【開発効率向上の重要性 連載目次】
- 製造業の生産性
- 開発効率向上の重要性
- 開発効率向上活動の考え方
- 開発効率向上、活動計画 1 GAP分析
- 開発効率向上、活動計画 2 開発投資効率の見積り
- 活動で考慮すべきこと 1 活動成果の定着
- 活動で考慮すべきこと 2 システム化
1. 製造業の「生産性」の現状
日本の労働生産性が低い状況が続いています(2022年度データでOECD加盟38カ国中27位)。過去のトレンドを見ると、他の国々が徐々に生産性を上げているにもかかわらず日本のみが生産性が上がっていないことから、これは日本特有の恒常的な課題と考えられ、政府がその改善に取り組んでいるのはご存じの通りです。[1][2][3]
ただし、その中で製造業に絞ってみますと、OECD加盟35カ国中18位と若干数字は高くなり労働生産性の上昇率に関しては図1のように主要国の中で平均的な値になっていますので、製造業にとっての生産性向上は他に追いつくということではなく、より高い競争力を獲得するために必要と、よりポジティブな意味合いを持っています。
図1.製造業の労働生産性 出典:「平成28年版 労働経済の分析」厚生労働省 第2-(1)-4図
そのため、製造業が下記に示すような様々なビジネス環境の変化に対応しながら生産性向上にリソースを投入することはかなりの負担ではありますが、逆にこうした状況があるからこそ生産性を向上させることで、ビジネス環境の変化に対応していくためのリソースとスピードやコストといった武器を獲得していかなければならないと考えて、改善を検討されている企業は多いと思います。
- 「モノ」の付加価値の低下(サービスの付加価値向上、モノのコモディティ化)
- IoT、DX、GXなどの新たな社会的要求への追従
- 3Dプリンタなどの新たな生産技術の取込み
- 安全、環境などに関する法令・規制の複雑化、グローバル化、社会的意識の厳格化の対応
実際に生産性の向上に取り組むに当たっては、業務効率の改善や新ビジネスに対応するために設備導入や人財の獲得・育成が必要となり、ある程度の規模の投資が必要となります。その点で、豊富な資本のある大企業と体力の少ない中小企業では取り組める範囲が異なり、図2に現在の状況を示しますが、製造業は労働生産性の企業規模による格差が他業種に比べて大きくなっています。このような背景から、特に中小規模の製造業においては、いかに効率的に生産性を上げるかが取組みのポイントとなります。
図2.製造業の労働生産性 出典:「平成30年版 労働経済の分析」厚生労働省 第2-(1)-...
次回は、開発効率を上げるには(その2)開発効率向上の重要性を解説します。
【参考文献】
[1].(公社) 日本生産性本部:「労働生産性の国際比較 2022」(2022)
[2].厚生労働省:「平成28年版 労働経済の分析」(2016)
[3].厚生労働省:「平成30年版 労働経済の分析」(2018)