1. 機械設計製図におけるAIやxRの活用、今後求められるスキル
機械設計製図は、機械の形状や寸法、材料、公差などを規格に基づいて図面に表現します。製品の品質や性能を保証する重要な役割を果たしています。近年、この分野もAIやxRなどの先端技術の影響を受けて変化しています。今回は、機械設計製図におけるAIやxRの活用事例や、今後求められるスキルや知識について紹介します。
2. AIが機械設計製図にもたらすメリット
AIは、人間のように思考や判断をするコンピュータシステムのことで、機械学習という方法でデータから法則を学習します。 AIは、機械設計製図に以下のようなメリットをもたらします。
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(1)設計時間の短縮
AIは、複雑な設計課題を自動化し、高度な最適化を実現します。 例えば、コンピュータチップ内の物理レイアウトの設計や、部品の最適な配置検討などにAIが活用されています。これにより、数カ月かかるような設計を数時間に短縮します。
(2)設計品質の向上
AIは、大量のデータから特徴を抽出し、人間が気付かないような共通点や問題点を探し出します。 例えば、CAEによる有限要素解析やトポロジー最適化※1などにAIが活用されています。これにより、部品の強度や変位を高精度に計算し、最適な形状を導き出すことができます。
※1:トポロジー最適化とは、設計したい空間内に最適な構造を提案する手法です。
(3)設計者の負担軽減
AIは、設計者が行う単純な仕事の約8割を負担することで、設計者は残りの2割の仕事に集中できます。 例えば、CADの定型業務やトポロジー最適化の条件設定などにAIが活用されています。これにより、設計者は知識や経験を活かした創造的な仕事に専念できます。
3. xRが変える機械設計製図
xRは、VR(仮想現実)、AR(拡張現実)、MR(複合現実)などの没入型/インタラクティブテクノロジーの総称です。xRは、モバイルデバイスやVRヘッドセット、メガネなどのテクノロジーを通じて利用できます。xRは、機械設計製図を以下のように変えていきます。
(1)空間的な理解力の向上
xRは、3Dモデルや図面を実際の空間に投影したり、仮想空間に入り込んだりすることで、空間的な理解力を向上させます。例えば、プラント・エンジニアリング業界では、xRを活用してプロジェクトの施工計画やモックアップのレビューと調整、現場での連携と品質管理の向上などに活用されています。これにより、設計の問題点を特定し、修正するための迅速なフィードバックが得られます。
(2)コラボレーションの促進
xRは、地理的に分散したチームやクライアントとのコラボレーションを促進します。例えば、自動車メーカーでは、xRを活用してデザイン制作において、デザイナーが新しい車種の3Dコンセプトを作成し、そのデザインを共同レビューしています。 これにより、コミュニケーションやプロジェクト管理の改善が図られます。
(3)イノベーションの創出
xRは、仮想空間で自由に発想や試行錯誤を行うことで、イノベーションを創出します。例えば、制作スタジオでは、xRを使用してリアルで幻想的な3次元的世界の構築に活用されています。これにより、人間が考え付かないような合理的な形状や表現を生み出すことができます。
表:xRの比較
4. 設計者に求められるスキル
このように、AIやxRは機械設計製図において多くのメリットを提供していますが、それと同時に設計者にも新たなスキルや知識が求められるようになっています。AIやxRを効果的に活用するために必要なスキルや知識を紹介します。
(1)AIやxRの基礎知識
AIやxRの仕組みや特徴、種類や用途などを理解することで、適切な技術選択や活用方法ができます。また、AIやxRの限界や課題も把握することで、過度な期待や失敗を防ぐことができます。
(2)データ分析スキル
AIやxRは大量のデータを扱う技術です。データの収集や整理、分析や可視化などのスキルが必要です。また、データから得られた結果の妥当性や信頼性を判断するスキルも重要です。
(3)クリエイティブ思考力
AIやxRは設計者の負担を軽減し、創造的な仕事に専念できるようにします。しかし、そのためにはクリエイティブ思考力が必要です。クリエイティブ思考とは、既存の枠組みにとらわれずに新しいアイデアや解決策を生み出す力です。
AIやxRはあくまでも設計者の補助ツールと考えてください。最終的な判断は、人間が行う必要があります。
5. 新たな可能性を切り開く機械設計製図
機械設計製図はAIや...