弾性変形とは?塑性変形との違いや関係性をわかりやすく解説


機械や構造物に用いられる金属やプラスチックなどの材料は、外力が加わると変形します。この変形は弾性変形と塑性変形に分けられます。
この記事では、弾性変形と塑性変形の違いとその仕組み、両者の境界点である降伏点などについて、わかりやすく解説します。

【目次】

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    1.弾性変形とは?

    弾性変形とは、外力を除去した際に材料が元の形に戻る変形のことです。

    弾性とは「材料に外力を加えると変形し、その力を取り除くと元の形にもどる性質」のことです。金属やプラスチックなどの硬い材料は、この性質を持っています。
    物体に力を加えていくと、初期は力の大きさに比例してばねのように変形し、力を取り除くと元の形に戻ります。これが弾性変形です。
    弾性変形における応力とひずみの関係は、フックの法則で近似的に示されます。

    σ=E×ε
     σ : 応力 (N/m2)
     E : 弾性率 (N/m2)
     ε : ひずみ

    機械・構造物の構成部品の材料は、その機能を維持し破損・破壊を防ぐために弾性範囲内で使用することが基本です。

    2.塑性変形とは?

    塑性変形とは、外力...

    を除去しても材料が変形したままで元の形に戻らない変形のことです。

    塑性とは「材料に外力を加えて変形したものが、元に戻らず変形が残る性質」のことです。
    弾性変形の状態からさらに力を加えていくと、やがて変形が大きくなり、力を取り除いても元に戻らず変形が残ります。これが塑性変形です。塑性変形で残った変形を残留変形ともいいます。
    塑性変形は、金属をはじめ結晶構造を持つ材料でよく観察されますが、プラスチック、コンクリート、土などの非晶質材料でも、荷重条件によっては塑性変形が見られます。

    3.降伏点とは?

    降伏点とは、材料の変形が大きくなり、弾性変形から塑性変形に切り替わる境界点のことです。

    外力によって変形が大きくなり、弾性状態を超えて塑性状態になることが降伏です。その時の外力の大きさを降伏点荷重、それを材料の断面積で除した値を降伏点、または降伏応力、降伏強度、降伏強さなどと呼びます。
    降伏点は「上降伏点」ともいいます。上降伏点に達した後、塑性変形が進行している際には応力が低下します。この低い応力が下降伏点です。さらに変形が進むと、上降伏点を超える応力に達します。この時の最大の応力を引張強さと呼びます。

    関連解説記事『降伏点とは何か?』

    4.弾性変形が塑性変形に移行するまでの仕組み

    縦軸に応力、横軸にひずみをとった応力ひずみ線図で説明します。

    図1. 応力とひずみの関係(軟鋼の例)

    このグラフで降伏点を超えるまでが弾性、降伏点を超えてからが塑性の状態です。
    降伏点までは、グラフは直線(線形)です。この部分を弾性領域といいます。降伏した後、塑性領域に入ると応力が低下します。この部分を降伏棚といいます。さらに外力を加えると降伏点を超える応力(最大応力)となり、そこからまた応力が低下した後に材料は破壊に至ります。

    金属材料では弾性変形は隣り合う原子間の距離が広がることで発生し、力を除くと原子は元の位置に戻るため変形は残りません。一方塑性変形は転位と呼ばれる原子配列の欠陥が結晶中を移動することで発生し、力を除いても変形が残ります。
    最大応力を迎えるまでは変形は均等に起こりますが、それを超えると変形は局部的に進むようになり、より小さな力でも変形が進んで最終的に破壊します。

    5.まとめ

    物体に力を加えていくと、初期は力の大きさに比例してばねのように変形し、力を取り除くと元の形に戻ります。これが弾性変形です。さらに力を加えていくと、やがて変形が大きくなり、力を取り除いても元に戻らず変形が残ります。これが塑性変形です。弾性変形から塑性変形に切り替わる境界点が降伏点です。

    機械・構造物の機能を維持し破損・破壊を防ぐために、構成部品の材料は弾性範囲内で使用することが基本となります。

     

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