イノベーションの創出 普通の組織をイノベーティブにする処方箋 (その131)

 

【この連載の前回へのリンク】

現在「切り取った知識の重要部分を発想するフレームワークを使って、イノベーションを発想する」にむけて、日々の活動の中でどうイノベーションを創出するかについて、解説しています。今回からは、失敗のコストのマネジメントについて、議論をしていきたいと思います。

◆関連解説『技術マネジメントとは』

 

●「とにかく多少とも価値がありそうであれば、積極的にやってみる」

前回、解説した「未知の知識を主体的に得る」ためには、「多少とも価値がありそうであれば、積極的にやってみる」を実践することが重要です。しかし、このようなことに踏み出すコストや、結果的に失敗する可能性が大きいのですから、失敗のコストを低減することができなければ、なかなか新しいことには挑戦できません。

 

●「とにかく多少とも価値がありそうであれば、積極的にやってみる」を妨げる2つのコスト

新たなことに挑戦を妨げるものとして、以下の2つのコストがあるように思えます。

 

(1)踏み出すこと・踏み出そうとすることで発生する直接的コスト

「とにかく多少とも価値がありそうであれば、積極的にやってみる」と言っても、実際に踏み出すには踏み出すこと・踏み出そうとすることで「直接的」に発生する金銭的、時間的、心理的なコストがあり(この3つのコストは別途下で議論します)、簡単にそのような活動を行うことにはなりません。これらコストを低減する仕組みを作らなければ、失敗の可能性の高い活動に踏み出す気にはなりません。

 

(2)踏み出した後に失敗による発生するコスト

当然失敗を前提として活動を行う訳ですから、失敗の可能性は大きく、それにより失敗のコストが発生します。失敗のコストがあまりに大きいものであれば、実際には企業にしても個人の生活にしてもダメージが発生するので、新しいことに挑戦するには、「あらかじめ」それを低減する工夫が存在していることが求められます。

 

●3つの種類のコスト

これら2つのコストにも、別の分類として以下の3つの種類のコストがあります。

 

(1)金銭的コスト

まず金銭的なコストです。踏み出すにもお金が必要ですし、失敗の場合にはそれまで投入した費用が無駄になります。

 

(2)時間的コスト

時間は企業、個人、誰にとっても大切な資源です。企業も個人も限られた時間の中しなければならないことを、沢山抱えています。そのような中で、新な活動に踏み出すには追加的な時間が必要です。また、その後失敗した場合のそれまで投入した時間が無駄になったと「感じる」かもしれません。

 

(3)心理的コスト

新な活動に踏み出す...

には、いずれの状況でも心理的な障害(心理的コスト)を乗り越えなければなりません。また、通常であれば、失敗をすれば誰でも心理的なダメージを感じるものです。これら心理的なコストを低減・払拭する工夫が必要です。

 

次回から、これら「とにかく多少とも価値がありそうであれば、積極的にやってみる」を妨げる2つのコストと3つの種類のコスト(金銭的、時間的、心理的)の6つのマトリクス一つ一つにおいて、どういう工夫をしていけば良いかを解説します。

◆関連解説『技術マネジメントとは』

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