今回は、教育指導の時に使う、作業手順書のおはなしです。
1. 意外と陥りがちな、作業手順書づくりの落とし穴
作業手順書は使う人のレベルに合わせて書くことが大切です。作業手順には『未知の体験知識』と『ノウハウ』を意識しながら書き入れましょう。私が、作業手順書の書き方をサポートするとき、手順書を作成する方にチャレンジして頂くことがあります。それは、湯切りタイプのソース焼きそばを作る手順の作成です。
多くの方は「そんなの簡単ですよ~」といった感覚で、作業手順を組み上げてしまいますが、この後に落とし穴が待っています。
出来上がった手順を片手に「手順書通りにやってみてください。」と、実際に湯切りタイプの焼きそば(以下、ヤペングと記す)を作ってもらいます。ヤペングは、比較的簡単に作ることのできる商品で、きっと、あなたも作ったことがある商品でしょう。ところが、手順書を作成しヤペングを作ってもらおうとすると、ほとんどの方が作り終えることができないのです。
私は「手順書通りに作ってください。」とお願いをします。繰り替えしますね。「手順書通りに作ってください。」です。
2. 手順書通りに作業しても、誰もがゴールにたどり着けない
ヤペングを手順書通りに作ろうと軽い気持ちで作り始めると、途中で私からの”ダメだし”が入ります。多くの方は、ヤペングを手に取り、包装シートを「バリバリ」と破りはじめるのですが、もしこれが手順に書かれていない場合は”ゲームオーバー”として、それ以上作業を進められないようにします。
また、蓋を開けるまで至った方も、中からソースを取り出したり、かやくを取り出すことが手順に書かれていないと、ソースやかやくを入れたままの状態で、お湯をいれることになり、これも”ゲームオーバー”にします。そう、このゲームに参加して頂くと、ほとんどの方が、おいしいヤペングを食べることができないのです。
いつまでたっても食べることのできないヤペング。何度も、なんども手順書を書き直しながら、やっとこさっとこ「食べる」ことができるのです。そして「手順の書き直し」を繰り返していると、ゲームに参加した方は口を揃えてこのように言います。
- 「こんなの常識だと思っていました。」
- 「こんなこと当たり前だと思っていました。」
- 「普通なら知っていると思っていました。」
確かに、手順書を作る場合、常識的な行動や思考についてまで書く必要はありません。たとえば「はさみで紙を切る」作業の手順でも、はさみの持ち方や使い方まで書き出す必要はないでしょう。はさみの持ち方や使い方は『既知の体験知識』であることが多いからです。
ところが『既知の体験知識』であることの少ない動作や思考の場合、それを明確に手順の中に書き出さなければなりません。ヤペングゲームでも『既知の体験知識』については、その作業をするヒトの「経験と知識」にあった内容で手順を作ってもらう様にします。
3. 手順書づくりは、相手に伝わっていないノウハウを知るきっかけになる
また、作業手順を作る場合、ノウハウを書き漏らすケースが少なくありません。ノウハウは、無意識のうちに実行されることが多く、手順への書き漏れが発生しやすくなります。このゲームに参加した方は
- 『既知の体験知識』と『未知の体験知識』をシッカリと考えて、...