業績のよかった企業がリスクマネジメントを行っていなかったばかりに、たった一つのクレームやトラブルで急速な業績悪化に見舞われてしまうことも…。このようなケースはB to B および B to C それぞれのビジネスにおいても共通することです。今回は「クレーム対応」について解説します。
1. クレームとは何か
クレームとは、顧客に提供された商品やサービスにおいて、顧客が期待を大きく下回ったと感じたときに、顧客が起こす行動のことです。「大きく」という意味は、黙っていられない、許せないという感情が強いことです。クレームを別の表現で定義すると、①顧客の期待値と、➁実際に提供された商品やサービスレベルとのギャップです。つまり、クレームになるかどうかは、①と➁の相対関係で決まります。仮に➁に問題がなくとも、顧客に対して必要以上に高い期待を抱かせていれば、①と➁の間にギャップが生まれて、クレームになる可能性があります。
クレームが発生したとき、このクレームを客観的に定義します。つまり、次の①と➁について、具体的かつ定量的に記述します。
- 【1】顧客は商品やサービスについて、何を期待していたのか。たとえば、商品の仕様または納期、サービスの期待効果等。
- 【2】顧客に提供した商品やサービスの現状がどうだったか。商品であれば、必ず現品を回収して、その状況を確認する必要があります。
過去に同じ顧客と取引がある場合、その履歴を確認します。もし何らかのクレームが過去に起こっていた場合、今回のクレームは初めてではないので、前回とはクレーム対応を変えるべきです。
2. クレーム対応は初動が大切
クレームが起こったとき、次の2つの初動がとても大切です。
①社内での報告
事実は、隠さず、迅速に報告します。報告を受ける上司が気をつけることは、報告者を叱責しないこと。そうでないと、報告者は次回から報告しなくなり、隠ぺいが起こるかもしれません。もう1つは、この段階で原因・対策を求めないこと。原因追究・対策立案には時間がかかるので、これを求めると報告が遅れます。
②顧客への対応
顧客クレームが起こったとき、まずは、顧客の怒りを鎮めることを優先します。自社に問題がないと思っても、迷惑をかけたことに対して謝罪します。決して、この段階で顧客と争わないことです。商品に問題があれば、代替品を届けますが、宅急便を使わず社員が直接出向いて、手渡すほうがよいでしょう。サービスの場合は、可能であれば、無償で再度サービスを提供します。
この対応が顧客にとって満足度が高ければ、信頼度が増して、逆に取引が増えるかもしれません。こうなれば、まさに「禍を転じて福と為す」となります。
ただ残念なのは、身勝手な言い分で法外な要求をするクレーマーの存在です。このようなクレーマーこそ初動を間違えると大炎上します。無理な要求に対しては、「出来ること」と「出来ないこと」について誠意をもって、説明しましょう。
3. クレームから不祥事へ
クレームが大きな社会問題となって、不祥事に発展した場合は、特別な対応が必要です。
①社内での対応
まずは、社長に事実を報告することです。その後は、社長自ら陣頭指揮をとるべきで、決して部下に任せてはいけません。そして、社長から直接全社員に対して、不祥事の事実を伝えます。これは深刻な事態に遭遇していることを全社員と共有するためです。原因究明や再発防止の実行にあたって、社員の協力は欠かせません。
②メディアへの対応
メディアに対して、謙虚に、丁寧に、おごることなく上から目線を避けて真摯に対応すべきです。留意点は次の通りです
- 必ず社長が謝罪会見を開くこと。
- 服装や態度に十分注意を払うこと。
- メディアは、国民に成り代わって厳しく追及してきます。メディアの怒りを怒りで返すと、メディアの思う壺です。切れてしまうことが最悪です。
不祥事の事実がすべて把握できていない場合は、分かっていることを報告し、次回の報告期日を明確にします。最悪は「不祥事の事実はこれですべて」と言ったあと、別の事実が発覚することです。一般のクレーム同様、初動を間違えなければ、好感度が上がり、信頼回復につながります。
4. クレームの原因追究と再発防止
クレーム対応が一段落したら、次は再発防止を実行するために、根本原因を追究します。この根本原因には2種類あります。たとえば、誤配送によるクレームの場合を考え...