連載その16で『クリーン化4原則+監視の重要性』について述べました。ここでは、下図のクリーン化4原則について個別に解説しております。今回は、クリーン化4原則-10「堆積(たいせき)させない」について前回に続き解説します。
図1. クリーン化4原則
写真.不具合事例:ゴミの付着しにくい気流形状づくり
◆ クリーン化:ゴミの付着しにくい気流形状づくり
乱流式のクリーンルーム内には、パッケージエアコンが設置されているところも多いようです。これは、室内の清浄度を補うとか、湿度管理などの目的があります。上の写真で説明します。
正面はパッケージエアコンです。写真には写っていませんが、上部に吹き出し口があり、清浄度の高い空気が吹き出します。下部の黒く映っている部分から汚れた空気を回収します。この内部には、フィルターが、1個、または2個入っています。回収された汚れた空気は、このフィルターでろ過され、きれいな空気になって、再び上部から吹き出しています。
この現場写真で問題なのは、パッケージエアコンの前に製品置き場があることです。
パッケージエアコンの吸い込み口に向かって汚れた空気が流れてきます。吸い込み口付近のエリアは特に汚れています。発塵(じん)をパーティクルカウンターで診断してみると良くわかります。その空気がパッケージエアコンの前に設置された製品置き場の隙(すき)間を通り、吸い込まれていきます。
この写真の製品置き場は、ビニールで囲われています。また、骨組みはプラスチック製のパイプです。これらの隙間を空気がすり抜ける時、ビニールやパイプと擦れ静電気が起きます。その隙間をすり抜ける風で運ばれてきたゴミが、ビニールやパイプに異物として付着します。
このゴミをワイパーで拭き取ろうとしても、静電気があるためゴミが移動するだけで、きれいに拭き取ることはできません。ましてや製品がもし裸だったとしたら、製品にも直接付着することになります。せっかく気を使って、丁寧に製造してきたものが、最後の保管場所で汚れてしまいます。製品だけでなく、部品や原材料も同じ考えで保護が必要です。
なぜパッケージエアコンの前はスペースを確保してあるのかを理解していないと、このスペースは無駄だとか、もったいないと考え、このようになってしまいます。天井から部分的に清浄度の高い風が吹き出し(垂直)、パッケージエアコンの上部から水平に清浄度の高い風(横風)が吹き出すので、室内全体の気流が乱れます。このようなクリーンルームの場合は、気流をスケッチして、気流の上流に製品加工、保管エリアを持ってくるようにすべきです。
◆ クリーン化NG事例:パッケージエアコンの前のスペースが管理者の机
パッケージエアコンの前のスペースに職場の管理者の机があれば、朝礼の時に作業者が集まります。そこで書類などを用い朝会が始まるのです。また、日常的に作業者が報連相のため上司のところに行きます。基準、標準類などのファイルも、上司の近くに設置されていて確認の場合はそこに行くのです。
この繰り返しで、ゴミが発生します。それが気流の下流に設置された作業ラインに流れ、製品を汚していたという事例です。
◆ クリーン化:クリーンルームの気流と湿度問題とは
『クリーンルームの中での最大の発生源、汚染源は人である』ことを思い出しましょう。そしてレイアウト設計をする場合は、気流も考慮しましょう。なお、パッケージエアコンの中のフィルターも汚れや劣化が進むので、定期的な清浄度測定、フィルターのクリーニングが必要です。
きれいな空気が吹き出しているはずなのに、汚していたという場合もあります。クリーンルームで最もお金がかかるのが電気代です。24時間ずっとパッケージエアコンを動かし続け、汚れた空気を途切れなくクリーンルーム内に供給していたのでは、何のためのクリーンルームなのか分からなくなってしまいます。
気流...
パッケージエアコンから水分がミストとなって吹き出すことがあります。その量が多くなると部屋全体にミストが浮遊し、設備などが錆(さ)びる問題も起きます。浮遊するミストの粒径は極端に小さいので、パーティクルカウンターでの定期測定でも、把握できないものもあります。
水のミスト、オイルミスト、薬品のミストなどが発生する可能性のあるところでは、通常の定期測定の粒径が0.5μmであっても、それに加え0.5μmよりも小さな粒径で確認してみましょう。ミストが浮遊していれば0.1μm、0.3μmの粒径で測定すると良く分かります。
次回に続きます。