1.コンフィギュレーション・マネジメントとは
コンフィギュレーション・マネジメントは一般に「構成管理」といわれていることが多いですが、他に「形態管理」、「変更管理」といわれることもあります。これは適当な日本語訳があてはまらないからで、そのままカタカナ書きで使われることも多くみられます。ある事柄をきちんと管理しようとするとき、管理するための枠組み、何をどうすればその事柄を管理できるか、管理するためにはまず何をすれば良いのかを決めることから始まります。プロジェクトであるなら、その目的、内容、進め方、成果物、およびこれらを含めた全体像、制約などの条件が明確である必要がありますが、そのためには、何があれば、何をすれば、どういう状態になっていれば管理されている、管理しているといえるのかから始まります。それが分かれば、あるいは決まれば、それを実現し、周知し、次はそれらがその通りになっているか、状態が保たれているか、また、当初計画したとき(考えたとき)とプロジェクトを取り巻く環境その他全般に変わりはなく、目指す管理状態に変化はないかを常に注視していくことが重要となります。それらに差異、異常、変化が認められた時に何かを変えるのか、変えないのか、追加するのか、止めるのか、維持するのかを意思決定し、それをプロジェクト活動全体に周知・浸透させ実行し、その理由を含めてどう変更したかをしっかり残し、あとから検証や追跡ができるようにする、そしてその状態を維持していくことが必要になってきます。
コンフィギュレーション・マネジメントとは広く捉えればこういう活動全体をいっているのであって、ある側面に着目すれば「変更」の管理であり、また別の側面からは「物の構成」の管理、また「仕組みや体系といったある種の形態」の管理であるといえるのです。この「管理」には、その管理対象を最新の状態に維持することだけでなく、意図して変えていく(変更・更新・代替等)そのプロセス及び履歴が追跡可能であることも含まれます。つまり、構成管理の「構成」と言っているのは、色々なことを含んだ、色々な側面からみたその関係、枠組み、つながり、仕組、位置づけ、内訳、組み上がり、すべてを言っていると解釈すると、少しは理解が進むと思います。
2.プロジェクトマネジメントの中での位置付け
プロジェクトマネジメントの体系の中では、コンフィギュレーション・マネジメントはプロジェクト全般にかかわり、計画から終結までを対象としているので、PMBOKガイド第6版では統合マネジメントの中に位置づけられています。ただ、のちほど述べる通り、ものづくりの世界では、実はプロジェクト終結後の保守・整備の場面でこそが、このマネジメントがものをいうところとなります。
この統合マネジメントは「プロジェクトをマネジメントしていくための各種プロセスとプロジェクトマネジメント活動の、特定、定義、結合、統一、調整などを行うために必要なプロセス、および活動」と定義されており、プロジェクト・マネジャーに固有の領域であって、プロジェクト・マネジャー自身が担当していくところです。PMBOKでいう他の9つの知識エリアを取りまとめるという意味で、プロジェクトマネジメントにおける中核の役割を果たしています。ここでは7つのプロセスが定義されており、プロジェクトやフェーズの進め方、管理や終結の方法について定義している知識エリアともいわれています。
これらのプロセスは、まずはプロジェクトの立上げから始まりますが、次にプロジェクトの全体計画を作ることになります。プロジェクトの目標を設定し、それを達成するための方法、枠組み、ルール、基準などを決めます。プロジェクトマネジメントの計画をここで明確にしていきますが、この過程でコンフィギュレーション・マネジメントについての計画も立てることになります。一般的にはプロジェクトマネジメント計画書の中で、コンフィギュレーション・マネジメントについての計画も作りますが、プロジェクトの規模、内容によっては、補助計画書としてコンフィギュレーション・マネジメント計画書を、また変更管理に特化して変更マネジメント計画書を個別につくることもあります。
実際のマネジメント活動としては、統合変更管理プロセスの中の活動として位置づけられ、このプロセスに必要な専門知識やスキル(ツールと技法)の一つとしてコンフィギュレーション・マネジメントが挙げられています。そこでは「システムの機能と性能および信頼性などを保持するために、システムを構成する仕様書や設計書などのドキュメント、開発ツール、ハードウェア、ソフトウェアを管理すること」と定義されており、「変更管理のシステムを包含し、変更提案の提出、変更提案のレビュー承認を行う追跡システム、変更を認可...