サプライチェーンの構造的・長期的な課題、サプライチェーン戦略とは

更新日

投稿日

 サプライチェーンマネジメントに対して、サプライチェーン戦略はより長期的・構造的なサプライチェーンの改善課題を扱います。従来から行なわれている収益性の改善対策は、販売力強化や製造・物流側でのコストダウン対策が主流でした。

  これに対し、サプライチェーンマネジメントは、時間軸に対する管理面、ソフト面からのオペレーションの改善により、収益を向上させるための仕組み作りを狙います。そのためのサプライチェーン戦略は生産拠点計画、物流センター計画、流通チャンネル計画など、設備能力とロケーション(拠点政策)の計画などを対象とし、長期的なキャッシュフロー収益を改善する狙いがあります。

  生産・物流拠点のプランニングにおいては、初期投資コストと運営経費の削減が目的ではなく、顧客への納期の短縮、在庫充足率の向上、市場即応性など、スループット改善につながるサービスレベルの向上をセットにして立案しなければなりません。

  つまり、サプライチェーン戦略においては、コストと顧客サービスとの関連を、対競合のベンチマーキングを通して市場ごとに把握することが必要となるのです。たとえば、加工食品メーカーにとって商品の鮮度は重要な競争力のファクタであり、小口小売店への一日二回の小口配送は、一日一回、週一回の中大口配送より明らかに優位となります。

  工場からの出荷から店頭までの在庫が常に一~二週間以内という商品と、そうでない商品とは顧客満足度に大きな差が出ます。それを実現するためのサプライチェーン上の課題は、生産能力と流通上の拠点をいかに計画するかです。どの市場を重視するか、対競合に比べてどこが強くて、どこが弱いかを分析することは営業戦略の一環であり、サプライチェーン戦略でもあります。サプライチェーン戦略はコスト重視ではなく、スループット、すなわちスピードによる価値増大の戦略なのです。

  ここではサプライチェーンの構造的・長期的な課題をサプライ...

 サプライチェーンマネジメントに対して、サプライチェーン戦略はより長期的・構造的なサプライチェーンの改善課題を扱います。従来から行なわれている収益性の改善対策は、販売力強化や製造・物流側でのコストダウン対策が主流でした。

  これに対し、サプライチェーンマネジメントは、時間軸に対する管理面、ソフト面からのオペレーションの改善により、収益を向上させるための仕組み作りを狙います。そのためのサプライチェーン戦略は生産拠点計画、物流センター計画、流通チャンネル計画など、設備能力とロケーション(拠点政策)の計画などを対象とし、長期的なキャッシュフロー収益を改善する狙いがあります。

  生産・物流拠点のプランニングにおいては、初期投資コストと運営経費の削減が目的ではなく、顧客への納期の短縮、在庫充足率の向上、市場即応性など、スループット改善につながるサービスレベルの向上をセットにして立案しなければなりません。

  つまり、サプライチェーン戦略においては、コストと顧客サービスとの関連を、対競合のベンチマーキングを通して市場ごとに把握することが必要となるのです。たとえば、加工食品メーカーにとって商品の鮮度は重要な競争力のファクタであり、小口小売店への一日二回の小口配送は、一日一回、週一回の中大口配送より明らかに優位となります。

  工場からの出荷から店頭までの在庫が常に一~二週間以内という商品と、そうでない商品とは顧客満足度に大きな差が出ます。それを実現するためのサプライチェーン上の課題は、生産能力と流通上の拠点をいかに計画するかです。どの市場を重視するか、対競合に比べてどこが強くて、どこが弱いかを分析することは営業戦略の一環であり、サプライチェーン戦略でもあります。サプライチェーン戦略はコスト重視ではなく、スループット、すなわちスピードによる価値増大の戦略なのです。

  ここではサプライチェーンの構造的・長期的な課題をサプライチェーン戦略としましたが、製品企画・開発から試作・量産立上げのビジネスプロセスの連結も、また重要なサプライチェーン戦略の課題です。開発のリードタイムを短縮し、量産の立上げをスムーズに行なって、サプライチェーンのオペレーションを進化させることはまた、コンカレントマネジメント(同時進行のマネジメント)の課題でもあります。

   続きを読むには・・・


この記事の著者

今岡 善次郎

在庫が収益構造とチームワークの鍵を握ります。人と人、組織と組織のつながり連鎖をどうマネジメントするかを念頭に現場と人から機会分析します。

在庫が収益構造とチームワークの鍵を握ります。人と人、組織と組織のつながり連鎖をどうマネジメントするかを念頭に現場と人から機会分析します。


「サプライチェーンマネジメント」の他のキーワード解説記事

もっと見る
海外工場支援者のための「物流指導7つ道具」(その1)

第1回 日本流物流はグローバルスタンダードにあらず   ◆関連解説『サプライチェーンマネジメントとは』 1.現地に持って行くべき「物流指導...

第1回 日本流物流はグローバルスタンダードにあらず   ◆関連解説『サプライチェーンマネジメントとは』 1.現地に持って行くべき「物流指導...


変動メカニズムと対策 サプライチェーンマネジメントによる全体最適化(その3)

  【サプライチェーンマネジメントによる全体最適化 連載記事目次】 1. SCMはなぜ難しい 2. SCM戦略とは 3. 変動メカニズム...

  【サプライチェーンマネジメントによる全体最適化 連載記事目次】 1. SCMはなぜ難しい 2. SCM戦略とは 3. 変動メカニズム...


ギリギリまで作らない、運ばない、仕入れない (その8)

1.ネット社会では商品のライフサイクルも短く、口コミで売れ行きが急激に変わる    前回のその7に続いて解説します。次のグラフを見てください...

1.ネット社会では商品のライフサイクルも短く、口コミで売れ行きが急激に変わる    前回のその7に続いて解説します。次のグラフを見てください...


「サプライチェーンマネジメント」の活用事例

もっと見る
物流の将来像検討とは:物流事業者との付き合い方(その2)

  ◆ 物流の将来像検討 物流を良くするためという考えの下、物流事業者に単純に丸投げすることは控えましょう。失敗する可能性大です。物流ア...

  ◆ 物流の将来像検討 物流を良くするためという考えの下、物流事業者に単純に丸投げすることは控えましょう。失敗する可能性大です。物流ア...


物流はT字型組織を目指せ:真の物流事業者(その3)

  ◆物流はT字型組織を目指せ 物流事業者が真の物流事業者となるための人財育成について考えてみたいと思います。従来の運送業、倉庫業では、...

  ◆物流はT字型組織を目指せ 物流事業者が真の物流事業者となるための人財育成について考えてみたいと思います。従来の運送業、倉庫業では、...


意図的な安い価格:協力会社との取引(その2)

  ◆ハネムーン価格に注意 皆さんはハネムーン価格という言葉をお聞きになったことがありますでしょうか。これはその会社と取引したいために意...

  ◆ハネムーン価格に注意 皆さんはハネムーン価格という言葉をお聞きになったことがありますでしょうか。これはその会社と取引したいために意...