ものづくりを現場視点で理解する「シリーズ『ものづくりの現場から』」では、現場の課題や課題解消に向けた現場の取り組みについて取材し、ものづくり発展に役立つ情報をお届けしています。今回は自動車部品メーカーの株式会社武蔵精密工業が取り組む海外スタートアップ企業への部品供給について紹介します。
◉この記事で分かる事
・既存技術を活かした、新製品開発
・社外企業とのアライアンス
2023年9月21日、武蔵精密工業が、豊田通商と台湾の大手電子機器メーカー、デルタ・エレクトロニクスとパートナーシップを結び、インド市場で電動二輪車向けの駆動ユニットを生産することを発表しました。
この新しい電動駆動ユニットは、電動モビリティの新星、モビリティスタートアップのBNC社に供給され、2024年2月にユニットを搭載したEV二輪車がデビュー予定です。
この新プロジェクトの背景には、武蔵精密工業が保有している変速機関連技術の活用があります。
元々、同社は1938年に航空機用の気化器(キャブレータ)製造が祖業で、時流に合わせてミシン部品、二輪車用部品、自動車部品など様々な製造にチャレンジしつづけている企業です。
特に変速機関連では構成部品のギアやシャフト、ジョイントなども独自のものを開発し量産するなど技術の蓄積があります。
また、EVに関しても部品メーカーの枠に縛られることなく、EVカーレースに自社で開発したバワートレーンを搭載した車両で参戦し、実地でのデータ収集を行うなどした技術+アイデア+チャレンジ精神のスタンスが新製品開発をアシストしたのだと考えます。
今回の新製品である電動二輪車向け駆動ユニットは電動二輪車の部品市場の需要をしっかりキャッチする事を目指しています。
また、技術面以外で興味深いのは、3社が新たに「ムサシ・デルタ・eアクスル・インディア」という合弁会社を設立した事です。出資は、武蔵精密が51%、デルタが34%、豊通が15%です。
各社が得意分野を活かし、同じ目標を目指して協業する事(アライアンス)で新たな市場におけるプロジェクト推進が強化されます。今回の3社は「機械のものづくり」「電気のものづくり」「ものづくりのサプライチェーン」それぞれを得意とする会社のアライアンスですので、新たな市場開拓を考えるすべての製造業に参考になるのではないでしょうか?
さて、この電動駆動ユニットがどのようなものなのかというと、簡単に説明するとギアボックスとモーターを中心としたものになります。特に、武蔵精密工業とデルタは、インドの主要な二輪車市場向けに、小型・軽量かつ静粛性に優れたユニットを開発しています。そして、今年末からはバンガロール工場での生産がスタートする予定です。
バンガロール工場で生産された製品はインド、アジア圏にとどまらず、アフリカ・ケニアのスタートアップARCライド社への供給も予定されています。
目指すは、30年までに年間100万基の販売。インド政府も二輪車の電動化を強力に推進中。武蔵精密工業は、この電動化の波に乗って、グルー...