました
  3. 靴が不導体でした

 このようなところです。

図1. 人体除電の条件を阻害するもの

1. 床が不導体だった

 現在化学工場では異物混入防止などのために見た目のきれいな、清掃がしやすい塗り床にされていますが果たして、その床は導電性のある(静電気を逃がす)床でしょうか?
 床の抵抗は漏洩抵抗計で測定することができます。

【写真】 化学工場の床の漏洩抵抗を測る筆者

  床の漏洩抵抗は108Ω以下とすることになっております(静電気安全指針2007)。
 もしもこの値が108Ωよりも大きい値のときは導電性の除電マットを使用すると良いでしょう。
 ただし除電マットにもアースが必要です。
 導電性マットの使用で107Ωオーダーが実現できます(安心です)。

【写真】除電マットの効果測定

2. 人が不導体の上で作業していた

 化学工場では様々な化学物質を扱います。例えば色素材料、腐食性物質。
 せっかく見た目のきれいな床にしても、その床に色素材料や腐食性物質をこぼしてしまったらきれいな床が台なしです。化学工場ではそれを嫌がり床に養生をしますが果たして、その養生シートは導電性のある(静電気を逃がす)材料でしょうか?
 ビニールなど不導体のシートを敷いてしまうと人体が浮遊導体(アースされていない導体)となってしまいます。

【写真】不導体のシートで養生してしまった時の効果測定

  静電気事故の原因は、浮遊導体となった人体から放電するというケースがとても多いのです。
 ビニールシートの使用で1012Ωオーダーになってしまいます(とても危険)。
 このような場合、ビニールシートではなく紙で養生しましょう。紙は導電性がありますので静電気を逃がしてくれます。
 2枚重ねでも107Ωオーダーです。(安心です)

【写真】2枚の紙で養生し...

た時の効果測定

  2枚では心もとない場合は何枚か重ねても問題ありません(限度にもよりますが)。
 新聞1日分でも108Ωオーダー前半でした。

【写真】1日分の新聞紙を敷いたときの効果測定

3. 靴が不導体だった

  静電気帯電防止の作業靴(JIS T8103)を履いて作業して下さい。静電気帯電防止の作業靴のソールの抵抗は感電防止も考慮して105~108Ωで設計されています。面倒くさいからといってサンダルやスニーカーではNGです。来客用履き物や長靴も注意しましょう。

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