ポリプロピレンとは

更新日

投稿日

ポリプロピレン

 

「樹脂」といえば、元来は天然樹脂のことを指します。ウルシなどの樹木からとれる脂のことです。しかし有機化学が発達してからは天然樹脂に似た性質を持つ物質が化学合成されるようになりました。

 

そこで、天然樹脂と合成樹脂を区分けして、化学的に作られたものを「合成樹脂」と呼んで区別するようになりました。合成樹脂にも、ポリウレタン(PUR)・ポリエチレン (PE)・ポリプロピレン (PP)などとても多くの種類があります。

 

5大汎用プラスチックと呼ばれるPVC(ポリ塩化ビニル)・PE(ポリエチレン)・PS(ポリスチレン)・PP(ポリプロピレン)・ABSや、「5大エンプラ」と呼ばれるPA(ポリアミド)・PC(ポリカーボネート)・ポリエステル(PBT,PET)・POM(ポリアセタール)・変性PPE(変性ポリフェニレンエーテル)など、一般に広く使われている合成樹脂ですが、上手に使いこなすためには、合成樹脂材料の性質と基礎知識をよく理解することが重要です。

 

合成樹脂材料は、金属材料などと比べて環境条件に対する安定性が低いため、使われ方の見極めが重要です。合成樹脂材料が原因の製品不具合は非常に多く発生していますが、その多くが使われ方の見極め不足と、合成樹脂材料の環境条件に対する不安定性に起因します。合成樹脂材料を使った製品において、製品の使われ方を見極めることの重要性を理解して下さい。

 

今回は、ポリプロピレンに焦点を絞ってその概要を解説します。

 

1.ポリプロピレンとは

ポリプロピレン(PP)は、プロピレンを重合させた樹脂で、汎用プラスチックの一つです。熱可塑性プラスチック(熱可塑性樹脂) の一つに分類され、汎用プラスチックの中では最も比重が小さく、0.9~0.91となっているのが大きな特徴です。耐熱温度は100~140℃です。

 

機械的強度にも優れた素材で、耐熱性が良好です。光沢にも優れた素材で、着色も可能です。生産量も多くポリエチレンに次ぐ生産がされ、軽量で安価という特徴を生かして広く使われています。60%近くは射出成形で使用され、20%前後がフィルム、残りが繊維等として使われます。

 

2.ポリプロピレンの種類・製法

ポリプロピレンは、ホモポリプロピレン、ブロックポリプロピレン、ランダムポリプロピレンの3種類に分類されます。これらのうち基本となるのがホモPPです。石油のクラッキング副生物として生産されるプロピレンを主原料として、まずホモPPが作られます。多段重合としてこのPPにエチレンを追加して重合するとブロックポリプロピレン、さらに触媒の追加で、ランダムポリプロピレンが製造されます。

 

3.ポリプロピレンの物性

ポリプロピレンには種類や組成によってグレードがあります。他のポリマーとアロイ化したものやガラス繊維・炭素繊維で強化したものもあります。シンジオタクチックポリプロピレン、アイソタクチックポリプロピレン、アタクチックポリプロピレン、エラストマー、ポリマーアロイ、環状ポリオレフィンなどです。

 

4.ポリプロピレンの弱点

ポリプロピレンの弱点を以下に箇条書きで整理しました。

【可燃性】難燃性を求められる局面では使いづらい材料です。可燃性で、燃えやすいプラです。

 

【耐寒性】耐熱性は比較的強い反面、耐寒性については弱くなりますが、これを改質したグレードもあります。

 

【耐候性】ポリプロピレンの顕著な弱点として特に耐候性に難があり、日光で白化します。安定剤の添加によって屋外で使用することが可能なグレードのものもあります。

 

【成形収縮率】成形後の収縮現象が顕著な材料です。成形後の収縮を計算して生産する訳ですが、結晶性ポリマーであるので致し方ありません。量産での寸法精度を毎回同じにできることは工業製品にとって必須条件の一つですが、1....

ポリプロピレン

 

「樹脂」といえば、元来は天然樹脂のことを指します。ウルシなどの樹木からとれる脂のことです。しかし有機化学が発達してからは天然樹脂に似た性質を持つ物質が化学合成されるようになりました。

 

そこで、天然樹脂と合成樹脂を区分けして、化学的に作られたものを「合成樹脂」と呼んで区別するようになりました。合成樹脂にも、ポリウレタン(PUR)・ポリエチレン (PE)・ポリプロピレン (PP)などとても多くの種類があります。

 

5大汎用プラスチックと呼ばれるPVC(ポリ塩化ビニル)・PE(ポリエチレン)・PS(ポリスチレン)・PP(ポリプロピレン)・ABSや、「5大エンプラ」と呼ばれるPA(ポリアミド)・PC(ポリカーボネート)・ポリエステル(PBT,PET)・POM(ポリアセタール)・変性PPE(変性ポリフェニレンエーテル)など、一般に広く使われている合成樹脂ですが、上手に使いこなすためには、合成樹脂材料の性質と基礎知識をよく理解することが重要です。

 

合成樹脂材料は、金属材料などと比べて環境条件に対する安定性が低いため、使われ方の見極めが重要です。合成樹脂材料が原因の製品不具合は非常に多く発生していますが、その多くが使われ方の見極め不足と、合成樹脂材料の環境条件に対する不安定性に起因します。合成樹脂材料を使った製品において、製品の使われ方を見極めることの重要性を理解して下さい。

 

今回は、ポリプロピレンに焦点を絞ってその概要を解説します。

 

1.ポリプロピレンとは

ポリプロピレン(PP)は、プロピレンを重合させた樹脂で、汎用プラスチックの一つです。熱可塑性プラスチック(熱可塑性樹脂) の一つに分類され、汎用プラスチックの中では最も比重が小さく、0.9~0.91となっているのが大きな特徴です。耐熱温度は100~140℃です。

 

機械的強度にも優れた素材で、耐熱性が良好です。光沢にも優れた素材で、着色も可能です。生産量も多くポリエチレンに次ぐ生産がされ、軽量で安価という特徴を生かして広く使われています。60%近くは射出成形で使用され、20%前後がフィルム、残りが繊維等として使われます。

 

2.ポリプロピレンの種類・製法

ポリプロピレンは、ホモポリプロピレン、ブロックポリプロピレン、ランダムポリプロピレンの3種類に分類されます。これらのうち基本となるのがホモPPです。石油のクラッキング副生物として生産されるプロピレンを主原料として、まずホモPPが作られます。多段重合としてこのPPにエチレンを追加して重合するとブロックポリプロピレン、さらに触媒の追加で、ランダムポリプロピレンが製造されます。

 

3.ポリプロピレンの物性

ポリプロピレンには種類や組成によってグレードがあります。他のポリマーとアロイ化したものやガラス繊維・炭素繊維で強化したものもあります。シンジオタクチックポリプロピレン、アイソタクチックポリプロピレン、アタクチックポリプロピレン、エラストマー、ポリマーアロイ、環状ポリオレフィンなどです。

 

4.ポリプロピレンの弱点

ポリプロピレンの弱点を以下に箇条書きで整理しました。

【可燃性】難燃性を求められる局面では使いづらい材料です。可燃性で、燃えやすいプラです。

 

【耐寒性】耐熱性は比較的強い反面、耐寒性については弱くなりますが、これを改質したグレードもあります。

 

【耐候性】ポリプロピレンの顕著な弱点として特に耐候性に難があり、日光で白化します。安定剤の添加によって屋外で使用することが可能なグレードのものもあります。

 

【成形収縮率】成形後の収縮現象が顕著な材料です。成形後の収縮を計算して生産する訳ですが、結晶性ポリマーであるので致し方ありません。量産での寸法精度を毎回同じにできることは工業製品にとって必須条件の一つですが、1.5%前後の収縮率があるとされます。

 

【銅害】真鍮をはじめインサートとして銅合金とプラスチックを組み合わせる必要がある用途では注意を要します。銅と接触する場合、接触した状態で加熱されると含まれているブタジエンの影響で熱分解が促進されます。銅害防止剤を添加することでこの現象は緩和します。

 

5.ポリプロピレンの加工

【切削加工】ポリプロピレンは切削加工用の樹脂としても使用されています。用途は食品分野などです。切削業では、ポリプロピレンよりも、物性の近いポリエチレンや、超高分子量ポリエチレンの方が使用頻度は多いイメージです。高温下での使用時にはポリエチレンは耐熱性がないため、ポリプロピレンが活躍します。

 

   続きを読むには・・・


この記事の著者

嶋村 良太

商品企画・設計管理・デザインの業務経験をベースにした異種技術間のコーディネートが得意分野。自身の専門はバリアフリー・ユニバーサルデザイン、工業デザイン、輸送用機器。技術士(機械部門・総合技術監理部門)

商品企画・設計管理・デザインの業務経験をベースにした異種技術間のコーディネートが得意分野。自身の専門はバリアフリー・ユニバーサルデザイン、工業デザイン、輸...


「高分子・樹脂技術」の他のキーワード解説記事

もっと見る
ブロー成形(中空成形・吹込み成形)とは

  ブロー成形は、容器形状を一工程で成形できるユニークな加工法です。この特徴を生かし、飲料水やシャンプーボトルといった日常品から、燃料タン...

  ブロー成形は、容器形状を一工程で成形できるユニークな加工法です。この特徴を生かし、飲料水やシャンプーボトルといった日常品から、燃料タン...


降伏点とは何か?意味や単位、求め方をわかりやすく解説

  材料に外力を加えるとやがて変形が大きくなり、弾性変形から塑性変形に移行します。塑性変形は、金属をはじめ結晶構造を持つ材料でよく観察され...

  材料に外力を加えるとやがて変形が大きくなり、弾性変形から塑性変形に移行します。塑性変形は、金属をはじめ結晶構造を持つ材料でよく観察され...


フッ素樹脂塗料、選択のポイントとは(その1)フッ素樹脂とは

  1. フッ素樹脂塗料の科学的選択    フッ素樹脂塗料は、耐熱性、耐薬品性、耐候性、非粘着性、低摩擦等フッ素樹脂の持つ優れた...

  1. フッ素樹脂塗料の科学的選択    フッ素樹脂塗料は、耐熱性、耐薬品性、耐候性、非粘着性、低摩擦等フッ素樹脂の持つ優れた...


「高分子・樹脂技術」の活用事例

もっと見る
国際プラスチックフェアー(IPF JAPAN 2017)展示会レポート(その8)

 前回のその7に続いて解説します。   8. 加飾技術(その1) (1) インクジェット加飾  セーレンのブースでは、テクスチャーを付与し...

 前回のその7に続いて解説します。   8. 加飾技術(その1) (1) インクジェット加飾  セーレンのブースでは、テクスチャーを付与し...


製造業とエンドユーザーを結ぶ新しい“マッチングサービス”の構築を目指す

廃盤部品や小ロット生産に特化、サプライチェーンの課題を解決 株式会社3D Printing Corporation (神奈川県横浜市) 近年、コロナウ...

廃盤部品や小ロット生産に特化、サプライチェーンの課題を解決 株式会社3D Printing Corporation (神奈川県横浜市) 近年、コロナウ...


【SDGs取り組み事例】不要なプラスチックを需給者間で有効活用 Hamee株式会社(神奈川県小田原市)

プラスチックの燃焼時に発生する温室効果ガスや廃棄などが原因で環境や生態系に悪影響を与える「プラスチック問題」。これら問題の解決に向け、不要となったプラ...

プラスチックの燃焼時に発生する温室効果ガスや廃棄などが原因で環境や生態系に悪影響を与える「プラスチック問題」。これら問題の解決に向け、不要となったプラ...