前回のその76に続いて解説します。
【第5章】中国企業改善指導のポイント
2、どこまで要求し、どこまで指導するのか
取引先の指導はいい品物を入れてもらうため、踏み込んで入り込むことが必要だとは思いますが、どこまで踏み込むべきか悩ましいテーマといえます。
(1) 中国企業の対応能力を見極める
読者であるあなたが中国企業の工場監査をすれば、きっと50や100個の問題点を見つけることでしょう。その時にあなたは、その問題点すべてについて期限を切って改善するよう要求しますか?
この時に考えるべきことは、先方の対応能力がどれくらいあるかということです。 100項目要求しても対応する能力があると思えば、すべての改善を要求して問題ありません。しかし、能力的に難しいと判断したら何回かに分けて段階的に改善対応させるようにすべきです。その時に、優先順位は依頼する側が付けて構いません。
筆者が中国に駐在していた時、部下の中国人がある取引先中国企業の工場監査で60項目に及ぶ指摘。そしてそれを全部改善しろと言ってきたことがありました。部下の考えは、取引先の現状のレベルはこちらが求める水準に達していないので、何とかレベルを上げたいということで、その為に見つけた問題点すべての改善対応を求めたのでした。その中国企業の規模や能力からみて、全部をいっぺんに対応できるとは思えませんでしたので、段階的に進めるように話しました。ところが部下は自分が改善実施のフォローを確実にするので、全項目の改善を進めさせて欲しいと言ってきたので、試しにやらせてみることにしました。
結論からいうと、60項目の改善対応は何とか完了しました。この点は評価できます。しかし完了するまでに1年半以上かかりました。段階的に対応させた場合でも、全項目が完了するまでにかかった時間は、同じかもしれません。大事なことは、段階的に対応させる場合、対応する項目の優先順位をこちら側で決め、重要な項目から改善できることです。また、優先した項目の改善を確実に進めることができます。全項目対応をした場合、先方がやり易いものから対応することが考えられますし、たくさんの項目を並行して進めた場合、どの項目も中途半端になることも懸念されます。そうならないように、どのように要求するか対応方法を考えることが必要です。
(2) 改善の範囲を限定する
問題点を見つけた時に、その改善策を全社展開させているケースもあります。日系企業の日本人には、このような傾向があると感じています。もちろん間違ってはいません。しかし全社展開させた場合の先方の作業量は、どうでしょうか。膨大な作業量になるとすれば、その実施に尻込みをして結局何も...
この章の冒頭にも書いたように、取引先の改善は相手が動いてくれて、対応してくれて初めて出来るのですから、対応しやすいようにすることを考えてもよいと思います。
次回は、(3) 業種によって異なる。から解説を続けます。
【出典】根本隆吉 著 「中国工場の品質改善」 日刊工業新聞社発行、筆者のご承諾により抜粋を連載