【見える化 連載目次】
- 1. 情報の取り扱いで競争力をつける
- 2. 見えないことの方が大切なことがある
- 3. 職場の全員がコスト意識を持つには
- 4. 問題を顕在化してトップが改善の現場に参加
- 5. 管理板から活動管理板へ
- 6. 納期遵守率を向上させるには
- 7. 生産計画変更と現場
- 8. 生産現場の生産管理板
- 9. 変化の状況を客観的に見る
◆ 問題が認識できるから改善ができる
1. PDCAがPDで止まってしまうのは何故か
ほとんどの企業でQCサークル活動が展開されていますが、この活動でまず、魚の骨の特性要因図を習い、さらにQC7つ道具、そして管理のマネジメントサイクルと続きます。多くの人が、この管理のマネジメントサイクルをご存知のはずです。具体的には、PDCA(Plan-Do-Check-Action:計画する、やる、確認する、改善する)です。でも実際にこのサイクルを確実に回している人はどれくらいいるのでしょうか。
このマネジメント管理サイクルが確実に回っていれば、ほとんどの問題は解決しているはずです。また後戻しの作業もなくなり、職場の雰囲気も良くなり快適に仕事ができているはずです。あなたの職場ではいかがでしょうか。
経営者やマネジャーがこのサイクルを上手く回していると思っていても、実際には回っていないことが多いようです。ある大企業で伺った話ですが、マネジャーの9割以上は、Plan-Doだけで止まってしまっていると現状を訴えられていました。では何故(なぜ)このサイクルがPlan-Doで止まってしまうのでしょうか?要因の一つとして、現実をよく把握していないまま計画を立ててしまうことが考えられます。
つまり、机上にしがみついて計画を考えただけでは、現状と掛け離れたものになってしまいます。机上でやろうとしても予知していなかった問題が噴出してきます。慌てて現場に行って火消しを行うと、別な問題がまた噴出して現場がますます混乱してきます。その後始末に追われてしまい、次のCheck(確認する)までに到達できなくなってきます。
失敗する事例のほとんどが、この現実を良く把握し認識できていなかったことによるものでしょう。ちょっと勇気を持って現場に第一歩を踏み出せないのでしょう。そのために、Plan-Do → Plan-Doのみを繰り返してしまい、結局何もできなくて言い訳を考える羽目になってしまいます。Check(確認する)に到達するには、現場に足を運び事実を自分の肌で感じ取ることです。
2. 問題を見えるようにして、共通認識を向上させる
現状や事実をはっきり認識できないままに突き進むのは、目を閉じて走り出すのと同じ行為で、とても無謀なものです。よく「見える化」するとありますが、現場で発生している現象が見えるようになって異常かどうかがはっきり分かるようにすることです。正常ならば特に対策を打つこともありませんが、異常であればすぐに手を打ち正常に戻します。このフィードバックする時間が短ければ短いほど、損失は少なくすることができます。
PDCAを回すためには、まず問題が誰にでも明確に分かることが必要です。問題が分からないまま計画を立ててしまうと、違った方向に進みやすいものです。このPDCAの前に、問題を見えるようにすることが大切です。そのヒントとして、PはPlanではなく「Problem(問題)」。DをDoではなく「Display(「見える化」する)」として考えてみましょう。問題を顕在化して見えるようにしてから問題を解決するためのPlan(計画)をつくっていきます。Problem → Display → PDCA → PDCA・・・というイメージです。
そして問題を見えるようにすると、関係者の問題認識レベルが俄然(がぜん)違ってきます。今までバラツキのあった認識レベルは、問題の見える化で全員が問題を共有化できてバラツキが少なくなり、さらに一気にレベルアップしてきます。この共通認識レベルがアップすることで多くの気付きが生まれます。そして全員がその気になって、そしてやる気につながっていき、実際に行動する原動力になります。これは、まるで凸レンズで一点に光を集中させていくようなものです。
3. トップも参加して一緒に改善に取り組む
「management」の語源を調べたことがあります。最初はラテン語だと思って「man」は「手」、「agement」が「動かす」であることから「手を動かすこと」だと思っていました。つまり、机のパソコンに向かってキー操作しているのがマネジャーの仕事だと解釈して皮肉っていました。でもこれはもしかして他の言語にないかと調べ直しました。なんと、イタリア語にありました!「manage」は、馬に乗って手綱捌きをすることであり、マネジメントの語源の良い解釈だと改めて考えるようになりました。実際に馬に乗って状況判断を随時行い、手綱をさばくのです。つまり刻一刻変わっていく現状が良く分かるから、馬に乗っているマネジャーや上司が部下に的確な指示を出せるのです。では、改善を確実にやるにはどうすればよいでしょうか。最近試みている方法で、非常に効果のあった事例を紹介します。
現状把握をして問題点をまとめる時に、全員がノートにそれらを全て書き写すのです。同じ問題の場合にはチェック印で消し込みしますが、自分が気付いていない問題は全て書いていきます。手は第二の脳といわれていますので、少々面倒くさいですがそれが大切な作業になります。
ホワイトボードやカードに書いて貼り付けたものを見るだけで、脳にしっかり認識させることはかなり難しいものです。しかし聞い...
そしてもっと重要なことは、トップ自らが問題点の把握、改善案の立案、改善実施の現場に一緒に参加することです。これは非常にインパクトがあり、効果もすぐに出ます。改善がトップの感心ごとであるのは、トップがその場に参加していることで証明されます。トップがその場に存在するだけでも非常に意味があるのです。しかしトップは参加メンバーに余分な口出しや指示は禁物です。あくまでも主体は現場の人たちです。見守っているだけでもトップの気持ちは皆に確実に伝わります。
次回に続きます。
【出典】株式会社 SMC HPより、筆者のご承諾により編集して掲載