当事者意識や自覚を促すために必要な思考法とは

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人的資源マネジメント

 

【この連載の前回:相手の理解度を下げないやさしい伝え方とはへのリンク】

自覚や当事者意識は、問題が発生したとき「 私がそのモノゴトに直接関わっている。 」という心の動きが、 組織全体の問題解決力に直結する意識です。そして、この意識は、 新5S思考術の適用で身に付けることができます。今回は、当事者意識や自覚を促すために必要な思考法について解説します。

 

1.当事者意識 を芽生えさせる新5S思考術

新5S思考術で身につく自覚や当事者意識について、『問題意識と当事者意識を一新する9つの要素』を解説します。

 

私は、5S活動を30年前にメーカーに勤めていたときにはじめて知りました。廊下の壁や掲示板に「 整理 ・ 整頓 ・ 清掃 ・ 清潔 ・ 躾 」と描かれたポスターが貼られていたり、現場の製品棚にも「 5Sをシッカリと! 」と貼ってあった記憶があります。

 

それまで、 ただ5Sを周知するのみに貼られた掲示物でしたが、経営トップが 「 5S活動を定着させる! 」 と大号令をかけ担当役員も配置され全社展開がはかられました。頻繁に5Sパトロールが行われパトロールの結果は写真 ( 当時はプリント版 ) で掲示板に貼られ、山積みの書類と工具で盛られた私の机はいつもの生け贄状態でした。

 

「 5S活動なんかやって会社が良くなるのですか? 」 と上司に質問しても「 良くなるらしいよ。 」 との答えで「 本当に整理清掃で会社がよくなるの? 」と半信半疑だったことを覚えています。そんな私が5Sの本当の意味を知ったのは、 それから 10年後のことでした。

 

2.新5S思考術 = 5S活動 × コーチング心理学

生産革新プロジェクトのメンバーに選ばれたことをきっかけに トヨタ生産方式TPM の研究を始めました。そのプロジェクトでは、3名のレジェンドが選抜されて生産革新学校に3ヶ月間通うよう指示があり、私もメンバーとして通学をしました。改善理論・生産管理理論など座学を1週間学び、 翌週は指定された職場のムダを廃除するといった教育プログラムでした。

 

今週は、○×△の職場を改善する!と隔週毎に座学で学んだ知識を実践しようと意気込んで現場に向かっていました。そして職場改善を繰り返し経験することである気づきを得たのです。それは 「 整理 ・ 整頓 のできている職場はすぐに改善に取りかかることができている。 」でした。

 

整理 ・ 整頓 のできている職場は、 ムダを見つけることが容易ですぐに改善にとりかかることができたのです。 短時間でムダを見つけかつ改善ができるということは、 問題解決がスムーズに進むということです。これに気づくことで10年前の 5S活動の真意をやっと理解できました。

 

この気づきを背景に「 5S活動 」の研究を始めました。工学的なことはもちろん、コーチング心理学 や NLP ( 神経言語プログラミング ) などの心理学からもアプローチをかけ「 新5S思考術 」として確立しました。この実績が認められ日本コーチング心理学協会において 新5Sに関する講師にも認定されました。

 

3.当事者意識 を持った人材育成モデルを描くなら この9つの要素を狙え!

新5S思考術で大切な事は 「 人の育成に関する目的を組織として明確にすること。 」 です。職場をキレイにする ・ 作業効率 を高めるといった 物質 ・ タスク重視型 の目的が多くみられますが、人間重視型 の目的も合わせて明確にする必要があります。

 

新5S思考術を適用する場合、 「 どのような人材を育成するか。 」 を決めてください。これを決めないと 「 お掃除活動 ・ お片付け活動 」 で終わってしまいます。

 

新5S思考術の適用で現時点で解っている人間重視型の成果は次の通りです。人の成長を狙った目的を定める時の参考にしてください。これらの育成要素は、 有機的につながり合い、 どの要素も欠けること無く育成することが大切ですが、一気に育成するにはコストがかかります。まずは、 狙いを定めるためにも目的を定めることが大切です。

 

 【人間重視型の成果】

  • 改善行動力:視野の変化 閃き 成果 自己効力感 改善行動力 改善実施
  • 問題解決力:問題検出力 問題定義力 分析力 改善行動力
  • 問題定義力:当事者能力 気付き 経験 問題検出力
  • 当事者意識:存在承認 報連相 気付き
  • 気付き力:思考力 報連相 訓練 センス
  • 思考能力:経験 視野 視点の高さ広さ メタ認知機能 思考
  • 組織対話能力:挨拶 声がけ オキシトシン・テストステロン 信頼 高い対話能力
  • 学力:傾聴力 納得力 照合 行動/思考 理解
  • 習力:情報処理力 知識/力量 会話力 説明力 知識/力量 照合

 

4.成長しながら同時に成果も手に入れる 新5S思考術

人間重視型アプローチと合わせて、物質タスク重視型アプローチでもある分析ツールの力量 ( 知識 + 使いこなし力 ) を育成し、「 人間重視型と物質タスク重視型のバランス化 」 を狙うのです。問題解決ツールとは、 ロジカルシンキング, データ処理, なぜなぜ分析, PM分析, SWOTクロスなどを指します。「 問題解決ツール...

人的資源マネジメント

 

【この連載の前回:相手の理解度を下げないやさしい伝え方とはへのリンク】

自覚や当事者意識は、問題が発生したとき「 私がそのモノゴトに直接関わっている。 」という心の動きが、 組織全体の問題解決力に直結する意識です。そして、この意識は、 新5S思考術の適用で身に付けることができます。今回は、当事者意識や自覚を促すために必要な思考法について解説します。

 

1.当事者意識 を芽生えさせる新5S思考術

新5S思考術で身につく自覚や当事者意識について、『問題意識と当事者意識を一新する9つの要素』を解説します。

 

私は、5S活動を30年前にメーカーに勤めていたときにはじめて知りました。廊下の壁や掲示板に「 整理 ・ 整頓 ・ 清掃 ・ 清潔 ・ 躾 」と描かれたポスターが貼られていたり、現場の製品棚にも「 5Sをシッカリと! 」と貼ってあった記憶があります。

 

それまで、 ただ5Sを周知するのみに貼られた掲示物でしたが、経営トップが 「 5S活動を定着させる! 」 と大号令をかけ担当役員も配置され全社展開がはかられました。頻繁に5Sパトロールが行われパトロールの結果は写真 ( 当時はプリント版 ) で掲示板に貼られ、山積みの書類と工具で盛られた私の机はいつもの生け贄状態でした。

 

「 5S活動なんかやって会社が良くなるのですか? 」 と上司に質問しても「 良くなるらしいよ。 」 との答えで「 本当に整理清掃で会社がよくなるの? 」と半信半疑だったことを覚えています。そんな私が5Sの本当の意味を知ったのは、 それから 10年後のことでした。

 

2.新5S思考術 = 5S活動 × コーチング心理学

生産革新プロジェクトのメンバーに選ばれたことをきっかけに トヨタ生産方式TPM の研究を始めました。そのプロジェクトでは、3名のレジェンドが選抜されて生産革新学校に3ヶ月間通うよう指示があり、私もメンバーとして通学をしました。改善理論・生産管理理論など座学を1週間学び、 翌週は指定された職場のムダを廃除するといった教育プログラムでした。

 

今週は、○×△の職場を改善する!と隔週毎に座学で学んだ知識を実践しようと意気込んで現場に向かっていました。そして職場改善を繰り返し経験することである気づきを得たのです。それは 「 整理 ・ 整頓 のできている職場はすぐに改善に取りかかることができている。 」でした。

 

整理 ・ 整頓 のできている職場は、 ムダを見つけることが容易ですぐに改善にとりかかることができたのです。 短時間でムダを見つけかつ改善ができるということは、 問題解決がスムーズに進むということです。これに気づくことで10年前の 5S活動の真意をやっと理解できました。

 

この気づきを背景に「 5S活動 」の研究を始めました。工学的なことはもちろん、コーチング心理学 や NLP ( 神経言語プログラミング ) などの心理学からもアプローチをかけ「 新5S思考術 」として確立しました。この実績が認められ日本コーチング心理学協会において 新5Sに関する講師にも認定されました。

 

3.当事者意識 を持った人材育成モデルを描くなら この9つの要素を狙え!

新5S思考術で大切な事は 「 人の育成に関する目的を組織として明確にすること。 」 です。職場をキレイにする ・ 作業効率 を高めるといった 物質 ・ タスク重視型 の目的が多くみられますが、人間重視型 の目的も合わせて明確にする必要があります。

 

新5S思考術を適用する場合、 「 どのような人材を育成するか。 」 を決めてください。これを決めないと 「 お掃除活動 ・ お片付け活動 」 で終わってしまいます。

 

新5S思考術の適用で現時点で解っている人間重視型の成果は次の通りです。人の成長を狙った目的を定める時の参考にしてください。これらの育成要素は、 有機的につながり合い、 どの要素も欠けること無く育成することが大切ですが、一気に育成するにはコストがかかります。まずは、 狙いを定めるためにも目的を定めることが大切です。

 

 【人間重視型の成果】

  • 改善行動力:視野の変化 閃き 成果 自己効力感 改善行動力 改善実施
  • 問題解決力:問題検出力 問題定義力 分析力 改善行動力
  • 問題定義力:当事者能力 気付き 経験 問題検出力
  • 当事者意識:存在承認 報連相 気付き
  • 気付き力:思考力 報連相 訓練 センス
  • 思考能力:経験 視野 視点の高さ広さ メタ認知機能 思考
  • 組織対話能力:挨拶 声がけ オキシトシン・テストステロン 信頼 高い対話能力
  • 学力:傾聴力 納得力 照合 行動/思考 理解
  • 習力:情報処理力 知識/力量 会話力 説明力 知識/力量 照合

 

4.成長しながら同時に成果も手に入れる 新5S思考術

人間重視型アプローチと合わせて、物質タスク重視型アプローチでもある分析ツールの力量 ( 知識 + 使いこなし力 ) を育成し、「 人間重視型と物質タスク重視型のバランス化 」 を狙うのです。問題解決ツールとは、 ロジカルシンキング, データ処理, なぜなぜ分析, PM分析, SWOTクロスなどを指します。「 問題解決ツールを使いこなすための人間育成 」を方針に育成を進めることで 物質タスク重視型 と 人間重視型 のバランスを狙うことができます。

 

また適用される範囲は、 安全衛生 ・ 品質管理 ・ 食品安全 ・ 設備保全 などの 物質タスク重視型マネジメント と当事者意識 ・ 当事者能力 ・ 思考力 などのマネジメント側面の全てをカバーすることも可能です。

 

5.成長を楽しむ活動 新5S思考術

多くの組織では、 この人間重視型の目的が不明確なために、5S活動に参加するメンバーに「 納得感 」を与えることができず、 継続性を失ってしまいます。メンバーが 「 この活動で、自分の問題検出力が高まる! 」 と理解していれば、自らの成長を期待し活動を継続することができます。しかし、 自らの成長など未来に得る可能性のあるメリットを感じることができなければ、活動の継続性は弱まるばかりです。自らの成長した姿を描くことにより当事者意識も芽生えるので、 あるべき姿をリーダーが提案することも大切です。

 

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この記事の著者

坂田 和則

現場を見る目が違うからリピート率90%超え。 等身大の言葉で語るから現場ウケしてます。 問題/課題解決モチベーションに火を付けるのなら!

現場を見る目が違うからリピート率90%超え。 等身大の言葉で語るから現場ウケしてます。 問題/課題解決モチベーションに火を付けるのなら!


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