【実践編 第4章目次】
第4章 標準作業で作業のムダを取る
1. 標準作業で作業のスタンダードを設定する
2. 動作分析で作業のムダを取る
3. 自働化と人離しで作業者の負担を減らす←今回の記事
4. 生産を守る保全・安全の取り組みを進める
5. 「目で見る管理」で現状をオモテ化する
【この連載の前回:流れ生産:ジャスト・イン・タイム生産(その69)へのリンク】
3. 自働化と人離しで作業者の負担を減らす
「働く」機械設備に変えることで、人の負担の軽減というムダ取り改革を行なう。
前回の(1)(2)に続けて、解説します。
(3)自働化の手順
もともと、モノづくりは人の手で行なっていました。最初は簡単な工具を使い、次に、作業をやりやすくするために工夫した治具を用いるようになり、作業の一部を機械に任せるようになっていきました。
いまでは、ほとんどの作業を機械化する企業が多くなっていますが、作業のやり方や流し方は、企業ごとに違います。自働化は主に次の手順で行なわれます。
手順1.人手(人手のみ)
加工のすべてを人手で行なう段階。人件費の安さと動作の速さだけが生産性を上げる要因です。
手順2.機械化(人手十機械)
人手でやっていた作業(加工運動)の一部を機械に置き換える段階。人と機械の共同作業になりますが、まだ人が中心の作業です。
手順3.自動化(不良が出る機械)
人による作業のある範囲を、すべて機械に任せる段階。人はワークをセットして起動スイッチを押せば、機械から離れることができます。ただし、たんに動くだけの機械なので、不良が出てしまいます。
手順4.自働化(不良の出せない機械)
人がワークをセットし、送りをかければ、加工はすべて機械が行なう段階。加工が完了すれば、機械は自動的に停止するので、人は完全に機械から離れることができます。そのうえ、不良があれば機械が自動的に止まるため、人が付いていなくても不良を出さない.出せないしくみになっています。さらに、ワークの取り付けと取り出しを自働化すれば、完全無人化が可能になります。
(4)自働化には3つの機能がある
機能1.人離し
加工部門で行なう自働化には3つの機能があります。ひとつ目は「人離し」。機械と人を離すことで、作業者を機械の補助や監視という作業から解放することです。
上記の手順1、2から3へ移行するためには、人と機械の動作をはっきりと区分けして、人が行なっている作業の動作分析をすることから始めます。作業単位ごとに、右手は何をしているのか、左手はどんな動作をしているのかを観察し、「この左手の作業をなくすことはできないか?」というように、一つひとつの作業の機械化を検討します。この動作を電動にすれば右手があく、あの作業を機械化すれば、左手をほかの作業に使えるというように、生産性の向上のために効果的だと判断できた場合、その工程や作業を機械化、自動化します。
そして、起動すれば、作業者の両手両足が不要になるような機械を導入することができれば、とりあえず、人と機械は離れることが可能になります。この状態を「人離し」といいます。
機能2.不良の出せないしくみ
次に、手順3から4への移行を考えます。
この段階では、機械はまだ「動く機械」にすぎず、機械が不良をつくるのを防止するために、人は「監視」という見張りをしなければなりません。せっかくの機械導入も、この段陪ではまだ原価低減につながりません。そこで、次に、 不良をつくらない機械に改造することを考えます。
「動く機械」に人のチエを入れて、「働く機械」にするのです。これが、自働化の2つ目の機能です。つまり、「なんらか異常が発生したら、機械自体が判断して停止し、人に知らせる」ことができる機能を付け加えるのです。
この「なんらかの異常」とは、工場や工程、使い方によってそれぞれ異なり、一律にはいえませんが、そのためには、購入した機械をそのまま使うのではなく、使う側のニーズに合わせて改造しなければなりません。これを、「源流検査」もしくは「不良の出せないしくみづくり」につなげるのが、自働化の真の意味での最重要課題となります。「源流検査」とは、部品、情報の段階で不良やミスをチェックすることです。
このようにして、安心して機械にすべての作業を任せられるようになると、作業者は何台もの機械や工程を持つことができ、生産性は飛躍的に向上します。
機能3.もうひとつの自働化(ラインを止めるしくみ)
「自働化」への取り組みはこれで終わりではありません。加工部門で実施した「自働化」の考え方、つまり、「異常が起こったら止める」というしくみを、手作業を...
組立ラインで、不良・欠品・作業の遅れなど、なんらかの異常が発生したら、作業者がストップボタン(赤ボタン)を押してラインを止めます。不良を次工程に流すのを防ぐだけでなく、その場ですぐに原因を追究し、改革・改善に結び付けるのです。
これにより、作業者の動作のムダや手待ちのムダなど、あらゆるムダ取りを行ない、生産効率を上げることができます。これが、もうひとつの自働化です。
次回に続きます。
【出典】古谷誠 著 『会社を強くする ジャスト・イン・タイム生産の実行手順』中経出版発行(筆者のご承諾により連載)
◆【特集】 連載記事紹介:連載記事のタイトルをまとめて紹介、各タイトルから詳細解説に直リンク!!