TRIZにおける課題・問題の探索(拡大/縮小)法

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1. 課題・問題明確化の重要性

 TRIZセミナーでは、「あなたやチームが抱えている課題または問題を上げてください。それをTRIZで解決しましょう。」とお願いするようにしています。驚いたことに、大学生だけでなく企業の技術者も、何が課題・問題だかわからないという答えが多く返ってきます。

 これでは、よい課題解決策は生まれません。課題を明確化する技法として、マーケティングによるユーザーニーズ調査やクレーム分析、KT法の状況分析などもありますが、ここでは、技術的課題・問題にフォーカスして考えてみましょう。以前、目的展開となぜなぜ分析の手法を、各々を単独で活用するやり方を取り上げましたが、今回は、それらを連続的に捉える思考法を取り上げてみます。それは、Darrell Mann 著:TRIZ実践と効用(1)体系的技術革新の中で紹介している「問題探索」ツールで、古典的TRIZには存在しません。ここで、筆者も翻訳に携わっています。課題・問題の明確化を図る方法の一つとして捉えていただければよいと思います。

  

2. 課題・問題の拡大と縮小

 TRIZは、根本原因分析(なぜなぜ分析)で課題を明確化することから始めるものと受け取っている人も多いと思います。セミナー講師の説明がそうだからなのかもしれません。あるいは、品質重視の日本では受け入れやすいからなのかもしれません。これは間違いではありませんが、もっと良い方法があります。それは、目的展開となぜなぜ分析をテーマによって使い分ける方法です。言い方を換えれば、図1のような課題・問題を拡大/縮小する手法となります。拡大した方がよいテーマは、いままでにない新製品開発や新事業開発などで、縮小した方がよいテーマは、品質問題やコストダウン問題を解決するような場合となります。

 図1の例で、「優れた自転車のサドルを開発する」というテーマがあるとします。これをそのまま、40の発明原理などでアイデア出しすることもできます。さらに、その目的は?その目的は?と拡大方法(上位概念)に問うていくと、「自転車の乗り心地を良くする」⇒「健康を増進させる」のように変化します。40の発明原理だけでなく、究極の理想解や進化トレンドなどの技法の出番となります。課題が変わると、出てくるアイデアも全く違ったものになります。逆に、縮小方向(下位概念)に根本原因を問うていくと、「正しい位置で乗る人を支えられない」⇒「サドル形状を変えられない」と変化していきます。根本原因が変わると対応策も変わります。 

 拡大/縮小の思考法

 図1 課題・問題の拡大/縮小の思考法

 

3. 40の発明原理への変換プロセス

 上の課題の中で、ここでは「優れたサドルを開発する」を、40の発明原理でアイデア出しする例を1つだけ紹介します。技術的矛盾問題として捉え、その抽象化プロセスを図2のように整理します。まず、改良したい特性として「乗り心地をよくするため、サドルの幅を広げたい」、悪化する特性とし...

1. 課題・問題明確化の重要性

 TRIZセミナーでは、「あなたやチームが抱えている課題または問題を上げてください。それをTRIZで解決しましょう。」とお願いするようにしています。驚いたことに、大学生だけでなく企業の技術者も、何が課題・問題だかわからないという答えが多く返ってきます。

 これでは、よい課題解決策は生まれません。課題を明確化する技法として、マーケティングによるユーザーニーズ調査やクレーム分析、KT法の状況分析などもありますが、ここでは、技術的課題・問題にフォーカスして考えてみましょう。以前、目的展開となぜなぜ分析の手法を、各々を単独で活用するやり方を取り上げましたが、今回は、それらを連続的に捉える思考法を取り上げてみます。それは、Darrell Mann 著:TRIZ実践と効用(1)体系的技術革新の中で紹介している「問題探索」ツールで、古典的TRIZには存在しません。ここで、筆者も翻訳に携わっています。課題・問題の明確化を図る方法の一つとして捉えていただければよいと思います。

  

2. 課題・問題の拡大と縮小

 TRIZは、根本原因分析(なぜなぜ分析)で課題を明確化することから始めるものと受け取っている人も多いと思います。セミナー講師の説明がそうだからなのかもしれません。あるいは、品質重視の日本では受け入れやすいからなのかもしれません。これは間違いではありませんが、もっと良い方法があります。それは、目的展開となぜなぜ分析をテーマによって使い分ける方法です。言い方を換えれば、図1のような課題・問題を拡大/縮小する手法となります。拡大した方がよいテーマは、いままでにない新製品開発や新事業開発などで、縮小した方がよいテーマは、品質問題やコストダウン問題を解決するような場合となります。

 図1の例で、「優れた自転車のサドルを開発する」というテーマがあるとします。これをそのまま、40の発明原理などでアイデア出しすることもできます。さらに、その目的は?その目的は?と拡大方法(上位概念)に問うていくと、「自転車の乗り心地を良くする」⇒「健康を増進させる」のように変化します。40の発明原理だけでなく、究極の理想解や進化トレンドなどの技法の出番となります。課題が変わると、出てくるアイデアも全く違ったものになります。逆に、縮小方向(下位概念)に根本原因を問うていくと、「正しい位置で乗る人を支えられない」⇒「サドル形状を変えられない」と変化していきます。根本原因が変わると対応策も変わります。 

 拡大/縮小の思考法

 図1 課題・問題の拡大/縮小の思考法

 

3. 40の発明原理への変換プロセス

 上の課題の中で、ここでは「優れたサドルを開発する」を、40の発明原理でアイデア出しする例を1つだけ紹介します。技術的矛盾問題として捉え、その抽象化プロセスを図2のように整理します。まず、改良したい特性として「乗り心地をよくするため、サドルの幅を広げたい」、悪化する特性として「ペダルをこぐのが困難になる」と定義します。これを矛盾マトリクスから最適なパラメータを選択します。このプロセスを抽象化と呼んでいます。改良したい特性に「3移動物体の長さ」、悪化する特性に「13物体構成の安定度」を選択すると、矛盾マトリクスから、「13逆発想原理」「15ダイナミック性原理」が抽出されます。その発明原理をヒントにアイデア出しするわけです。

 TRIZ40の発明原理への変換 

 図2 40の発明原理への変換プロセス

 

参考文献

Darrell Mann 他:TRIZ実践と効用(1)体系的技術革新、創造開発イニシアチブ、2004

◆関連解説『TRIZとは』

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この記事の著者

粕谷 茂

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