今回は、カシメの種類、カシメ品質の管理などを解説します。
1.カシメとは
カシメは金属剛体を接合するための工法のひとつです。接合部分にはめこまれたリベット金具を、工具などで打ったり締め付けたりして接合部に加圧して固める加工工程をとります。
金属剛体の接合方法としては圧入も一般的な工法ですが、圧入が部品に荷重をかけて押し込む加工方法であるのに対して、カシメは挿入で組み付けたあとに片側の剛体に荷重をかけて変形させて接合させます。
カシメを行うには打ち台、打ち棒と呼ばれる専用工具を使い、それらでリベットなどを挟み込み、工具で叩いたり締め付けたりします。カシメは取り付けると外れにくく、接続後に取り外すのが困難です。しかし、その分安定した強度を得ることができます。
2.カシメの種類と特徴
カシメには、リベットカシメ、ハトメカシメ、バーリングカシメがあります。次にこれらの特徴、用途を整理します。
【リベットカシメ】2個の板状部品の穴を合わせ、赤熱したリベットを挿入しリベットの端を打撃・塑性変形させてカシメ接合します。複数個のリベット固定で強固な接合が可能なのが特徴で、溶接の信頼性の低かった時代は造船、鋼板製建造物、鉄道車輌などに多用されました。現在でも橋梁構造物、形鋼材を使用した塔状建造物などに多く使われます。
【ハトメカシメ】2個以上の板状部品に穴をあけ、ハトメを通してカシメ接合します。ハトメは薄い板製のため接合強度は大きくありません。板状部品同士の接合、布、紙の接合、布穴のほつれ防止などに使われます。
【バーリングカシメ】1枚目の板にバーリングを施し、接合する他の板の穴にバーリング部を挿入するカシメ接合です。その特徴は、ハトメ、リベットなどの接合用部品が不要で、作業能率が良いことです。薄板板金の接合、異種材料の板同士の接合が用途です。
3.カシメ品質の管理
カシメの目的は部品の締結ですから、衝撃や振動により部品の接合力が失われてしまうようなことがあっては、製品の重大な機能不具合になります。どんな製品でも カシメを使用するような部分は特殊特性になっています。 したがって、通常工程以上の厳しい品質管理が要求されます。管理図を使用したカシメ深さの管理や、破壊試験による抜けのモニタリングなどの管理手法が用いられます。
判定項目は装置側では荷重判定、ストローク判定などですが、これらはあくまで装置の動作判定です。製品品質が正しいかどうかは、装置判定結果からではわかりません。製品カシメ部分の外観、抜け荷重、カシメの深さなどは直接製品を見なければ判断できません。
4.量産でのカシメ工法のメリットとデメリット
荷重をかけるだけで2部品の締結ができるカシメ工法は、材料費低減面ではコストメリットがあります。カシメ工法でない場合には、ネジやトメワなどの何らかの固定具が追加で必要になります。
一方でデメリットは、分解できないことです。カシメの工程は不可逆工程で、後で分解しようとしても、破壊しない限...
デメリットのもう1つが金属屑の混入リスクです。金属変形工法であるため、動作前後で金属屑を発生させます。また、鉄製品へのカシメの場合にはカシメツールの破損も考慮しておく必要があります。ツール部が欠けていても、荷重で検出できる可能性はゼロに等しく、金属屑が製品に混入するという不具合を引き起こす可能性があります。