油圧ポンプとは?種類と特徴、仕組みを分かりやすく解説

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油圧ポンプとは?種類と特徴、仕組みを分かりやすく解説

【目次】

    エレベータ、自動車のブレーキなど、さまざまな装置、機械で利用されている油圧は、加圧した油を介して動力の伝達を行う技術です。小さな力を大きな力に変えることができます。今回は、油圧ポンプの種類と特徴を解説します。

     

    1. 油圧とは

    油圧ポンプの油圧は「密閉された液体の一部に加わった圧力は全体に等しく伝わる」:パスカルの原理を利用して力を変換し、工作機械を始めとして多くの機器に使用されています。油の特性を利用することで、粘性があるため漏れが少ない、沸騰しない、潤滑性があるなどの機能上のメリットがあります。

     

    2. 油圧ポンプとは

    油圧ポンプ:油圧シリンダとは、シリンダ中のピストンを油圧で動かしピストンに固定された棒の押出・引込運動で仕事をさせる装置の事です。アクチュエータとして油圧ジャッキ、建設機械など産業用機器に広く利用されています。

     

    (1)油圧シリンダの特徴

    油圧シリンダの特徴です。

    • 作動油自体に防錆・潤滑効果があり機器内部の摩耗が少ない。
    • 出力や速度の調整が容易で遠隔操作可能である。
    • 比較的小型の油圧ポンプで、大きな力を出すことができる。
    • 過負荷で止まった時に、動力系に悪影響を与えない。

     

    (2)空圧・電動・油圧との比較

    ・空圧

    空圧シリンダなどのアクチュエータがあり、製造現場等で使用されています。長所は、          高速運転が可能です。短所は、制御性にやや難があり、中間停止が難しい。油圧に比べ大きな力が出ない。

     

    ・電動

    自動機器の駆動源として利用されます。モーターに機構部品を組み合わせた製品です。    長所は、低速でも速度が安定してスムーズな過減速運転が可能です。多点の停止運転が可能。短所は、油圧に比べてユニット構成が大型・重量化する傾向があります。制御機器が別途必要で、高額です。

     

    ・油圧

    駆動原理がシンプルで、小型でも大きな力が出せます。産業機器・プレス機・建機等あらゆる場面で使用されます。長所は、小型で大きな力が出せる。安定して制御ができる。    短所は、継手などから油漏れトラブルのリスクがあります。

     

    (3)油圧機器ユニットの基本構成

    油圧機器ユニットは、油圧アクチュエータ・油圧ポンプ・オイルタンク・接続部品・アタッチメントの構成要素から成り立っています。油圧システムは、油圧ポンプ・油圧バルブ・油圧アクチュエータの構成です。

    原動機から得られる機械的動力を、油圧ポンプで油圧動力に変換します。油圧ポンプから出た油は、用途に応じてさまざまな油圧バルブを通過します。通過時に、電動油圧の場合は電気信号により、電動ポンプからの圧力・流量・流れの方向を制御・調整します。作動油が油圧アクチュエータに送り込まれると、油圧は機械的動力に再変換されます。この機械的動力が、必要な仕事を行います。

     

    3. 油圧ポンプの種類

    油圧ポンプは容積ポンプの作動の仕方から回転式、往復式の2種類に分類されます。また、吐出量を変化させることの出来る可変容量形と変化しない定吐出量形があります。代表的なポンプの種類です。

     

    ピストンポンプ:ピストンポンプには大きく分けて アキシアルピストンポンプ ・ ラジアルピストンポンプ ・ レシプロピストンポンプがあります。シリンダブロックの軸に平行なシリンダボア内にピストンが挿入されており傾斜したプレートの面の上を ピストン端が摺動する事によって往復運動で油を吐出します。高圧時の漏れが少ない為高圧時によく使用されます。

     

    ギア(歯車)ポンプ:歯車が回転することによってケーシングとのすきまが変化し油に圧力をかけて送り出します。内歯車と外歯車を組み合わせた内接形ギアポンプというタイプと2種類あります。構造が単純な為比較的ゴミ等に強く安価です。

     

    ベーンポンプ:円形のケーシング内に羽根を取り付けた回転子が偏心させて取り付けられており回転時に羽根がケーシングに押し付けられて油を閉じ込め偏心によってその容積が変化し圧油を吐出します。

     

    油圧ポンプについての情報を表にまとめました。以下をご覧ください。

    油圧ポンプとは?種類と特徴、仕組みを分かりやすく解説

     

    4. 油圧ポンプの動力計算方法

    油圧ポンプの動力は、ポンプが流体を移動させるために必要なエネルギーを示します。一般的に、油圧ポンプの動力は流量と圧力の関係から計算されます。以下に、油圧ポンプの動力計算に使われる主な式を示します。

    (1) 基本的な動力計算式

    動力(P)[kW]=流量(Qw)[ℓ/min]×揚程(H)[m]÷6120×効率(η)が計算式です。

    この式は、流量と圧力差を使ってポンプの動力を計算します。

    (2)効率を考慮した動力計算式

    電力Piを使って、ポンプがM の60 % の仕事PPをしたとすれば、残りはポンプの損失となり、その損失はM の30% (=100-10-60) になります。 このときのポンプ効率ηPは、ηP = PP/Pi x 100 (%) になります。この式では、ポンプの効率を考慮しています。効率が高いほど、必要な動力は少なくなります。

    (3)馬力(HP)への変換

    油圧ポンプの動力は、上記の(1)で計算されます。油圧ポンプの流量と圧力差を知っていれば、まずは出力をkWで計算し、その後に馬力に変換することができます。

     

    5. 油圧ポンプの選び方のポイント

    1. コスト・・・初期投資だけでなく、ランニングコストやメンテナンス費用も含めて総合的に判断することが大切です。
    2. 使用目的・・・例えば、建設機械や産業機械など、用途によって必要な圧力や流量が異なります。次に、必要な圧力と流量を計算しましょう。ポンプの性能は、これらの数値によって決まりますので、機械の仕様に合ったものを選ぶことが大切です。
    3. ポンプの種類・・・一般的には、ギアポンプ、ピストンポンプ、ロータリーポンプなどがありますが、それぞれ特性が異なるため、用途に応じて選択します。さらに、耐久性やメンテナンスのしやすさも重要な要素です。長期間使用する場合は、信頼性の高いメーカーの製品を選ぶと良いでしょう。 

     

    6. 油圧ポンプの省エネ化の検討

    油圧装置には必ず損失が有り、熱や音、振動などとなって表れます。次の様な場合、仕様より省エネ化につながる可能性があります。

    • 大きなオイルクーラを使うことで油温を調整している場合。
    • タンクの油面変動の量に対して タンクが大きい場合。
    • 大きな騒音が発生している場合
    • 油温が高い(現在の室温に対して20℃以上高い場合)

    油圧ユニットでの損失は、回転数に比例する損失・電動機での損失・ポンプでの損失に分類されます...

    油圧ポンプとは?種類と特徴、仕組みを分かりやすく解説

    【目次】

      エレベータ、自動車のブレーキなど、さまざまな装置、機械で利用されている油圧は、加圧した油を介して動力の伝達を行う技術です。小さな力を大きな力に変えることができます。今回は、油圧ポンプの種類と特徴を解説します。

       

      1. 油圧とは

      油圧ポンプの油圧は「密閉された液体の一部に加わった圧力は全体に等しく伝わる」:パスカルの原理を利用して力を変換し、工作機械を始めとして多くの機器に使用されています。油の特性を利用することで、粘性があるため漏れが少ない、沸騰しない、潤滑性があるなどの機能上のメリットがあります。

       

      2. 油圧ポンプとは

      油圧ポンプ:油圧シリンダとは、シリンダ中のピストンを油圧で動かしピストンに固定された棒の押出・引込運動で仕事をさせる装置の事です。アクチュエータとして油圧ジャッキ、建設機械など産業用機器に広く利用されています。

       

      (1)油圧シリンダの特徴

      油圧シリンダの特徴です。

      • 作動油自体に防錆・潤滑効果があり機器内部の摩耗が少ない。
      • 出力や速度の調整が容易で遠隔操作可能である。
      • 比較的小型の油圧ポンプで、大きな力を出すことができる。
      • 過負荷で止まった時に、動力系に悪影響を与えない。

       

      (2)空圧・電動・油圧との比較

      ・空圧

      空圧シリンダなどのアクチュエータがあり、製造現場等で使用されています。長所は、          高速運転が可能です。短所は、制御性にやや難があり、中間停止が難しい。油圧に比べ大きな力が出ない。

       

      ・電動

      自動機器の駆動源として利用されます。モーターに機構部品を組み合わせた製品です。    長所は、低速でも速度が安定してスムーズな過減速運転が可能です。多点の停止運転が可能。短所は、油圧に比べてユニット構成が大型・重量化する傾向があります。制御機器が別途必要で、高額です。

       

      ・油圧

      駆動原理がシンプルで、小型でも大きな力が出せます。産業機器・プレス機・建機等あらゆる場面で使用されます。長所は、小型で大きな力が出せる。安定して制御ができる。    短所は、継手などから油漏れトラブルのリスクがあります。

       

      (3)油圧機器ユニットの基本構成

      油圧機器ユニットは、油圧アクチュエータ・油圧ポンプ・オイルタンク・接続部品・アタッチメントの構成要素から成り立っています。油圧システムは、油圧ポンプ・油圧バルブ・油圧アクチュエータの構成です。

      原動機から得られる機械的動力を、油圧ポンプで油圧動力に変換します。油圧ポンプから出た油は、用途に応じてさまざまな油圧バルブを通過します。通過時に、電動油圧の場合は電気信号により、電動ポンプからの圧力・流量・流れの方向を制御・調整します。作動油が油圧アクチュエータに送り込まれると、油圧は機械的動力に再変換されます。この機械的動力が、必要な仕事を行います。

       

      3. 油圧ポンプの種類

      油圧ポンプは容積ポンプの作動の仕方から回転式、往復式の2種類に分類されます。また、吐出量を変化させることの出来る可変容量形と変化しない定吐出量形があります。代表的なポンプの種類です。

       

      ピストンポンプ:ピストンポンプには大きく分けて アキシアルピストンポンプ ・ ラジアルピストンポンプ ・ レシプロピストンポンプがあります。シリンダブロックの軸に平行なシリンダボア内にピストンが挿入されており傾斜したプレートの面の上を ピストン端が摺動する事によって往復運動で油を吐出します。高圧時の漏れが少ない為高圧時によく使用されます。

       

      ギア(歯車)ポンプ:歯車が回転することによってケーシングとのすきまが変化し油に圧力をかけて送り出します。内歯車と外歯車を組み合わせた内接形ギアポンプというタイプと2種類あります。構造が単純な為比較的ゴミ等に強く安価です。

       

      ベーンポンプ:円形のケーシング内に羽根を取り付けた回転子が偏心させて取り付けられており回転時に羽根がケーシングに押し付けられて油を閉じ込め偏心によってその容積が変化し圧油を吐出します。

       

      油圧ポンプについての情報を表にまとめました。以下をご覧ください。

      油圧ポンプとは?種類と特徴、仕組みを分かりやすく解説

       

      4. 油圧ポンプの動力計算方法

      油圧ポンプの動力は、ポンプが流体を移動させるために必要なエネルギーを示します。一般的に、油圧ポンプの動力は流量と圧力の関係から計算されます。以下に、油圧ポンプの動力計算に使われる主な式を示します。

      (1) 基本的な動力計算式

      動力(P)[kW]=流量(Qw)[ℓ/min]×揚程(H)[m]÷6120×効率(η)が計算式です。

      この式は、流量と圧力差を使ってポンプの動力を計算します。

      (2)効率を考慮した動力計算式

      電力Piを使って、ポンプがM の60 % の仕事PPをしたとすれば、残りはポンプの損失となり、その損失はM の30% (=100-10-60) になります。 このときのポンプ効率ηPは、ηP = PP/Pi x 100 (%) になります。この式では、ポンプの効率を考慮しています。効率が高いほど、必要な動力は少なくなります。

      (3)馬力(HP)への変換

      油圧ポンプの動力は、上記の(1)で計算されます。油圧ポンプの流量と圧力差を知っていれば、まずは出力をkWで計算し、その後に馬力に変換することができます。

       

      5. 油圧ポンプの選び方のポイント

      1. コスト・・・初期投資だけでなく、ランニングコストやメンテナンス費用も含めて総合的に判断することが大切です。
      2. 使用目的・・・例えば、建設機械や産業機械など、用途によって必要な圧力や流量が異なります。次に、必要な圧力と流量を計算しましょう。ポンプの性能は、これらの数値によって決まりますので、機械の仕様に合ったものを選ぶことが大切です。
      3. ポンプの種類・・・一般的には、ギアポンプ、ピストンポンプ、ロータリーポンプなどがありますが、それぞれ特性が異なるため、用途に応じて選択します。さらに、耐久性やメンテナンスのしやすさも重要な要素です。長期間使用する場合は、信頼性の高いメーカーの製品を選ぶと良いでしょう。 

       

      6. 油圧ポンプの省エネ化の検討

      油圧装置には必ず損失が有り、熱や音、振動などとなって表れます。次の様な場合、仕様より省エネ化につながる可能性があります。

      • 大きなオイルクーラを使うことで油温を調整している場合。
      • タンクの油面変動の量に対して タンクが大きい場合。
      • 大きな騒音が発生している場合
      • 油温が高い(現在の室温に対して20℃以上高い場合)

      油圧ユニットでの損失は、回転数に比例する損失・電動機での損失・ポンプでの損失に分類されます。油圧ユニットが省エネであるかどうかの見極めには、ユニットの電力使用量の実測や運転サイクルの確認が必要です。室温に対し作動油温度が20℃以上高い場合は省エネでないおそれがあります。

      油圧システムは、効率の改善、騒音の低減が課題とされてきました。省エネ化への要請からポンプから吐き出される作動油の流量を、ポンプ自体の容量を変化させるのではなく、駆動する電動モーターの回転数を制御する方法が注目されるようになりました。

      この高性能な制御方法を用いて大流量を必要としないときにはポンプを低速回転で運転するので、運転音の低騒音化でモーターの消費電力低減を実現することで油圧ポンプの省エネ化、高効率化が可能となりました。

       

      7. まとめ

      以上のように油圧は密閉された液体の一部に加わった圧力は全体に等しく伝わる、パスカルの原理を利用して力を変換するので、多くの機器に使用されています。油の特性を利用することで、粘性があるため漏れが少ない、沸騰しない、潤滑性があるなどの機能上のメリットがあります。デメリットは、作動油は温度によって機械効率が変わる。配管が複雑である。作動油の油漏れが生じて、さびやゴミに弱いなどです。

       

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      この記事の著者

      嶋村 良太

      商品企画・設計管理・デザインの業務経験をベースにした異種技術間のコーディネートが得意分野。自身の専門はバリアフリー・ユニバーサルデザイン、工業デザイン、輸送用機器。技術士(機械部門・総合技術監理部門)

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